脳血管障害(読み)ノウケッカンショウガイ

デジタル大辞泉 「脳血管障害」の意味・読み・例文・類語

のうけっかん‐しょうがい〔ナウケツクワンシヤウガイ〕【脳血管障害】

脳梗塞脳出血蜘蛛くも膜下出血など頭蓋内外の血管病変により生じる脳神経系障害・脳機能障害の総称。血管の詰まり・破れなどにより脳細胞への酸素や養分の供給が滞り、機能障害が生じる。血管障害の発生場所や程度によって半身麻痺まひ(純運動性不全へん麻痺)・半身のしびれ(感覚障害)・言語障害視覚障害構音障害(呂律緩慢)・痛みなどの後遺症が残ることがある。日本人の死亡原因の上位に位置し、高血圧糖尿病などの生活習慣病や喫煙などを原因とする場合が多い。脳血管障害のうち突然発症するものを脳卒中という。

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食の医学館 「脳血管障害」の解説

のうけっかんしょうがい【脳血管障害】

《どんな病気か?》


〈死亡原因第4位。回復後、後遺症が残ることも〉
 脳血管障害(のうけっかんしょうがい)は、国際疾病障害(しっぺいしょうがい)死因分類による疾患名であり、一般に脳卒中(のうそっちゅう)といわれるものです。
 日本国内では、がん、心疾患、肺炎に続き、死亡原因の第4位、女性では第3位にあげられる疾患で、平成24年には、約12万人もの人が脳血管障害によって死亡しています。
 脳卒中というと、脳内の血管が切れて出血するというイメージがありますが、実際は、脳内の動脈が破れたり、つまったりすることで血液が流れなくなり、脳に障害がおよぶというものです。
 脳血管障害では、死亡にいたらなくても、手足のまひや言語障害、意識障害、運動障害などの後遺症が残ることがあります。
〈脳動脈の破綻で起こる出血性の障害(頭蓋内出血)〉
 脳血管障害では、受ける障害の状態により、出血性と虚血性(きょけつせい)に大別できます。
 出血性の脳疾患は頭蓋内出血(ずがいないしゅっけつ)といい、脳動脈の破綻(はたん)によって出血し、脳組織が破壊されるものです。出血が起こる場所によって、脳実質内なら脳出血、脳の表面近くのくも膜下出血(まくかしゅっけつ)と、さらに細かくわけることができます。
●脳出血(脳溢血
 脳出血は一般に脳溢血(のういっけつ)ともいわれているもので、脳実質内で動脈が破れ、血液が流れでるものです。脳出血のほとんどが高血圧を原因としています。血圧が上がると動脈に高い圧力がかかりますが、この圧力がかかり続けていると、動脈壁に弾力がなくなり、もろくなっていきます。そしてこの動脈が耐えきれずに破裂してしまうのです。
 破裂して出血しても、いずれ動脈は自然とふさがり、出血がおさまりますが、流れでた血液が凝固して血腫(けっしゅ)となり、周囲を圧迫し、脳の働きが衰え、さまざまな神経症状がでてくるのです。
 神経症状には頭痛やめまい、吐(は)き気(け)などがありますが、多くは突然発作を起こし、はげしい頭痛に襲われ、意識障害をともないます。また、最初にそのような症状がみられ、時間が経つとろれつがまわらなくなったり、手足の自由がきかなくなったりします。軽症の場合はこの程度の症状ですが、重症の場合は、意識を失い、いびきをかいたり失禁(しっきん)したりということもあります。
 後遺症は半身のまひが現れるのがほとんどですが、軽症なら顔面のまひや多少の言語障害、重症になると手足などの半身不随(はんしんふずい)や認知障害などが残ることもあります。
 突然の発作は日中に起こることが多く、とくに精神的に興奮したり、作業によって力んだりすると起こしやすくなるので注意しましょう。
くも膜下出血
