結核性胸膜炎

内科学 第10版 「結核性胸膜炎」の解説

結核性胸膜炎(胸膜炎)

(2)結核性胸膜炎 (tuberculous pleurisy)
 結核菌による胸膜炎で,胸膜直下の結核の壊死病巣が破綻し胸腔に波及して生じる.一般細菌による胸膜炎とは胸水検査所見や治療法が大きく異なる.
診断・治療
 胸水中の細胞成分は,病初期には好中球が優位であるが,その後はリンパ球優位となる.胸水の塗抹・培養検査では結核菌を証明できることは少ないが,PCRでは75%に結核菌が検出される.胸膜生検により採取した組織のZiehl-Neelsen染色,組織の結核菌培養検査を併用すると診断精度が向上する.胸腔鏡で胸膜に散在する白色結節がみられることが多く,観察下に白色結節を生検することで診断率が高まる.胸水中のリンパ球増加やアデノシンデアミナーゼ(adenosine deaminase:ADA)の上昇(>50 U/L)がみられた場合結核性胸膜炎を強く疑う所見である.しかし,ADAはほかの疾患(リウマチ性胸膜炎,悪性腫瘍など)で上昇することもあり,AIDS患者では上昇しないこともあるので注意を要する.
治療
 肺結核の治療を行う.[矢野聖二]
■文献
Light RW: Pleural diseases. 4th ed. Lippincott Williams & Wilkins, Philadelphia, 2001.

出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報

六訂版 家庭医学大全科 「結核性胸膜炎」の解説

結核性胸膜炎
けっかくせいきょうまくえん
Tuberculous pleurisy
(呼吸器の病気)

 初感染に引き続いて発病する特発性胸膜炎と、二次結核に伴って発症する随伴性胸膜炎があります。

 初感染では、感染巣が胸膜直下で乾酪壊死(かんらくえし)を起こし、それが胸腔内に壊れて生じると考えられています。胸水の培養塗沫(とまつ)検査、胸膜生検(組織をとって調べる検査)で菌の証明、あるいは特徴的な組織病理像を得れば確定診断がつきます。しかし、診断率はそう高くなく、他の疾患を除外しながら、抗結核療法の反応をみて治療的に診断することも多いのです。

 胸水中のリンパ球の増加、アデノシンデアミネース(ADA)値の高値も参考になります。胸水は大量であれば、胸腔にチューブを入れて排出します。ステロイド薬を局所注入する場合もあります。

出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報

世界大百科事典(旧版)内の結核性胸膜炎の言及

【胸膜炎】より

…なお,外傷や大動脈瘤破裂などにより胸膜腔内に血液が貯留するものは,とくに血胸とよばれる。
[原因]
 胸膜炎の原因はいろいろあるが,最も多いのは結核性胸膜炎,癌性胸膜炎であり,近年後者が増加している。そのほか,肺炎,肺化膿症,心膜炎,肺梗塞(こうそく)や,慢性関節リウマチ,全身性紅斑性狼瘡(ろうそう),皮膚筋炎などの膠原(こうげん)病でも胸膜炎を起こすことがある。…

【小児結核】より

…全身状態は急に悪化し,発熱,不機嫌,呼吸困難,脾臓腫張がみられ,従来は1~2ヵ月で死亡することが多かったが,現在は治療により6ヵ月くらいでX線所見は改善する。肺の結核性病変が胸膜(肋膜)に及んだものが結核性胸膜(肋膜)炎で,発熱,咳の増強,胸痛がみられる。乳児期や幼児期前半では初期結核症の数ヵ月以内に脳に菌が入ることがある。…

※「結核性胸膜炎」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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