精油(読み)セイユ(英語表記)essential oil
ethereal oil

デジタル大辞泉 「精油」の意味・読み・例文・類語

せい‐ゆ【精油】

植物から得られる芳香のある揮発性の油。樟脳しょうのう薄荷はっか油など。芳香油
[類語]脂肪脂肪油油脂魚油香油オイル石油原油重油軽油灯油ガソリン揮発油グリース

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精選版 日本国語大辞典 「精油」の意味・読み・例文・類語

せい‐ゆ【精油】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 植物の枝葉、根茎、木皮、果実、花、つぼみ、樹脂などから得られる芳香のある揮発性の油状物。樟脳油、薄荷油など。水蒸気蒸留法圧搾法、抽出法などで分離し、精製してつくる。化粧品、石鹸、香水、食料品などの香料原料として、また、アロマテラピーなどに用いられる。芳香油。
    1. [初出の実例]「精油、餾油也、餾芳草而得、果実或有此油之処」(出典:植学啓原(1833)三)
  3. 原油を精製すること。また、精製した石油。
    1. [初出の実例]「値段は精油と運賃から出るわけだから」(出典:日本のむこ殿(1955)〈読売新聞社会部〉石油)

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改訂新版 世界大百科事典 「精油」の意味・わかりやすい解説

精油 (せいゆ)
essential oil
ethereal oil

植物から採取される芳香をもった揮発性油をいう。芳香油aromatic oilとも呼ばれる。とくに花に含まれる精油を花精油essential flower oilといい,精油のうちでは最も高価である。精油は植物の香気の主体であり,植物の種類により異なるが,テルペン類芳香族アルデヒドケトンフェノールまたはアルコール類,各種エステル類の混合物である。古来,インド,ペルシア,オリエント諸国,ギリシアエジプトなどで種々の植物の花,果実,葉,茎などから香料として採取されており,香料,医薬用または宗教用にも重用されてきた。英語の名称も,一般の鉱物油,油脂と区別して貴重視したゆえに付与されたものである。

 精油の採取法は植物,素材種により異なるが,圧搾法,抽出法,水蒸気蒸留法に大別される。圧搾法はかんきつ類の果皮を押しつぶして精油を採取する方法で,突起のあるわん状の器具を用いるエキニエル法,手で圧搾して浸出する精油をいったん海綿に吸収させたあと搾りとる海綿法,全作業を機械化した機械搾油がある。抽出法は花精油などのように熱に不安定なものに適用される方法である。精製した牛脂や豚脂の中に花を入れ,花精油を吸収させて香脂(ポマード)とし,さらにアルコールで抽出してエキストラクトエッセンスとする方法で,古くから行われている。60~70℃に温めた油脂を用いるのを温浸法,常温で行うのを冷浸法という。ほかに,ヘキサン石油エーテル,液化プロパンなどの揮発性溶剤を用いて花精油を抽出し,減圧蒸留によって粗製花精油をとり,アルコールを用いて抽出,減圧蒸留して精製する方法も行われている。水蒸気蒸留法は,植物体に水蒸気を吹き込み,蒸気とともに精油を留出し,冷却して分離,採取する方法で,分離後の水はローズ水,ネロリ水などといい,化粧水,ローションの原料となる。圧搾法や抽出法に比べて大規模な生産に適するが,熱に対して不安定なものや水溶性のものには用いにくい。

 精油は16~17世紀にはすでに170種類も採取され,とくに17世紀以降盛んに研究されてきた。現在,精油として経済的意味をもつものは約200種類で,当初の揮発性油状物の概念から半固体状物までも含めている。代表的なものを表に示す。
香料
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「精油」の意味・わかりやすい解説

精油
せいゆ
essential oil

植物の枝葉、根茎、木皮、樹幹、花、つぼみ、果実などから得られる特有の芳香をもつ揮発性の油で、芳香油ともいう。一般に水より軽く、菜種油、やし油などの油脂類のようにグリセリドではなく、性質が異なっているので、植物の「精」という意味から精油として区別している。植物のもつ芳香の主体であり、古来人類の生活に香料としての価値を評価されてきた。精油を産する植物(その多くはハーブとよばれるものに属する)の種類は比較的限られており、商業生産される精油の母体は、全世界に分布する植物の数に比べてきわめて少ない。

 精油は通常数十種以上の成分の複雑な混合物であり、同一植物から得た精油でも、その部位、産地、気候、取扱い法が異なれば、精油の成分やその比率も変わってくる。

 植物から分離するには、(1)水蒸気蒸留法、(2)圧搾法、(3)抽出法がある。精製法としては、液体のものは蒸留または脱色、固体のものは昇華または再結晶法がある。精油は、それぞれ特有の香気を有し、熱や空気に接触すると変質しやすく、比較的不安定である。また、強い殺菌力、防腐力を有している。精油の成分は化学的にはアルコール、アルデヒド、ケトン、酸、エステルなどの含酸素化合物と、モノおよびセスキテルペン系炭化水素とに大別される。精油の香気や風味に関係を有するのは前者であり、後者は水に溶けにくく、空気酸化を受けて変質しやすいので、香気や風味に対してはむしろじゃまになる物質といえる。