 くも膜下出血は、出血が起こる部位は脳そのものではなく、脳の表面をおおっている3層の膜のうちの、真ん中のくも膜と内側の軟膜(なんまく)とのあいだに走る太い動脈が破れて出血します。
 脳出血同様、最初ははげしい頭痛に襲われますが、痛みを感じるのは頭全体か、後頭部から首筋にかけてです。頭が割れるほどのはげしい頭痛が症状の特徴です。
 しかし、脳そのものの出血でないため、脳の神経に障害を残すことが比較的少なく、後遺症として半身のまひを残すこともあまりありません。また、ほかの脳血管障害にくらべ、起こる頻度が少なく、全体の10%にとどまっています。
 しかし、生命の危険にいたることが多く、くも膜下出血を起こした人の約30%が死にいたっている危険な疾患です。
 脳出血と同様に高血圧の人に多くみられますが、血圧が正常な人でも、精神的興奮や極度なストレス、排便時のいきみ、作業中の力みなどで血圧が急激に上昇した場合に起こることがあります。また、40~50歳代に多くみられるほかの脳血管障害にくらべ、くも膜下出血は30歳代でも起こりやすい疾患です。
 人間ドックや健康診断を受ける際には、年齢が若くても、脳ドックなどで脳内の血管のようすをチェックしておきましょう。
〈脳動脈がつまって起こる虚血性の障害(脳梗塞)〉
 一方、虚血性の脳疾患は、一般に脳梗塞(のうこうそく)といい、血栓(けっせん)によって脳動脈がつまるなどの血流障害でさまざまな症状が起こるものです。
 脳梗塞の場合は、血栓の生じ方によって、脳血栓(のうけっせん)と脳塞栓(のうそくせん)、また脳血管障害の予兆である一過性脳虚血発作(いっかせいのうきょけつほっさ)にわけられます。
●脳血栓
 脳血栓は、脳の動脈に血栓(血のかたまり)ができて、血管をつまらせてしまうために起こります。血流が滞ると、脳の組織に血液が行き渡らず、脳の一部が壊死(えし)し、障害が生じるのです。
 脳動脈内に血栓ができるのは、脳動脈の動脈硬化がすすんで、血液の通り道が狭くなり、そこに血液がよどんでかたまりとなってしまうからです。
 そのため、脳血栓を予防するには、脳の動脈硬化を防ぐことが第一です(「動脈硬化症・大動脈瘤」参照)。
 ほかの脳血管障害と同様に、高血圧がいちばんの原因ですが、糖尿病(とうにょうびょう)脂質異常症のほか、喫煙者に多くみられるのも特徴です。
 中年に多い脳出血やくも膜下出血などとちがい、脳の動脈硬化がすすんでいる高齢者に多くみられ、また、睡眠中などの安静時や血圧が低くても起こります。
 症状としては、頭痛や吐き気、嘔吐(おうと)など、脳出血に似た症状がみられます。
 しかし、突然の発作が起こることは少なく、数時間から2日くらい、長い場合には1か月程度が経過してから症状がはっきりと現れるほど、ほかの脳血管障害にくらべてゆっくりと進行します。
 そのため、最初はかぜとまちがえてしまう程度の症状の場合もありますが、徐々に顔面の片側のまひや、ろれつが回らない、半身の手足のまひなどを感じるようになり、場合によっては失語(しつご)、意識障害などがみられることもあります。
●脳塞栓
 脳塞栓は、脳動脈内で形成された血栓がつまるのではなく、体内のほかの部位で形成された血栓が血管をとおって脳内に運ばれ、脳の動脈内にひっかかり、脳動脈をつまらせてしまう疾患です。
 それがもととなり、脳血栓同様、脳の組織に血液が行き渡らず、障害をまねくのです。
 運ばれてくるのは血栓だけでなく、細菌、腫瘍(しゅよう)、脂肪などの場合もありますが、ほとんどが心臓で形成された血栓です。
