化学反応で原系から生成系に至る過程をできるだけ簡単ないくつかの反応に分けて考えるとき,その個々の反応を素反応という.化学反応がただ一つの素反応からなる場合はきわめてまれで,普通は,一連の素反応が逐次進行して全反応が完結する.たとえば,ニッケル触媒上でエテンが水素添加する反応,
C2H4 + H2 → C2H6
は次の四つの素反応から成り立っている.
C2H4 → C2H4(a)
H2 → 2H(a)
C2H4(a) + H(a) → C2H5(a)
C2H5(a) + H(a) → C2H6
ここで,(a)は触媒上に吸着した状態を示す.各素反応の結果として生じる安定または不安定な物質は,最終生成物を除いて反応中間体とよばれる.上記の各素反応の例では,C2H4(a),H(a),C2H5(a)が反応中間体である.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
化学反応は一般に複雑な経路をたどり,2個まれに3個以上の分子の衝突による活性化分子の生成,活性化された分子の分解などの過程からなる。化学反応を組み立てる要素となるこれらの反応過程を素反応といい,素反応によって反応中間体あるいは反応生成物が生じる。たとえば比較的低温でのヨウ化水素の生成は,ただ一つの素反応H2+I2─→2HIからなるが,臭化水素の生成は次の一連の素反応からなる。
Br2⇄2Br
Br+H2─→HBr+H
H+Br2─→HBr+Br
H+HBr─→H2+Br
化学反応がどのような素反応から成り立っているかを示すことによって,その反応機構が明らかにされるが,そのために反応速度の解析,反応中間体の検出同定などの方法が用いられる。
→化学反応
執筆者:妹尾 学
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
…一般に化学反応は,単分子分解および2~3分子の衝突反応の一連の過程の結果として起こる。化学反応を構成するこれらの素過程を素反応と呼び,素反応を用いて書き表した反応経路がその化学反応の反応機構である。通常の化学反応式は,反応の起こる前と完了した後の正味の変化のしかたのみを示すもので,総括反応式とも呼ばれる。…
…水素と臭素の反応は,このようにいくつかの反応の組合せの結果として起こる。全体の反応を組み立てるそれぞれの反応段階を素反応という。先に示した水素とヨウ素の反応のように,一つの素反応から成る反応を単純反応というのに対し,水素と臭素の反応のように,いくつかの素反応の組合せの結果として起こる反応を複合反応という。…
※「素反応」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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