講談。宝井琴凌(きんりょう)、5代伊東陵潮(りょうちょう)作。1844年(天保15)8月に実際に起こった飯岡助五郎(いいおかのすけごろう)一家と笹川繁蔵(ささがわのしげぞう)一家との大利根(おおとね)の決闘と、1849年(嘉永2)4月の勢力富五郎(せいりきのとみごろう)の自殺を中心とする、下総(しもうさ)の侠客(きょうかく)の争いを講談化したもの。1856年(安政3)、別個に取材した琴凌と陵潮がそれぞれ材料を提供しあって一つに仕上げ、琴凌が命名したという。しかし嘉永(かえい)3年(1850)の年記のある実録体小説の序文を信ずれば、このほうが先行する。河竹黙阿弥(もくあみ)によって『群清滝贔屓勢力(むれきよたきひいきのせいりき)』(1867)の題で劇化されてもいるが、近年では講談よりも、正岡容(いるる)脚色の浪花節(なにわぶし)が2代玉川勝太郎の名調子によって著名である。助五郎を悪玉、繁蔵を善玉に描くのは、十手持ちであった助五郎が闇(やみ)打ちをかけ、長命を保ったためであろうが、実在の助五郎は網元として漁業振興に尽力したなどの擁護論もある。「笹川の花会(はながい)」の条は登場人物が多く華やかで好まれ、「平手の駈(か)けつけ」の条も、虚無的な剣客平手造酒(みき)(実在人物名平田深喜(みき))の個性が魅力的なため、よく読まれる。
[延広真治]
出典 日外アソシエーツ「歌舞伎・浄瑠璃外題よみかた辞典」歌舞伎・浄瑠璃外題よみかた辞典について 情報
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