 心房細動(しんぼうさいどう)心臓弁膜症(しんぞうべんまくしょう)心筋梗塞(しんきんこうそく)などで心臓の働きが弱まると血栓ができやすいので、そのため、これらの疾患のある人は要注意です。心臓に疾患のない場合でも、傷口から空気が侵入したり、傷口の皮下脂肪(ひかしぼう)が血管内に侵入することがあるので、軽いケガだからといって放っておくのは危険です。
 症状は脳血栓と同様で、顔面や手足のまひ、ろれつが回らない、意識障害や失語などがみられます。しかし、同じ脳梗塞でも、時間の経過とともに症状がはっきりと現れる脳血栓とは異なり、脳塞栓は突発的に起こり、また脳血栓より重症なことが多く、死亡にいたる確率も高いので、症状がみられたらすぐに、受診をする必要があります。
一過性脳虚血発作
 また、虚血性脳疾患に含まれ、脳梗塞の前兆ともいえる疾患が、一過性脳虚血発作です。
 症状は脳梗塞と同様に、顔面や手足のまひ、感覚障害、ろれつが回らないなどの神経症状がみられますが、症状が現れても短いと1時間程度から、長くても24時間以内にその症状は消えてしまいます。
 そのため、すぐに治ったからといって放置しておきがちですが、何回もくり返し起こることが多く、そのまま放置しておくと、約30%は数年後に脳梗塞を起こすという、危険な疾患でもあります。
 原因は2つに大別できます。1つは脳内、または頸動脈(けいどうみゃく)や冠動脈(かんどうみゃく)など他の部位にできた血栓が脳の動脈をつまらせてしまい、一時的に脳梗塞の状態になってしまうことです。しかし、この場合は血栓がくずれたり、小さくて短時間に溶けてしまったりということで、つまっていた血管の血流が再び流れ、症状が消えてしまいます。
 2つめは、脳の動脈硬化がすすみ、血流の調節がうまくできないために起こるものです。血圧が急激に低下し、血流が脳組織に行き渡らない場合に、同様の症状を引き起こすことがありますが、血圧が正常にもどると、症状も消えていきます。
〈障害を引き起こす環境的な条件にも注意が必要〉
 これらの脳血管障害のうち、脳血栓と脳塞栓をあわせた脳梗塞が全体の約60%を占め、残りのうち、30%が脳出血、10%がくも膜下出血で、昭和30年代にくらべると、脳梗塞と脳出血の比率が逆転しています。
 脳血管障害を誘発する要因としては、動脈硬化を生じさせる高血圧、糖尿病、脂質異常症などがあげられます。また、心臓病、とくに心臓弁膜症や、肥満体質の人も要注意です。しかし、かならずしもこれらの疾患をもつ人が脳血管障害を起こすというわけでもありません。誘発要因に加え、その引き金となる条件もあります。たとえば、季節のかわりめの急激な温度変化により、血圧が上昇、低下した場合、入浴中に急激に体をあたためたり、寒い脱衣所で衣服を脱いだ場合、多量の飲酒後に冷たい外気にふれた場合、トイレでいきんだ場合などがあります。とくに、排便時の発作は通常の発生の約6倍といわれているため、便秘(べんぴ)がちな人は要注意です。
 脳血管障害は、突発的に生じる発作が特徴でもあります。しかし、その前兆となるシグナルを体が発信していることもあります。
 たとえば、めまいや立ちくらみ、頭痛、頭重(ずじゅう)、手足のしびれ、のぼせ、不快感、肩こりなど。また歩行時に足がもつれたり、目がかすむ、会話の際に舌がもつれたり意識がなくなるなどの症状や、物忘れがひどくなったり昔のことをくり返し話すなどの認知症のような症状がみられたら、要注意です。
 脳血管障害は死亡にいたらずとも、意識障害や運動機能障害が後遺症として残る場合が多くあります。そのため、いかに予防するかがとても重要です。
 誘因となる高血圧や糖尿病、脂質異常症を予防・改善することはもちろん、ほかの生活習慣病と同様に運動不足を解消し、適切な食生活を心がけることがたいせつです。

