以上のような多種多様な組織のうち、植物体における存在位置、発生、機能などの面で互いに密接な関係にあるいくつかの組織をまとめて、組織系という高次の構造単位が設定されている。組織系の分け方は植物学者によって異なるが、主要なものとして次の三説をあげることができる。しかし、これらの説にも多少の問題点は含まれている。(1)ザックスの説 ドイツのJ・von・ザックスは、1868年、植物体を表皮系、維管束系、基本組織系の三系に分けた。表皮系は表皮とそれに付属する気孔や各種の毛からなり、維管束系は木部と篩部からなる。また、基本組織系は前二者を除く他の部分である。この分け方は広く行われているが、基本組織系に含まれる組織があまりにも多様である点に批判もある。(2)ファン・ティーゲンの説 フランスのファン・ティーゲンP. E. L. van Tieghemは、1886年、植物体を表皮、皮層、中心柱の三組織系に分けた。中心柱は維管束とその外部の内鞘(ないしょう)、および髄をあわせた部分である。この説は組織の形態、発生、系統などを考慮したものであり、茎や根のような軸状の器官については広く採用されているが、葉のような平面的な器官には適用しにくい。また、種子植物の茎では、皮層と中心柱との境界が明確でない場合が多い。(3)ハーバーラントの説 ドイツのハーバーラントは、1914年、植物生理解剖学の見地から、植物体を組織の営む機能に基づいて次の12系とした。すなわち、分裂組織、皮膚組織、機械組織、吸収組織、同化組織、通道組織、貯蔵組織、通気組織、分泌組織、運動組織、感覚器、刺激伝達組織である。この説は、とくに植物生理学や生態学の面から支持を受けているが、組織系によっては、主要な生理的機能がなんであるかが不明確な場合もあるほか、組織の発生がまったく考慮されていない点などに問題がある。