経済(読み)ケイザイ(その他表記)economy

翻訳|economy

デジタル大辞泉 「経済」の意味・読み・例文・類語

けい‐ざい【経済】

[名](スル)

人間の生活に必要な財貨・サービスを生産・分配・消費する活動。また、それらを通じて形成される社会関係
金銭のやりくり。「わが家の経済火の車だ」
費用手間のかからないこと。倹約。「弁当を持っていくほうが経済だ」
《「経国済民」「経世済民」の略》国を治め民を救済すること。政治
「事業を為して天下を―するは、豈に政府に立のみに止らんや」〈織田訳・花柳春話
[類語](1㋐)産業流通金融財政理財エコノミー/(1㋑)やりくり収支家計内証台所勝手向き手許てもと/(1㋒)節約倹約節倹節用セーブエコノミー切り詰める引き締めるつづめる始末節するけちるけちけちする出し惜しむ出し渋る爪に火を点す財布の紐を締める財布の紐が堅い

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精選版 日本国語大辞典 「経済」の意味・読み・例文・類語

けい‐ざい【経済】

  1. 〘 名詞 〙
  2. ( ━する ) ( 「経国済民」または「経世済民」の略 ) 国を治め、民を救済すること。政治。
    1. [初出の実例]「俗縁未尽して政にあづかりて、伊尹や皐陶が如にして天下を経済するぞ」(出典:四河入海(17C前)三)
    2. [その他の文献]〔文中子‐礼楽〕
  3. 人間の共同生活を維持、発展させるために必要な、物質的財貨の生産、分配、消費などの活動。それらに関する施策。また、それらを通じて形成される社会関係をいう。
    1. [初出の実例]「経済は国家の本なり。古語に、『国に三年の貯(たくわえ)無きを国其国に非ず』」(出典:池田光政日記‐天和二年(1682)五月一日)
    2. 「金沢侯往昔よき御家老ありて、御用金にて一時に経済の法やぶれ、下々困窮することを憂ひ」(出典:可験録(1834)一)
  4. 金銭のやりくりをすること。
    1. [初出の実例]「自家の経済(ケイサイ)に心を尽して老後の用心に金をたくわえ」(出典:談義本・世間万病回春(1771)五)
  5. ( 形動 ) 費用やてまのかからないこと。費用やてまをかけないこと。また、そのさまをいう。倹約。節約。
    1. [初出の実例]「而して子之を食(やしな)はざるは全く経済(ケイザイ)より出る所ならん」(出典:花柳春話(1878‐79)〈織田純一郎訳〉四四)
    2. 「自炊生活は清三に取って、結局気楽でもあり経済でもあった」(出典:田舎教師(1909)〈田山花袋〉二八)
  6. けいざいがくぶ(経済学部)」の略。
    1. [初出の実例]「大学は経済か法科が期待され」(出典:生活の探求(1937‐38)〈島木健作〉一)

経済の補助注記

明治前期には、英語の economics の訳語としては「理財」を用いることが多く、「経済」に落ちつくのは後期になってからのことである。

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改訂新版 世界大百科事典 「経済」の意味・わかりやすい解説

経済 (けいざい)
economy

〈経済〉とは,衣食住など物財の生産・流通・消費にかかわる人間関係の全体である。われわれ人間も他の動物同様,ものを食べなければ生きていけない。しかしわれわれがものを摂取する過程は,動物とは根本的に相違する。われわれは食物を料理したり容器に盛りつけるなど,さまざまな様式で形姿を整える。動物として生理的に胃の腑を満たすという点からすれば,過剰といえるような部分がまとわりついている。しかもこれら過剰な部分は効率的にものを摂取するため,あるいは節約するためということとは無関係で,むしろそれらのためにはマイナスでしかない。こうした過剰性は食の過程にとどまらない。われわれの衣や住は寒さから身を守るため,雨露をしのぐためといった単純明快さをこえている。そこには,衒示,宗教・呪術,審美,新奇といった,機能性をこえた,総称すれば文化とでも呼べるような要素が離れがたく付着している。われわれは単に生理的要求から消費しているだけでなく,文化的要求を満たすためにも消費している。すなわち文化を食べ,文化を身にまとい,文化のなかに住み,文化を呼吸し消費しなければならない。

 こうしたことは生産においても流通においてもいえる。生産活動は食いつないでいく必要から遂行されるのではなく,仕事を完成する喜び,隣人よりより良いものを生産したいとの意欲,協働の喜び,献身,原罪の償い,天職,征服欲など,労働意欲をかきたてる労働観に支えられている。労働は労働観の消費でもある。他方では,こうした労働観を供給する活動,労働の指揮・監督,呪術師・宗教家・教育家などの活動も重要な意味をもつことになる。流通でも,等価性の観念にもとづく交換,租税・婚資・供物などのかたちの財の移転等々,単に有無相通ずるといったような機能的な要因をこえる文化が深く働いている。しかも消費,生産,流通のおのおので作用する文化的要因とは,別個ばらばらのものではなく,互いに関係づけあいつつ全体を構成する文化体系である。そこで文化というものを,慣行,言語,法,信仰,政治,技術から構成され,慣習・伝統として不動の側面と変化に向けて開かれた側面との両者を含む,ある種有機的に統合された巨大な一体系であるとすれば,経済とは,こうした文化体系にとりかこまれ,文化が細部にもわたって分かちがたく絡まりついた,物財の生産・消費・流通のことだといえよう。経済をどうみるかという経済観も,経済活動の目的はなにかといった人間の観念も,経済の重要な要素だということになる。また,経済はしばしば伝統慣習経済,市場経済,指令経済の三つに分類されるが,伝統,市場,指令は一経済のなかに並存する要素の若干であるにすぎず,それ以上の意味をもたせることはできない。

