粗相惣兵衛(読み)そそうそうべい

日本大百科全書(ニッポニカ) 「粗相惣兵衛」の意味・わかりやすい解説

粗相惣兵衛
そそうそうべい

昔話。あわて者の行動を主題にした笑い話の一つ。粗相惣兵衛とは、そそっかしくて失敗をする人という意味を込めた架空の人名である。粗忽(そこつ)の連鎖譚(たん)の形をとる。あわて者が物詣(もう)でに行く。朝早く起こされ、弁当を風呂敷(ふろしき)に包んで腰につける。50文出して賽銭(さいせん)を三文あげるつもりで47文を投げる。昼になって、饅頭(まんじゅう)を三文で売ってくれと、大きいのをとって店を出る。木製の見本で食えない。腰の弁当を思い出す。腰巻に枕(まくら)が包んである。家に帰り、女房をなぐると、隣の女房。次に出てきた人にあわてて謝ると、自分の女房である。

 類話は、小話集の『軽口福徳利』(1757)や『茶の子もち』(1774)にもみえる。落語の「堀之内」も同材で、これでは東京都杉並区の堀之内のお祖師さん(日蓮(にちれん)宗妙法寺)に詣(もう)でる話になっている。あわて者が物を取り違え、誤って認識するという趣向は、世界各地の笑い話にみられるが、この話と同一な型の話は知られていない。おそらくこの種の笑いの要素の連鎖譚は、自由に構造的に組み立てられたもので、「粗相惣兵衛」は、なかでも傑作として人気を博し、広まったものであろう。

[小島瓔

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