改訂新版 世界大百科事典 「精神運動発作」の意味・わかりやすい解説
精神運動発作 (せいしんうんどうほっさ)
psychomotor seizure
てんかん学における旧用語であるが,現在でも使われることがある。狭義にはてんかん国際分類(1981)の複雑部分発作のうちの自動症に相当し,広義には自動症と精神発作(レノックスW.G.Lennoxのsubjective seizureとpsychic seizure,ペンフィールドW.Penfieldのpsychical seizure)を合わせた概念として用いられ,さらに広義には,側頭葉てんかんとほぼ同義に,認知発作,感情発作,精神-知覚発作,意識減損発作と自動症とを合わせた概念として用いられた。最広義の概念は国際分類の精神症状を伴う単純部分発作と複雑部分発作に相当する。自動症automatismとは,意識の減損ないしもうろう状態に自動運動を加え,後に完全な健忘を残すもので,口をもぐもぐぴちゃぴちゃさせる口部(食機能)自動症,諸種の表情を示す表情自動症,ポケットやボタンをまさぐる身ぶり自動症,部屋のなかを歩きまわる歩行自動症,ホラホラ,キタキタなどと常同的にしゃべる言語性自動症があり,自動症の前段階としては意識の断絶のみを示す意識減損発作がある。全般性強直間代痙攣(けいれん)発作(大発作)についで2番目に多い発作型で,てんかん発作の約30%を占めており,難治性であり,性格変化や知能障害をきたしやすい。睡眠脳波で前側頭部に焦点性棘波を示す。
→てんかん
執筆者:石黒 健夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報