羅漢(読み)ラカン

デジタル大辞泉 「羅漢」の意味・読み・例文・類語

らかん【羅漢】

阿羅漢あらかん」の略。「五百羅漢

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精選版 日本国語大辞典 「羅漢」の意味・読み・例文・類語

らかん【羅漢】

〘名〙 (arhat音訳阿羅漢」の略)
仏語小乗仏教の最高のさとりに達した聖者
法華義疏(7C前)一「諸漏已尽無復煩悩者、嘆羅漢不生徳。煩悩為受生因。而煩悩尽故不生」
※談義本・根無草(1763‐69)後「羅漢(ラカン)の人は俵のごとく重り、舞台の透間は蠅のごとくたかる」

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改訂新版 世界大百科事典 「羅漢」の意味・わかりやすい解説

羅漢 (らかん)

〈人々から尊敬布施をうける資格のある人〉の意で,悟りをひらいた高僧を指す。サンスクリットのアルハットarhatの主格アルハンarhanの音訳〈阿羅漢〉の略称応供と意訳する。釈迦の直弟子のうち高位のものはみな阿羅漢で,舎利弗(しやりほつ),目連(もくれん),迦葉(かしよう)などがいる。阿羅漢をまとめ,十六羅漢や五百羅漢に対する信仰も生じた。小乗仏教においては,阿羅漢は仏弟子の到達する最高の階位とされ,これ以上修すべきものがないという意味で無学ともいう。しかし,大乗仏教が興ると,自己の悟りのみを目ざす阿羅漢は卑しめられて,衆生救済を目ざす菩薩の下におかれるようになった。
五百羅漢 →羅漢図
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百科事典マイペディア 「羅漢」の意味・わかりやすい解説

羅漢【らかん】

サンスクリットarhatの音写〈阿羅漢〉の略称。応供(おうぐ)とも。煩悩をすべて断滅して最高の境地に達した人。狭義には小乗の悟りを得た最高の聖者をさし,その修行の段階を阿羅漢向,到達した境を阿羅漢果という。小乗仏教では仏弟子の最高位とされるが,大乗仏教では衆生の救済を目ざす菩薩の下におかれる。
→関連項目声聞道釈画賓頭盧

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「羅漢」の意味・わかりやすい解説

羅漢
らかん

阿羅漢 (arhatの音写) の略称。応供 (おうぐ) と訳される。供養と尊敬を受けるに値する人の意。剃髪し,袈裟を着た僧形に表わされる。中国,日本では十六羅漢,十八羅漢,五百羅漢のように仏道修行者の群れをさし,禅宗の流通に伴って多数制作された。十六羅漢の信仰と羅漢図は中国,唐代に始り,五代には貫休がその名手として知られ,流布した。日本では中国からの将来品やその転写などの遺品が多く,特に鎌倉時代以降隆盛をみた。羅漢の彫像では京都南禅寺の『十六羅漢像』 (1628頃) ,東京羅漢寺の『羅漢像』 (88~95) ,画像では唐の系統をひくとされる 11世紀の東京国立博物館蔵の『十六羅漢図』,奝然 (ちょうねん) が宋から伝えたという清涼寺本などが有名。

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歌舞伎・浄瑠璃外題よみかた辞典 「羅漢」の解説

羅漢
(通称)
らかん

歌舞伎・浄瑠璃の外題。
元の外題
彩入御伽草 など
初演
文化5.閏6(江戸・市村座)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「羅漢」の意味・わかりやすい解説

羅漢
らかん

阿羅漢

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世界大百科事典(旧版)内の羅漢の言及

【五百羅漢】より

…500人の羅漢およびその群像。十六羅漢という呼称もある。…

【小乗仏教】より

…経量部の種子説,大衆部の根本識,化地部の窮生死蘊などは,この問題意識から生じたもので,このうち経量部の種子説は,後の大乗の唯識説の主張する阿頼耶識(アーラヤビジュニャーナālayavijñāna)の先駆思想と考えられている。 〈涅槃寂静〉に関して小乗論師たちは,涅槃とは何か,釈迦の本質は何か,一般修行者の究極的到達点である阿羅漢(羅漢)の境地とは何か,涅槃に至る過程は何か,などの点について詳細に研究し,その思索を発展せしめた。 小乗仏教は釈尊の教えに忠実ならんと試みたが,その結果は出家中心主義になり,大乗仏教の興起をうながしたのである。…

【仏教】より

…この段階を修道(しゆどう)という。修行の完成者は阿羅漢(羅漢)と呼ばれる。阿羅漢は元来,仏の異称で,供養をうけるに値する者の意であるが,伝統的部派仏教では弟子たちの完成位の名として,仏とは区別した。…

【仏教美術】より

…釈迦―十大弟子―各宗の祖師―弟子への系譜を,禅宗や密教で血脈(けちみやく)と称するゆえんもここにある。この系列の美術に羅漢像や祖師像などの肖像や,僧侶自身の墨跡がある。また僧によって仏事を営むための仏具,供養具,梵音具,芸能具も多岐にわたり,僧侶の生活用具も重視された。…

【耳】より

…ところで,儒教に対立した老荘の思想は,仏教伝来後にむしろ隆盛し,2世紀の半ばを過ぎると老子は神格化されていくが,他方では仏教に老荘思想が影響を与えて禅宗をつくったといえる。大乗仏教が軽視した羅漢は,禅宗の中で中国古来の道士の風貌を備えて勢いを得るようになり,すべての羅漢が巨大な耳たぶをもって表された。 このように古代中国の風土になれた仏像が入ってきたのだから,日本の仏像も同じように豊かな耳たぶをもった。…

※「羅漢」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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