経尿道的切除術(読み)けいにょうどうてきせつじょじゅつ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「経尿道的切除術」の意味・わかりやすい解説

経尿道的切除術
けいにょうどうてきせつじょじゅつ

前立腺(ぜんりつせん)肥大症や膀胱癌(ぼうこうがん)を、開腹しないで、尿道を通じて内視鏡的に切除する手術方法。TURtransurethral resectionの略)ともいう。まず、膀胱尿道用のファイバースコープに手術用装置のついた切除鏡(レセクトスコープ)といわれる内径が8~9ミリメートルの細い内視鏡を、尿道から膀胱内へ挿入する。光源からファイバースコープを通じて送った光線の直視下で、切除鏡の別のルートから灌流(かんりゅう)液を膀胱内へ流し込みつつ、高周波電流発生装置(ソリッドステートの電気メス)から送られてくる切除用と止血用の電流を使い分け、先端についている切除用ループで病変を小切片にして切除していく。膀胱腫瘍(しゅよう)の場合は膀胱の筋層までの病変、前立腺肥大症では腺腫のほとんど全部を切除することができる。

 この方法はアメリカで発達し、最近、日本でも前立腺肥大症の手術はほとんどこの方法で行うことが多くなった。開腹しないため、患者に与える手術による影響も比較的少なくてすみ、止血もほぼ完全に行うことができるなどの利点がある。しかし、膀胱穿孔(せんこう)による灌流液の腹腔(ふくくう)内への流出、前立腺静脈叢(そう)から灌流液が大量に静脈内へ流入してショック状態に陥ったり、腎(じん)不全をおこすなどの合併症もたまにはおこりうるので、安易な手術と考えてはならない。

[松下一男]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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