脱法ドラッグの一種で、乾燥させた植物の葉に、幻覚や興奮作用がある化学物質を混ぜて作る。厚生労働省は薬事法に基づき、個々の物質の成分分析で人体への作用を確認して「指定薬物」に定め、製造販売や輸入を禁止していたが、成分構造の一部を変えた物がすぐに出回り、いたちごっこになっている。このため、基本構造が似た物質をまとめて規制する「包括指定」の仕組みを導入。4月からは改正薬事法が施行され、指定薬物を所持することも処罰対象となった。
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法の不備などで違法とされていない大麻成分類似の合成薬物を、乾燥させた葉や茎などの植物片に吹きつけた大麻類似品。インターネットや店頭で購入できる。表向きはお香やアロマの名目で売られているが、煙草のように煙を吸うと大麻同様に催眠、興奮、幻覚、幻聴などの作用があり、意識障害や呼吸困難になることもある。
カンナビノイドcannabinoid(大麻の化学成分の総称)の一種である大麻の主成分THC(テトラヒドロカンナビノール)は、脳などにあるカンナビノイド受容体に結合して作用する。脱法ハーブの主成分である合成カンナビノイドsynthetic cannabisもこの受容体に働き、THC類似の精神作用をもたらす。代表的な脱法ハーブ「スパイス」は当初、ヨーロッパでは合法であったが、2008年ごろから規制されるようになった。日本では2009年(平成21)から流通し始め、厚生労働省の指定薬物として規制対象にはなったが、業者が対象外にするために合成カンナビノイドの構造を少しずつ変えており、いたちごっことなっている。そのため、厚生労働省は2013年に指定薬物と化学的構造が類似するものを一括して規制する「包括指定」を導入している。元になるTHCは日本では「麻薬及び向精神薬取締法」(昭和28年法律第14号)で規制されているが、THC自体には鎮痛、抗炎症、抗不安、食欲増進などの薬理作用があり、欧米のかなりの国では薬として用いられているため、流通を完全に断ち切ることもむずかしい。
2012年5月には大阪府下で、脱法ハーブを吸った男が乗用車で暴走事故を起こすなど、脱法ハーブのもつ危険性が現実となり、その対応が課題になっている。和歌山県は2013年4月から全国で初めて脱法ハーブの販売・購入者に対し、誓約書を義務づける条例を施行した。購入者には「吸引しない」との誓約書をとるが、その効果は十分とはいえない。
[田辺 功]
(大迫秀樹 フリー編集者 / 2012年)
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