繊維素溶解(線溶)機構とその制御機構

内科学 第10版 の解説

繊維素溶解(線溶)機構とその制御機構(総論3:凝固線溶系とその制御機構)

 血管破綻部位に形成された凝血塊は血管壁の修復とともに分解されて吸収される.また,血管内に生じた病的血栓はすみやかに除去して末梢の虚血障害をできるだけ少なくする必要がある.このフィブリン分解機構が線溶系である. 線溶系の基本反応はプラスミンによるフィブリンの分解である.プラスミンはその前駆体であるプラスミノーゲンとして血管内を循環している.血栓形成時に凝血塊の中に取り込まれたプラスミノーゲンは,同様にフィブリン血栓の中に取り込まれたフィブリン親和性の高い組織プラスミノーゲンアクチベーター(tissue plasminogen activator:tPA)によってアミノ残基結合の一部が切れて広範なプロテアーゼ活性をもつプラスミンとなり,フィブリン血栓を溶解する.血漿中でもプラスミノーゲンアクチベーターによりプラスミンが生成されるが,血漿中には多量のプラスミンインヒビターが存在し,即時的にプラスミンを不活化するので,短時間に大量のプラスミンが産生されない限り,プラスミンによるフィブリノゲン,第Ⅴ因子,第Ⅷ因子,第ⅩⅢ因子などの分解は起こらない.α2-マクログロブリンやトロンビン活性化線溶阻止因子も補助的にプラスミン阻害に働く.一方,凝血塊の中で生成されたプラスミンはプラスミンインヒビターの阻害を受けにくく効率よくフィブリンを分解する.しかし,あまりに早くフィブリンが分解されると,血管破綻部位での再出血をきたすおそれがあるので,プラスミノーゲンアクチベーターインヒビター1(plasminogen activator inhibitor-1:PAI-1)がtPAを阻害することにより血栓溶解の速度を調節している.したがって,プラスミノーゲンが欠乏したり,PAIが過剰に存在すると血栓症が起こりやすくなり,プラスミンインヒビターが欠乏すると出血が起こりやすくなる.[白幡 聡]

出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報

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