老化はこうして予防する(読み)ろうかはこうしてよぼうする

食の医学館 「老化はこうして予防する」の解説

ろうかはこうしてよぼうする【老化はこうして予防する】

《食習慣での予防》
〈除脂肪体重を減らさない食事を〉
 年をとると、生理的老化現象の1つとして、体重に占める脂肪の割合がふえ、筋肉、骨など脂肪以外の組織の占める割合(除脂肪体重(じょしぼうたいじゅう))がどうしても減ってきます。この除脂肪体重の減少は、体力の衰えや免疫力の低下につながってしまいます。
 ですから、除脂肪体重を減らさないよう食事に注意したいものです。
 具体的には、筋肉をつくるたんぱく質や骨をつくるカルシウムを十分にとること。たんぱく質は、とうふや魚を中心にとるといいでしょう。
 また牛乳は、動物性たんぱく質を豊富に含んでいるうえ、カルシウムの吸収率も高いので積極的に利用したい食品です。毎日、飲む習慣をつけたいものです。
〈歯ごたえのある食品をとる〉
 よく「老化は歯からはじまる」といわれます。
 むし歯歯槽膿漏(しそうのうろう)で歯を失ってしまうと、かむ回数が減っていきます。すると消化酵素を含んだ唾液(だえき)の分泌(ぶんぴつ)が少なくなり、消化吸収力が低下してしまいます。
 かたいものは消化できないので、やわらかいものばかり食べるようになり、栄養のかたよりから、体のあちこちで機能低下=老化がすすんでしまうというわけです。
 歯の健康を保つためにもカルシウム摂取は重要なのですが、同時に、適度に歯ごたえのあるものをよくかんで食べる習慣も身につけましょう。
 かむことは頭の老化予防にもなります。
 かむ刺激によって脳の血行がよくなり、脳細胞を活性化させることができるのです。
〈抗酸化作用のある食品をとる〉
 老化の原因の1つに、活性酸素があります。体内で活性酸素が多く発生すると、老化の進行だけでなく、高血圧動脈硬化糖尿病、がんなどの病気を引き起こすもとになります。
 この活性酸素の害を防いでくれるのが抗酸化作用のある食品です。
 抗酸化作用のある栄養成分と食品を次にあげます。意識して多くとるように心がけましょう。
カロテンコマツナニンジンシュンギクホウレンソウ
・ビタミンC/グァバ、イチゴ、キウイ、ブロッコリー、コマツナ
・ビタミンE/アーモンド、たらこウナギ、西洋カボチャ
・カテキン/煎茶、番茶、ほうじ茶、烏龍茶、紅茶
ポリフェノール/赤ワイン
セサミン/ゴマ
グルタチオン/牛レバー、アカガイ、ホウレンソウ、ブロッコリー
リコピン/トマト、スイカ、柿
〈飲酒は適度に〉
 アルコールは血管を広げたり、胃液の分泌(ぶんぴつ)をうながす働きがあり、食欲増進、ストレス解消、快眠などの効果が期待できます。
 また、在宅高齢者の食生活を10年間にわたって継続調査したところ、お酒を1日1合程度飲む人は、死亡率が低い(長命)という結果も報告されています。
 ただし、休肝日を週に1~2回設けること、量は日本酒で1合、ビールは大ビン1本程度にすることが鉄則です。お酒を飲むときは、冷や奴やエダマメなど、たんぱく質の豊富なつまみをいっしょに食べるようにしましょう。
《生活習慣での予防》
〈継続的に運動する〉
 筋肉や骨の減量を防ぐには、栄養をとるだけでなく、運動も必要です。
 筋肉は動かすことで鍛えられますし、筋肉に力が加わると、骨は刺激を受け、体を支えようとして丈夫になります。逆に運動しなければ、骨はカルシウムを必要ないとみなして、骨から排出する働きが強まってしまいます。
 ただし、あまりはげしい運動は活性酸素の発生量を上げてしまうので、ウォーキングなどの中~軽度の運動を、1日に20分~30分ほど、できれば毎日行う習慣を身につけたいものです。
〈喫煙者は禁煙を〉
 喫煙(きつえん)を続けていると、狭心症(きょうしんしょう)や心筋梗塞(しんきんこうそく)などの老年病を誘発しますし、肺がんにもかかりやすくなります。
 健康長寿を望むなら、いうまでもなくタバコはやめるにこしたことはありません。
 幸い、これまで医師の処方箋(しょほうせん)が必要だったニコチンガム(禁煙補助薬)が、現在は手軽に薬局で購入できます。これを契機に禁煙に挑戦してみてはいかがでしょう。
〈規則正しい睡眠リズムを〉
 アルツハイマー病にかかった人の多くは、1時間以上、昼寝をする習慣があったという調査があります。
 高齢になると、夜、どうしても寝つきが悪くなり、眠りも浅くなります。そして朝は早く目覚めてしまい、日中に居眠りをしがちです。
 しかし、あまり長時間の昼寝は夜の睡眠リズムにも影響し、夜の不眠をまねいてしまいます。不眠症から抑うつ状態やうつ病になるケースも少なくありません。
 睡眠の習慣を見直し、毎日、規則正しいリズムで睡眠をとるように心がけてください。
〈感情のサビつきに注意〉
 体を動かさないでいると筋肉が衰えてくるように、脳も使わなければどんどん衰えます。
 とくに前頭葉(ぜんとうよう)が老化して縮んでくると、物事に無感動になったり、意欲がなくなるといわれています。そうなると、外見もいっきに老け込んでみえるものです。
 それを防ぐには、日ごろから「話す」「見る」「読む」そして「考える」ことを自分なりに習慣づけることです。読書日記をつけるなど、「書く」こともたいへん有効です。
 定年を迎えると、仕事から解放され、頭を使う機会は減りがちです。また、子育てを終えた人もそうですが、目標を失ってしまって無力感にとらわれ、漫然と日々を送ってしまいがちです。
 ですから、早いうちから熱中できる趣味や、ボランティア活動などの生きがいを見つけておくといいでしょう。
 アクティブに生きることが、脳の若さを保つ秘訣(ひけつ)です。そのためには、体の健康にも留意したいものです。

出典 小学館食の医学館について 情報

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