組織開発(読み)そしきかいはつ(その他表記)organization development

改訂新版 世界大百科事典 「組織開発」の意味・わかりやすい解説

組織開発 (そしきかいはつ)
organization development

ODともいう。変化の激しい現代社会のなか組織がその存続を確保していくためには,組織自体がたえず新しくつくりかえられていかなければならない。そこで現代組織論の重要な課題として,組織の変革をどのように行っていくかという点が論じられるようになった。組織開発はこのような時代の要請を反映した,組織変革に関する一つの接近方法にほかならない。組織開発なる用語は,広狭二つの意味でつかわれている。広くは組織に関する構造・風土側面の変革を表す〈組織変革〉一般の概念と同一視する考え方であり,狭くは組織の風土的側面の変革に限定する考え方である。実際には,風土開発に構造革新をともなう場合が多いのであるが,理論的には,組織風土あるいは組織文化の変革が,組織開発の主要内容である。かくて組織開発の標準的定義はこれを,〈行動科学を援用しつつ組織文化を効率的かつ協働的なものにすることによって,組織の問題解決過程や再生過程を改善しようとする,組織みずからによる意図的・持続的な変革努力である〉といい表すことができる。ここにいう組織の〈文化〉あるいは〈風土〉とは,組織成員に共有された行為規準,価値観,信念態度慣行等をひとまとめにした概念であろう。

 組織開発の具体的な進め方は,論者によっていろいろであるが,最も大がかりなモデルの一例は,いわゆる〈グリッド組織開発〉である。これは,(1)グリッド・セミナー,(2)チームワークの開発,(3)グループ間関係の改善,(4)理想モデルの構想,(5)実施計画の作成と変革活動の遂行,(6)システマティックな評価,の6段階から構成されている。組織開発は現在のところ,組織風土の分析・変革の過程において,諸変数をどのように操作的に定義し測定するかというところに問題点をかかえている。社会心理学的研究に固有の困難が見いだされるからである。しかし,このような問題が残されているにもかかわらず,すぐれた組織をつくりあるいは持続させるには,たんに形式的な構造変革だけでは済まされないことは明らかである。ここに,人間という精神的存在から成る組織の,根底からの変革には,組織開発が不可欠であるといわれるゆえんがある。
組織論
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「組織開発」の意味・わかりやすい解説

組織開発
そしきかいはつ
organizational development

行動科学の知識を利用しながら、トップの管理のもとで計画的に、組織全体にわたり、組織の有効性(目的達成度)と健全性(人間の満足度)を増大させるために行う組織の変革をいう。略称OD。利用する行動科学の知識は、リーダーシップの型、動機づけ、コミュニケーションなどである。ODが必要になった理由は、組織環境(市場(しじょう)、技術など)の変動性と複雑性が増大し、硬直的組織ではそれに適応できなくなったため、有機的組織への変革が不可欠になったことにある。有機的組織とは、伸縮的構造、開放的組織風土、相互信頼の態度、支持的リーダーシップなどの特性を備えた組織である。ODの具体的手法には、感受性訓練sensitivity training(ST)、アクション・リサーチ、対決集会confrontation meeting、マネジリアル・グリッドmanagerial grid、小集団活動、目標による管理、組織動態化、能力主義人事などがある。

[森本三男]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「組織開発」の意味・わかりやすい解説

組織開発
そしきかいはつ
organization development

略して ODともいう。行動科学の知識を用いて組織に計画的に介入し,その組織の有効性と健全性を高めることを目的に行う組織の変革をいう。組織開発の手法としては感受性訓練 sensitivity training,マネジリアル・グリッドなどがあるが,最近では個人の態度,行動だけでなく,組織の管理制度などを通じて組織全体のシステムを変革することが求められている。

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