胎児心音(読み)たいじしんおん(英語表記)fetal heart sound

改訂新版 世界大百科事典 「胎児心音」の意味・わかりやすい解説

胎児心音 (たいじしんおん)
fetal heart sound

胎児の心音,つまり心臓の鼓動音は,初産婦では妊娠20週ころ,経産婦では妊娠18週ころからトラウベ聴診器で聞くことができるようになる。しかし,陣痛発作のときには,こういう方法では聞こえないので,高性能のマイクロホンが利用されている。胎児心音はⅠ音とⅡ音から成り立っているが,成人の場合のようにⅠ-Ⅱ,Ⅱ-Ⅰ時間や,心雑音有無による診断ではなく,胎児心拍数リズム)を胎動(妊娠時)または陣痛(分娩時)と組み合わせた診断が行われている。胎児心音の聴取しやすい部位は,一般には胎児の左胸背上部のあたりなので,外診による胎位から聴診部を探しあてることができる。

 かつては胎児心音は胎児の生否などを知る唯一の手がかりとされていたが,現在ではこれに加えて,胎児心音を利用した胎児心拍数の変動である粗変動と細変動もまた胎児の健常さを示すバイタルサインとして胎児監視に使われている。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「胎児心音」の意味・わかりやすい解説

胎児心音
たいじしんおん
fetal heart sounds

児心音ともいう。この心音がはっきり聞き取れるのは,ほぼ妊娠5ヵ月の終り以後。数は1分間に 120~140で,母体の脈拍数と容易に区別できる。子宮内の胎児の姿勢が正常な場合は,胎児の背が子宮壁に接近した側の胎児心臓部の高さで,最もはっきり聞き取れる。超音波ドップラー装置を利用すると,心音を聞く前に心臓の運動を検出して,音に変化させることができる。マイクロホンを用いて連続的に心拍数を記録することもできる。心拍数のこうした経時的変化の記録を心拍数図と呼ぶ。

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