〈経済〉という語は中国晋代の書《抱朴子》〈外篇〉にある〈経世済民〉に発し,これを略したものといわれる。〈経世済民〉とは,〈世を治め民をたすける〉という意で,現在いうところの,政治にかかわるもろもろの事柄をさしていた。日本の江戸時代の太宰春台の《経済録》などの〈経済〉の意味もこれに沿ったものである。明治以降,〈経済〉は〈economy〉の訳語にあてられ,〈economy〉の意を含むように変わっていった。〈economy〉の語源はギリシア語oikonomiaにあり,これはoikos(家)とnomos(慣習,法)からなる合成語で,家の管理・運営のあり方,家政を意味している。このように〈economy〉は当初,家を単位とする規定であったが,その後,ひとつは都市国家社会を単位とするように拡大していった。このように拡大すれば〈economy〉は〈経世済民〉の〈経済〉と意味を同じくすることになる。ところが〈economy〉はこれにとどまらず,17世紀以降の絶対王政,近代国民国家の形成過程において物質的な豊かさを柱とする国力の増強が各国の主題となるにおよび,物質的・唯物的要因を中心とする概念に固まっていった。この時期に形成されたpolitical economy(経済学)は唯物的な意味での国富についての学である。〈economy〉はもうひとつ,個人個人,しかもひとりの人の個々的な行為を単位とする規定にも分化した。人々の活動において目的がはっきりし,条件も確定しており,その過程はおもしろくもおかしくもない,といったかなり限定された技術的な局面は,散らばってではあるが多く存在する。こうした局面では節約意識が明りょうに働き育つ。たとえば人がある場所へ行かなければならない,そしてどの道をとっても道中くたびれるだけという場合,大概の人は最も近道になる道を選ぶであろう。節約意識は,家政としての〈economy〉のなかから生まれる一つの独立した観念である。こうして〈economy〉が〈節約〉の意味をももつことになる。これは〈最小費用の最大効果〉であって,なにを目的に選ぶかにはまったく適用できない,いわば技術的・形式的規定である。ところが技術文明の隆盛に呼応して19世紀末のeconomics(経済学)はこの規定を,人間本来の目的が物質的豊かさにあるということと結びつけて,人間の普遍の原理にまで拡張し,経済人ホモ・エコノミクス)からなる社会を構想するにいたった。

 〈経済〉は上記のような意味の変遷を経た〈economy〉の訳語として使用され定着した。しかし,物質的側面もたしかに人間の一関心であり,長い歴史の趨勢(すうせい)が生活の物質的側面の巨大化に向かってきたのだから,〈economy〉すなわち〈経済〉概念の中心が物質的側面に集中・分化してきたのは当然であったとしても,〈経済〉の目的・動機が唯物的にすぎないとするのは,たかだかこの200~300年の特異な経済観にすぎない。この点から反省するならば,この特異な〈経済〉をもひとつの系として含みうる本項のような〈経済〉がえられる。またそれとともに経済学も,上記の特異な経済観を当然のこととし,これにもとづいて政策技術を練り,仮構の純粋システムのメカニズムを解明するといったことにともなう視点の狭さ・非現実性から,解放されつつある。経済人類学,経済社会学,経済倫理学,経済体制論などは社会科学としてのパースペクティブを経済学にとりもどそうとのさまざまな試みであるが,これらも含めて現代の経済学は生活の物質的側面に深く入りこみ,物質的関係をとおして表現される観念,文化,歴史,政治,要するに社会のあり様を解釈していこうとの尽きざる営みへと指向している。
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普及版 字通 「経済」の読み・字形・画数・意味

【経済】けいざい

国を治め、世を済(すく)う。経国済民。〔晋書、殷浩伝〕之れに答へて曰く、~足下沈淹長、思綜(た)ちて之れをらかにせば、以て經濟するに足る。

字通「経」の項目を見る

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世界大百科事典(旧版)内の経済の言及

【経済人類学】より

…経済人類学はその名が示すように,経済学と人類学の両方に深く関係している。ことに経済学との関係においては,それが深いというにとどまらず,経済学を肯定的に吸収するか否定的に批判するか,あるいは,どのような経済学(新古典派かマルクス派か)に依拠するかにしたがって,経済人類学の問題関心,対象,方法にかなりの違いが生ずる。…

※「経済」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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