窒化ホウ(硼)素(読み)ちっかほうそ(英語表記)boron nitride

改訂新版 世界大百科事典 「窒化ホウ(硼)素」の意味・わかりやすい解説

窒化ホウ(硼)素 (ちっかほうそ)
boron nitride

化学式BN。ホウ酸ナトリウム塩化アンモニウムを混ぜて融解するか,三塩化ホウ素と過剰のアンモニアを混ぜてアンモニア雰囲気中750℃で熱分解するなどの方法でつくられる。結晶構造には黒鉛型六方晶,セン亜鉛鉱型立方晶,ウルツ鉱型六方晶の三つがある。常温常圧では黒鉛型六方晶が安定相である。

(1)黒鉛型窒化ホウ素 白色薄片状結晶で,構造は黒鉛に似る。B-N原子間距離は1.446Å,層間隔は3.34Å,原子間距離はホウ素および窒素単結合共有結合半径の和よりもかなり小さく,二重結合性をもつと思われる。しかし黒鉛と異なり電気伝導性が低く,また白色であるので電子の非局在化はないものと考えられる。融点約3000℃。真空中2700℃くらいで分解が始まる。これをホットプレスしたセラミックスは,高温での電気絶縁性,熱伝導性に優れ,急熱急冷に耐え,高温潤滑性をもつ。水,油,樹脂に分散させて高温用潤滑剤,離型剤とされ,成形品は非鉄金属溶解用るつぼ,ロケットノズル,高温構造材料などに使われる。ただし硬度は低く,強度も小さい。

(2)セン亜鉛鉱型窒化ホウ素 黒鉛型窒化ホウ素の粉末を6万~10万気圧,1500~2000℃でc軸方向に圧すると生ずる。この変化はアルカリ金属またはアルカリ土類金属によって触媒作用を受ける。1957年アメリカのゼネラル・エレクトリックGE)社で開発され,約10年後に商品名ボラゾンBorazonとして商品化された。この立方晶窒化ホウ素cBNはダイヤモンド(ヌープ硬さ7000~9000)に次ぐ硬さ(ヌープ硬さ約4700)をもち,ダイヤモンドに比べて耐熱性に優れ,鉄系金属との反応性も小さい。cBN砥粒は耐熱超合金,高速度鋼,ダイス鋼などの高硬度難削金属の研削に賞用される。これを焼結した工具は焼入鋼や高硬度鋳鉄の切削に使われる。

(3)ウルツ鉱型窒化ホウ素 セン亜鉛鉱型窒化ホウ素よりさらに高圧で,温度はやや低い領域で合成される。衝撃波を用いると合成しやすい。日本で開発され,商品名ウルボンBNとして市販されている。ダイヤモンドとほぼ同程度の硬さをもち,cBNと同様の用途に使用されている。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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