職場闘争(読み)しょくばとうそう

精選版 日本国語大辞典 「職場闘争」の意味・読み・例文・類語

しょくば‐とうそう ‥トウサウ【職場闘争】

〘名〙 組合員のひとりひとりが、労働条件改善など日常の具体的な要求について職場闘争を展開し、これを組合全体の闘争にまで盛り上げたり、また組合全体の闘争を各職場、各組合員に浸透させたりする活動。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「職場闘争」の意味・わかりやすい解説

職場闘争
しょくばとうそう

労働者が工場、事業場など職場において行う闘争。労働運動における基礎的な闘争形態の一つで、日本では1947年(昭和22)の二・一1スト後「職場に労働運動を」「幹部闘争から大衆闘争へ」のスローガンが打ち出され、50年代における総評傘下労働組合の「組織づくり」運動のなかで発展した。

 職場は合理化攻撃や職制の締め付けなど労使対立が集中するところである。職場闘争の目的は、第一に職場の労働条件や環境など組合員の具体的な要求・不満を解決すること、第二に職制支配の根源すなわち「日本資本主義の構造に根をもつ職場の民主主義抑圧と労務管理による職制の個人別労働者掌握という根幹をなす搾取形態」(総評「組織綱領草案」前文)を突き崩すこと、第三に組合員の職場要求を日常的に掘り起こす闘争を通じて労働組合を職場に根づかせ、労働運動の発展を図ること、にある。このような職場闘争が強調されるに至ったのは、従来の「幹部請負」的性格の強い労働運動から、職場における組合員ひとりひとりの身近な要求実現を重視する大衆路線が労働運動のあり方として注目されたことのほか、日本の労働組合が企業別組合特色としていることと関係する。すなわち、企業別組合は、経営組織と組合組織が結合しているため従業員企業意識が強く、その活動領域も企業内に限定され、御用組合化されやすい弱さをもっているからである。職場闘争はこのような企業別組合の弱点を克服し、組合員の団結と連帯を強め、産業別全国組織との提携を保持しつつ、統一行動強化を図ることにあった。この意味では職場闘争は労働運動における闘争戦術の一つである。

 なお、職場闘争は、争議に際しその実効性を保持するために行う職場占拠や、第二次世界大戦直後、労働組合が資本家の生産サボタージュに対して企業施設などを占拠して闘った生産管理闘争とは質的に異なる。

[吉田健二]

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改訂新版 世界大百科事典 「職場闘争」の意味・わかりやすい解説

職場闘争 (しょくばとうそう)

1950年代,総評が労働組合運動の指標たらんと模索した運動論で,その内容は職場・地域の大衆闘争を重視したものである。結成(1950)後まもなく左傾化した総評は,組織強化の運動論を求め,炭労,北陸鉄道労組などの大衆闘争に着目した。とくに炭労は,52年の63日闘争(賃上げ闘争)を契機に,幹部請負闘争を廃し,大衆闘争の推進を組合運動方針の中心にすえた。この動きは,高野実総評時代の大衆闘争方式である〈ぐるみ〉闘争に結実し,つづく太田薫・岩井章の総評時には職場における大衆闘争が,春闘を支える企業別組合強化の運動論として位置づけられた。この職場闘争論を成文化したものが総評〈組織綱領草案〉(1958)である。

 当時最もすすんだ職場闘争を展開したのは,炭労傘下の三池労組である。三池労組では,1953年の企業整備反対闘争(三鉱連企業整備反対闘争)の勝利後,大衆闘争が職場に浸透した。ここの職場闘争は,職場の民主化要求,経済的諸要求あるいは保安問題の要求実現などによって始められた。たとえば職制による呼びすて廃止,各種作業手当の支給,安全点検の強化などである。その後運動はさらにすすみ,労働者みずからが相互に作業をかえていく輪番制の実施,労働強度を自主的に規制する〈生産コントロール〉の実施など,労働者的職場秩序が確立されていった。そこでは〈労働者が職場の主人公〉であることが実践されていたのである。1959-60年の三池争議は,この職場闘争のあり方を争点として争われた。三池労組の敗北後,職場闘争は総評労働運動の表舞台から消え去り,その名も世話役活動一般をあらわす〈職場活動〉といいかえられた。しかし職場闘争は,いくつかの問題点をもちながらも,ひとつの労働組合運動論としていまなお今日的な意味をもちつづけている。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「職場闘争」の意味・わかりやすい解説

職場闘争
しょくばとうそう

労働者が労働条件の改善など職場での共通要求を解決するために行う職場段階の闘争。組合員の身近な問題を取り上げることにより組合民主化を促進し,団結と闘争力を強化することをねらいとしている。第2次世界大戦後の日本で,企業意識を克服して地域闘争や産業別統一闘争を強化する基盤として重視された。典型とされた三井三池鉱業所において三池争議が収拾されて以後,激しい職場闘争は減少した。

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世界大百科事典(旧版)内の職場闘争の言及

【労働運動】より

…政治的課題への取組みを契機として始まった総評の変貌は,労働組合固有の運動領域においても始まった。その一つは,産業別統一闘争の強化によってドッジ・ラインのもとで陥った企業組合主義を克服しようとする動きであり,いま一つは職場要求を大衆行動を背景とした職場管理者との交渉を通じて解決しようとする職場闘争の推進であった。 だが,労働組合としての活性化は,きわめて険しい道であった。…

※「職場闘争」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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