肺の外表面と,胸壁の内面,横隔膜の上面などを覆うひとつづきの薄い膜で,かつて肋膜ともいわれた。肺を覆う胸膜と胸壁などを覆う胸膜との間は胸膜腔と呼ばれるが,通常はほとんどすきまなく接している。胸膜腔には透明な水(漿液)がわずかにあって,胸膜に滑らかさを与えている。呼吸に際して胸郭が大きさをかえるとき,2枚の胸膜が滑りあいながら,肺は膨らんだり縮んだりする。胸膜に炎症が起こったり,心不全などの場合には,胸膜腔に大量の水がたまる(胸水)。胸膜炎のあと,2枚の胸膜が癒着したりすると,肺の伸縮運動がうまく行えなくなるため,肺活量の減少が起こる。また,なんらかの原因で肺側の胸膜が破れると,肺内の空気は胸膜腔に流れ込み,肺は縮小する(気胸)。胸膜には,肺癌をはじめ乳癌,胃癌など種々の癌転移が起こりやすい。このほかに胸膜に原発する腫瘍もある(悪性中皮腫)。これら胸膜の疾患では,しばしば胸痛を伴うが,これは胸壁側の胸膜の痛みである。肺側の胸膜には知覚神経はない。
執筆者:工藤 翔二
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肺の表面、および胸郭壁内面を覆っている漿膜(しょうまく)で、かつては肋膜(ろくまく)ともよんだ薄い透明な膜である。片側の肺表面を覆う肺胸膜は、肺門の部分で肺に進入する気管支、肺動静脈を包みながら反転して胸郭壁内面を覆う壁側胸膜に移行する。このように、片側の肺と胸郭壁とを覆う胸膜は連続しているため、肺胸膜と壁側胸膜とは閉鎖した腔(くう)をつくることになる。この左右の腔を胸膜腔とよぶ。壁側胸膜は、心臓、気管、大血管に接する縦隔胸膜、胸壁内面の肋骨(ろっこつ)胸膜、横隔膜上面を覆う横隔胸膜に分けられる。胸膜腔は狭い間隙(かんげき)であるため、肺の呼吸運動の際には肺胸膜と壁側胸膜とは触れ合うこととなる。このため、胸膜腔には摩擦を防ぐために、少量の胸膜液(漿液)が存在している。
胸膜に炎症が生じると、胸膜腔に滲出(しんしゅつ)液、血液、膿(のう)などが出現し、貯留することがある。空気がこの腔に入ると気胸とよばれる。滲出液が体内に吸収されると肺胸膜と壁側胸膜(とくに胸壁の肋骨胸膜)とが癒着することがある。その範囲が広範に及ぶと肺の呼吸運動が制限されるため、肺活量も減少する。
[嶋井和世]
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出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…最も大きな単位は肺葉と呼ばれ,右肺は上葉,中葉,下葉の三つに,左肺は上葉,下葉の二つに分けられる。各肺葉は,肺を包み込む胸膜(肋膜)によって画されている。肺葉はさらに区域という単位に分けられ,それぞれ番号と名称がつけられている(図2)。…
※「胸膜」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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