家庭医学館 「胆管がん」の解説
たんかんがん【胆管がん Bile Duct Carcinoma】
[どんな病気か]
男性にやや多くみられます。胆管には肝内胆管(かんないたんかん)と肝外胆管(かんがいたんかん)とがあります(図「胆嚢、胆管の部位の名称」)。肝内胆管がんは胆管細胞がんとも呼ばれ、胆管がんのなかでも、もっとも予後(治療後の経過)の悪いものです。症状がなく、症状が出て診断がついたときには、かなり進行しているためです。
肝外胆管は肝門(かんもん)部、上部、中部、下部に分かれますが、肝外胆管にできたがんは、それぞれの部位の名称を胆管がんの前につけて呼びます。肝門部胆管がん、上部胆管がんと、上部へ行くほど手術が困難で切除率が低く、予後も悪くなりますが、中部胆管がん・下部胆管がんの切除率は上部胆管がんよりも大きいため、治癒率(ちゆりつ)が向上します。
[症状]
肝内胆管がんは、かなり進行するまで症状が現われません。胆管壁は薄く(約1mm)、管も細い(直径7~10mm)ため、内腔(ないくう)ががんでふさがれやすく、黄疸(おうだん)で発症します。
がんは早くから周囲の神経や血管、リンパ管に浸潤します。多くは黄疸で発症するのですが、その前に「皮膚がかゆい」「尿が濃くなった」と訴える人もたくさんいます。
肝門部胆管がんの場合は、左右の胆管が閉塞(へいそく)して初めて黄疸が出ます。
また、胆嚢管(たんのうかん)より下部の総胆管が閉塞されると、胆嚢が大きく腫(は)れます。
[原因]
肝内胆管がんは、肝内結石(かんないけっせき)と関連する慢性感染や炎症がその原因と考えられています。胆管と膵管(すいかん)は、十二指腸(じゅうにしちょう)に開口する前に合流するのがふつうですが、胆管が膵管に合流するような合流異常症では、胆嚢がんや胆管がんの発生が多くみられます(約10~20%)。
発がんの誘因としては、胆石(たんせき)や膵液による慢性の炎症性刺激、ホルモン、胆汁(たんじゅう)のうっ滞(たい)などが考えられています。
[検査と診断]
黄疸がなくとも、肝内の胆管に拡張があれば、精密検査を受ける必要があります。
閉塞性黄疸では肝内の胆管が拡張しています。入院し、減黄(げんおう)(黄疸をとる処置)のために挿入したチューブから得た胆汁を細胞診(さいぼうしん)すれば、がんの診断精度は80%以上になります。
◎がんの場所によって手術は異なる
[治療]
肝門部胆管がんには胆嚢がんと同様、肝切除術が行なわれます。むずかしい手術です。
中・下部胆管がんの場合は膵頭十二指腸切除(すいとうじゅうにしちょうせつじょ)が行なわれます。ただし最近では、患者さんの術後の生活の質(QOL)を考慮して、胃を切除しないで温存しておく方式も行なわれます。
切除不能の進行がんの場合は、黄疸をなくし、通院しながら自宅での生活を楽しめるように、胆管の狭窄(きょうさく)した部位に形状記憶合金製のステント(管)を留置し、胆管の内腔を広げる方法が行なわれます。