経書(読み)ケイショ

デジタル大辞泉 「経書」の意味・読み・例文・類語

けい‐しょ【経書】

中国古代の聖賢の教えを述べた書物儒教経典四書五経十三経の類。経籍

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精選版 日本国語大辞典 「経書」の意味・読み・例文・類語

けい‐しょ【経書】

  1. 〘 名詞 〙 儒教の最も基本的な教えをしるした書物。四書、五経、十三経などの類。孔子の六経以前は書籍一般を経と称した。経籍。
    1. [初出の実例]「即立諱為皇太子、及長精神聰敏、玄鑒宏達、博綜経書於文藻」(出典:日本後紀‐平城即位前(785))
    2. [その他の文献]〔史記‐游侠伝〕

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「経書」の意味・わかりやすい解説

経書
けいしょ

中国における儒家古典経史子集(けいしししゅう)の経部の書。単に経ともよぶ。『易』『書』『詩』『礼(れい)』『春秋』の五経(ごきょう)がその根幹をなす。『春秋』は孔子(孔丘(こうきゅう))の述作。ほかみな孔子の刪定(さんてい)(削り定めての編集)になり、五経にこそ古代の聖人・賢人の心をとらえうると信じ、それを目標とするのが経学である。経とは織物を織るときの経糸(たていと)、正統の書との意識で、後漢(ごかん)に流行した讖緯(しんい)の書を緯糸(よこいと)に見立てて緯書(いしょ)とよぶが、糸の縦横などはるかに超えて、五経とは五つの永遠の書、絶対の書の意であり、五経のなかには人間の生活に必要な道理はすべて含まれていると意識される。そうした意識の確立は、紀元前1世紀、漢の武帝が諸子百家を退けて六経(りくけい)(『楽(がく)』は滅び実質は五経)を表彰したときにあり、以後2000年にわたって、五経は必読の古典であり、倫理と政治の規範とされた。

 また経の文章は、素朴な古代言語ではあるが、諸子の文の俗なるとは懸絶して雅であり、「日月(じつげつ)と倶(とも)に懸り、鬼神と奥(おう)を争う」(『文選』序)とまでの尊貴な言語であるとして、文学の原理がここに求められる。中国最古の図書分類、前漢末劉歆(りゅうきん)の「七略」において、『論語』『孝経』をあわせ六芸(りくげい)略を設けて別格に扱われた。のちの四部分類、経史子集における経部も同じ意識である。六朝・唐に漢訳仏典が経(きょう)とよばれたり、「道徳経(きょう)」(老子)、「南華真経(なんげしんきょう)」(荘子)などみな尊崇してのこと。宋明(そうみん)の学では四書、とくに『論語』が親しまれ、清朝(しんちょう)経学は『十三経注疏(ちゅうそ)』を学の根底とした。なお七経、九経などの数え方もある。

[近藤光男]

『平岡武夫著『経書の成立』(1945・全国書房)』『「『五経・論語』解説」(『吉川幸次郎全集21』所収・1975・筑摩書房)』

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改訂新版 世界大百科事典 「経書」の意味・わかりやすい解説

経書 (けいしょ)
jīng shū

永遠の真理を説いた中国の古典。ふつうに《易》《書》《詩》《礼(らい)》《春秋》をさす。経は〈織の縦糸〉を意味し,織布に縦糸があるように,聖人の述作した典籍古今を通じて変わらない天地の大経,不朽の大訓を示すものであるとして,経書と称した。孔子の学園では《詩》《書》が教学に用いられて尊ばれたが,これらを経と呼ぶことはなかった。経が権威ある古典として諸他の書物から区別されるのは周・秦の間のことであり,荀子では《礼》《楽》《詩》《書》《春秋》の五つが経として価値づけられている。これを五経という。これに漢初になって《易》が加えられて六経の名が生まれ,さらに九経,十二経,十三経としだいに増加するものの,経の本質的な意義に変りはない。

