日本大百科全書(ニッポニカ) 「竜図公案」の意味・わかりやすい解説
竜図公案
りゅうとこうあん
中国、宋(そう)初の判官包拯(ほうじょう)による公案(犯罪の捜査、裁判)の形式をとった短編小説集。『包公案』ともよばれる。宋代から戯曲小説として語り始められてきた包公説話は、元曲として発展を遂げ、明(みん)初にはいくつかの連続物を構成していたと推定される。その後向敏中(こうびんちゅう)、周新といった判官の公案記録の取り込み、当時成立していた文語口語双方の小説からの改作がなされ、万暦(1573~1619)初めに百回本の『包竜図判百家公案』が成立した。『竜図公案』はこれを受け、3分の1ほどを当時流行の『廉明(れんめい)公案』などの小説集と差し替える一方、順序も改め、各回を完全に独立した一話として明末に刊行したものであり、繁本と簡本とがある。江戸裁判物への影響は『棠陰比事(とういんひじ)』に次いで大きい。
[大塚秀高]