礒村吉徳(読み)いそむらよしのり

改訂新版 世界大百科事典 「礒村吉徳」の意味・わかりやすい解説

礒村吉徳 (いそむらよしのり)
生没年:?-1710(宝永7)

江戸初期の数学者。通称喜兵衛,後に文蔵という。初め,肥前国鹿島の鍋島孫平太に仕え,後に二本松藩士となる。作事および賦役奉行として活躍する。二本松城に水道を引いたことで知られる。江戸に塾を開いていたらしく,また,弟子も多かったらしい。彼の著《算法闕疑抄(さんぽうけつぎしよう)》(1659)は,《塵劫記》以来発達してきた数学の集大成で,そろばんを使って解答できる問題はすべて含まれているといってよい。《塵劫記》の遺題に解答を与えるとともに,自分も遺題100問を提出している。1684年(貞享1)には著者みずから解説を頭注に入れるとともに,遺題の100問にも解答を与えている。本書ベストセラーとなり,幕末まで永く利用された。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「礒村吉徳」の意味・わかりやすい解説

礒村吉徳
いそむらよしのり
(?―1710)

江戸初期の数学者。通称は喜兵衛、のちに文蔵。肥前の鍋島(なべしま)家を浪人し、のちに奥州二本松藩士となる。作事奉行(さくじぶぎょう)として、二本松城に水道を引く。出版された著書は『算法闕疑抄(さんぽうけつぎしょう)』(1659)で、『塵劫記(じんごうき)』以来発達してきた数学は本書にすべてまとめられ、代数方程式を使わないで珠算でできる最高度の数学が集大成されている。『塵劫記』の遺題に解答を与えるとともに、100問の遺題を提出している。初版から25年たって、増補版を出版した。なかに自分の遺題100問の解答も示している。彼は、初坂重春(はつさかしげはる)または柴村盛之(しばむらもりゆき)の塾を道場破りし、さらに、初坂の『円方四巻記』と柴村の『格致算書』(ともに1657年刊)の誤りを『算法闕疑抄』のなかで訂正している。稿本で伝わっている著書に『うゐの子』(1685ころ)がある。村瀬義益(よします)のほか弟子は多かったらしい。

下平和夫]

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朝日日本歴史人物事典 「礒村吉徳」の解説

礒村吉徳

没年:宝永7.12.24(1711.2.11)
生年:生年不詳
江戸前期の和算家。通称喜兵衛,のち文蔵,号は泥竜,琢鳴。高原吉種の弟子。はじめ肥前鹿島(佐賀県)の鍋島正茂に仕え,数学の力が認められて万治1(1658)年二本松藩(福島県)に迎えられる。江戸作事奉行,畳奉行などを勤めた。その著書『算法闕疑抄』(1659,60,61年の奥付のものが伝わる)は,そろばんを用いて初歩から数学全般におよぶ良教科書である。この書は遺題継承のうえでも重要であるが,貞享1(1684)年刊の『増補算法闕疑抄』では,当時流行しだした天元術(一種の器具代数)を排し,自分の遺題に解答をつけてもいる。自著の訂正をした個所もある。弟子に村瀬義益,中沢又助,三宅賢隆など。

(佐藤健一)

出典 朝日日本歴史人物事典:(株)朝日新聞出版朝日日本歴史人物事典について 情報

デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「礒村吉徳」の解説

礒村吉徳 いそむら-よしのり

?-1711* 江戸時代前期の和算家。
肥前鹿島(かしま)藩(佐賀県)藩士。のち陸奥(むつ)二本松藩(福島県)で作事奉行などをつとめ,安達太良(あだたら)山麓より城下まで水道をひく。高原吉種(よしたね)にまなび,礒村流をおこす。寛文元年「算法闕疑(けつぎ)抄」を刊行,珠算でなしうる算学を集大成した。宝永7年12月24日死去。通称は喜兵衛,のち文蔵。号は泥竜,琢鳴(たくめい)。

出典 講談社デジタル版 日本人名大辞典+Plusについて 情報 | 凡例

世界大百科事典(旧版)内の礒村吉徳の言及

【和算】より

…《塵劫記》以来,数学の問題が急速にむずかしくなったのは,この遺題継承による。 《塵劫記》以来発展してきた数学の各分野を集大成したのが礒村吉徳(?‐1710)の《算法闕疑抄(さんぽうけつぎしよう)》(1659)である。礒村は二本松藩の作事奉行で,本書はそろばんを使って解ける最高の問題がていねいに解説されている。…

※「礒村吉徳」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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