 司馬遷は《史記》において経書の特質を〈易は天地陰陽四時五行(ごぎよう)を著す,故に変に長ず。礼は人倫を経紀す,故に行いに長ず。書は先王の事を記す,故に政に長ず。詩は山川渓谷禽獣草木牝牡(ひんぼう)雌雄を記す,故に風に長ず。楽は以て立つ所を楽しむ,故に和に長ず。春秋は是非を弁ず,故に人を治めるに長ず〉と述べている。経書には個人の修養,処世の要諦から,国家の政治,文物度数,自然哲学にいたるまで,人事と自然に関するあらゆる原理が包摂されているとの認識である。五経が成立してから十三経の出現するまで1000余年を経過しているので,それぞれの経書の思想にはかなりの距離があり,矛盾する主張すら含まれている。しかし,いずれも経書として並立するかぎり,すべてを支障なく成立させなければならず,そのためには経書の原義を超えた自由な創造的解釈が必要となる。また経書の用いる言語表現が簡潔なところから,その解釈に多様な主観をおりこむ余地が少なくなかった。この性格のゆえに,経書はいわゆる士人階級のために,つねに時代に応じた理論を捻出し,問題に即した解答を提供することができたのであり,ときにはその解釈を通して自己の思想を開陳しうるものであった。
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百科事典マイペディア 「経書」の意味・わかりやすい解説

経書【けいしょ】

儒教の基本的文献。経は〈たて糸〉,聖賢の不変の教えを意味する。前漢の武帝の時(前136年)五経博士が置かれ,《易経》《書経》《詩経》《礼記》《春秋》を経とした。時代により,《孝経》《論語》《孟子》《爾雅》や《春秋》の3伝などが加えられ,五経,六経,十三経,二十一経などと呼ぶ。これら経書の解釈学が経学

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山川 世界史小辞典 改訂新版 「経書」の解説

経書(けいしょ)

儒教の聖典。儒教では絶対の権威と神聖性を持つ。『詩経』『書経』『易経』(えききょう)『礼記』(らいき)『春秋』の五経をいう。『春秋』以外の4書に,『周礼』(しゅらい)『儀礼』『春秋左氏伝』『春秋公羊(くよう)伝』『春秋穀梁(こくりょう)伝』を付し,さらに『孝経』『論語』『爾雅』(じが)を加え,宋代に『孟子』(もうし)を入れて十三経となった。これらはみな戦国,秦漢時代に編纂された。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「経書」の意味・わかりやすい解説

経書
けいしょ
Jing-shu

中国,儒教の基本的古典。経ともいい,根本法則の意。戦国時代の思想家には,その教義の原則を経とする者があったが,儒家は昔から伝承されていた古典を経書とし,戦国時代末期には,『詩』『書』『礼』『楽』『春秋』の5つの経がほぼできていた。漢代に儒教が官学となると五経が確立した。経の解説を「伝」といい,注解を「注」,この注の注を「疏」といった。その後,時代が下るにつれて経書の数が増加し,南宋では十三経となった。唐代のように『老子』『荘子』が加えられたこともあるが,その他の時代は歴代儒教の古典だけで,その権威を周の文王,周公ならびに孔子によっている。

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普及版 字通 「経書」の読み・字形・画数・意味

【経書】けいしよ

儒教の経書。〔後漢書、杜林伝〕光武、林已に三輔にると聞き、乃ち~問ふに經書故び西州の事を以てす。~車馬衣被を賜ふ。

字通「経」の項目を見る

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旺文社世界史事典 三訂版 「経書」の解説

経書
けいしょ

孔子らの述作した儒学の根本原則を教える聖典
時代により重視されたものに差があるが,四書・五経・十三経・二十一経などがある。

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世界大百科事典(旧版)内の経書の言及

【今文学】より

…今文経学ともいう。中国,経書研究の一学派。古文学に対する語。…

【経学】より

…中国古典の〈経書(けいしよ)〉〈四書五経(ししよごきよう)〉など,の解釈をめぐる学術。〈経書〉は,儒家の奉持した基本文献のことで,単に〈経(けい)〉ともいう。…

※「経書」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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