[佐藤菊正]

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百科事典マイペディア 「精油」の意味・わかりやすい解説

精油【せいゆ】

植物に含まれている芳香のある揮発性油の総称(時に結晶のものもある)。芳香油ともいい,特に花から得られるものは花精油という。古くから香料,医薬用さらには宗教用としても重用された。枝葉,根,皮,実,花,樹脂などのにおいの源であり,これらから水蒸気蒸留,溶剤抽出,圧搾などにより採取する。一般に多数の化合物の混合物で,主要成分はテルペン,芳香族アルデヒド,ケトン,炭化水素,アルコール類,フェノール類,エステル類などである。水には不溶または難溶であるが,有機溶剤には可溶。現在,採取される精油は200種におよび,代表的なものとしてテレビン油樟脳(しょうのう),丁子油(ちょうじゆ),ハッカ(薄荷)油ビャクダン(白檀)油ジャスミン油,ラベンダー油などがある。そのまま香料として用いられたり,さらに蒸留などによって数種の成分に分け香料または合成香料の原料とされる。
→関連項目エッセンス香料テルペン

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化学辞典 第2版 「精油」の解説

精油
セイユ
essential oil

芳香油ともいう.種々の植物の花,葉,果実,果皮,根,茎などから水蒸気蒸留法,抽出法,圧搾法,浸出法,吸収法などの方法によって得られる特有の芳香をもつ揮発性の油で,アニス油,くへんとう油,ジャスミン油,ばら油ベルガモット油など1500種類以上にものぼる.一般には水に不溶,エタノール,石油エーテル,クロロホルム,ベンゼンなどの有機溶剤や脂肪油などに可溶.その主成分は,(C5H8)n の組成をもつモノテルペンおよびセスキテルペン炭化水素と,これらのアルコール,アルデヒド,ケトン,エステル類およびフェノール誘導体などである.化粧品,食品,せっけんなどの香料に用いられる.

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「精油」の意味・わかりやすい解説

精油
せいゆ
essential oil

植物体を水蒸気蒸留して得られる芳香をもつ油状物質。しかし現在では圧搾法,溶剤抽出法などによっても類似のものが得られている。一般の食用油と異なり,炭化水素 (テルペンなど) や含酸素化合物 (アルコール,アルデヒドなど) など種々の揮発性物質を含む。化粧品や食品の香料として用いられる。樟脳油,薄荷油はその代表的なもの。

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栄養・生化学辞典 「精油」の解説

精油

 エッセンシャルオイル,揮発性油,芳香油ともいう.植物の香り成分を抽出した芳香のある油.

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世界大百科事典(旧版)内の精油の言及

【食品香料】より


[天然食品香料]
 次の六つに大別される。(1)精油essential oil(揮発性植物油) ビターアーモンド,ペパーミントなどから得られる。(2)エキストラクトextract 香料植物を溶剤抽出したもので,バニラ,コーヒー,ココアなど。…

【エッセンス】より

…本来は芳香をもった油状の植物からの抽出物で,精油と呼ぶこともある。最近は合成品も多く利用されるようになった。…

【香料】より

… 樹脂系香料の大宗である東の沈香と西の乳香,没薬に対し,焚香料として重要なのは白檀である。このにおいは樹脂分ではなくて,白檀樹の精油分である。中国人は樹脂系の沈香木とならんで大切な香木として焚香料にあてるとともに,薬用あるいは調度品の材料に広く利用している。…

【食品香料】より


[天然食品香料]
 次の六つに大別される。(1)精油essential oil(揮発性植物油) ビターアーモンド,ペパーミントなどから得られる。(2)エキストラクトextract 香料植物を溶剤抽出したもので,バニラ,コーヒー,ココアなど。…

【薬用植物】より

…さらに1837年J.F.リービヒとF.ウェーラーがアミグダリンを加水分解して糖を得たことから,配糖体が薬効成分として大きな位置を占めることが知られるようになった。脂肪が脂肪酸とグリセリンのエステルの混合物であり,精油は種々のテルペノイドの複雑な混合物であることも判明した。 近年分析機器の発達に伴って,微細な化学構造まで速やかに解明されるようになり,さらに構造類似の化合物を分離精製する機器も登場してきた。…

【有用植物】より

…草本でも,油を含む種子を食用にするラッカセイや,ヒマワリなどもナッツ類とされる。栽培植物作物食用植物
[油料植物]
 植物では,種子や果実以外の器官に精油を含有することはあっても,食用とされる油脂を含有することはない。そのため油料植物は,種子や果実に油脂を貯蔵する植物群に限られ,キク科(ヒマワリ,ベニバナ),シソ科(エゴマ),ゴマ科(ゴマ),トウダイグサ科(ヒマ,アブラギリ),アオイ科(ワタ),アブラナ科(アブラナ類),マメ科(ダイズ,ラッカセイ),モクセイ科(オリーブ)などに多くの油料植物が見られるし,熱帯域ではヤシ科(アブラヤシ,ココヤシ)が最も重要である。…

※「精油」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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