平安中期の歌学書。能因著。類書のなかでは比較的初期のもので、同じころ『四条大納言(だいなごん)歌枕』(藤原公任(きんとう)著、散逸)もあった。内容は、和歌用語の異名や枕詞(まくらことば)について記した部分、国々の名所(歌枕)を列挙した部分、および正月~12月の各月に詠むべき和歌の素材を記した部分からなっている。歌人が和歌をつくったり、学んだりする際、座右に備えて参看されたものと考えられ、後世の歌学書にも影響を与えている。能因は清少納言と血縁関係にあり、『枕草子(まくらのそうし)』などからの影響も考えられる。
[川村晃生]
『佐佐木信綱編『日本歌学大系1』(1963・風間書房)』
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