《関連する食品》


〈たんぱく質、ビタミンなどの基本栄養素はしっかりとる〉
 脳血管障害は高血圧、糖尿病、脂質異常症が誘因となる場合が多いため、これらを予防する食生活を心がけることが第一です。
 それぞれの疾患をもつ人は、まずは、それぞれの食事指導により食生活を改善しましょう。
 しかし、たんぱく質ビタミンミネラルが不足すると、血管の栄養状態が悪くなるため、血管が破れやすく、出血しやすくなります。それらの栄養素は日常の食生活でも基本となるものなので、しっかりと摂取するようにしましょう。
〈血管を丈夫にするビタミンC、フラボノイド〉
○栄養成分としての働きから
 また、とくに脳内の動脈、その他の血管の老化を防ぎ、丈夫にするにはビタミンCが有効です。ミカンやレモンなどの柑橘類(かんきつるい)を食後に食べたり、ナノハナなどを積極的に食事に取り入れるといいでしょう。
 フラボノイドはビタミンCの働きを高め、毛細血管を丈夫にします。フラボノイドはあまり馴染みのない栄養素ですが、そばやタマネギダイコンに含まれています。
 同時にネギやタマネギには硫化(りゅうか)アリルが含まれますが、これは血液凝固を防ぐため、血栓の形成を防止することになります。
 さらに、血液凝固の防止には、メロンに含まれるアデニシンも同様に有効です。
〈ナットウキナーゼが血栓を防ぐ〉
 血栓の予防には納豆に含まれるナットウキナーゼが効果があります。とくに納豆は良質のたんぱく質も摂取できるので、脳血管障害を誘発する生活習慣病改善に対しても効果があり、積極的にとりたい食品です。
 そして、血液・血管の障害や疾患に効果のある食べものとして忘れてはいけないものがDHAやIPAなどの不飽和脂肪酸です。イワシやサンマ、アジ、サバなどの青背の魚のほか、ゴマからも摂取できます。
 脳血管障害をまねく環境として排便時のいきみがありますが、基本的に便秘を防ぐためには食物繊維が有効です。
 こんにゃくやバナナ、ゴボウなど、食物繊維をたっぷりと含む食品で、日常生活において、快適な便通を習慣づけておきましょう。
○漢方的な働きから
 発作を起こしたあと、いたんだ血管を回復させるにはダイズがいいといわれています。
 とくに発作を起こし、言語障害が残ってうまく話すことができないときには、ダイズを水飴状(みずあめじょう)になるまで煮詰めたダイズの水煮が回復に役立ちます。
 手足のしびれが残った場合には、ヨモギの葉の煎(せん)じ汁が効果があります。葉は初夏から夏にかけてとり、日干しにして保存します。そして煎じるときには、水で煎じるより酒で煎じたほうが効果が増します。
○注意すべきこと
 脳血管障害で、摂取をひかえたほうがよいものに塩分があります。塩気の多い食品は、血圧の上昇を促進してしまいます。男性で1日8.0g未満、女性で1日7.0g未満を目安に、とくに頭蓋内出血が心配な人は塩分摂取をひかえましょう。
 また、脳梗塞の予防のためには、バターやラード、クリーム類など油脂分を多く含む食品は、血栓の形成を促進することがあるのでひかえます。ケーキやパイなどは油脂分を多く含みますし、誘発要因である糖尿病予防にも注意したい食品です。

出典 小学館食の医学館について 情報

六訂版 家庭医学大全科 「脳血管障害」の解説

脳血管障害(高齢者の脳卒中)
のうけっかんしょうがい(こうれいしゃののうそっちゅう)
Cerebrovascular disease (Stroke in the elderly)
(お年寄りの病気)

脳血管障害とは

 脳血管障害には、血管が詰まって起こる脳梗塞(のうこうそく)と、血管が破れて起こる脳出血や、くも膜下出血があります。

●脳梗塞

 脳梗塞には脳深部の細い血管が詰まって起こる1.5㎝以下の小さなラクナ梗塞と、頸動脈や脳の表面の太い血管が動脈硬化(脂肪が血管の内側にたまるアテローム硬化)で細くなって詰まって起こるアテローム血栓性梗塞、および心臓のなかに血の塊(血栓)ができてはがれて脳に飛んで血管が詰まる心原性脳塞栓(しんげんせいのうそくせん)があります。心原性脳塞栓は、昔はリウマチ性弁膜症によるものが多かったのですが、現在、最も多いのは心房細動(しんぼうさいどう)という不整脈です。故小渕恵三元首相、長島茂雄元監督などの脳卒中はこのタイプです。いずれも発作性心房細動といって、たまに起こるものが原因でした。これは普段の検査では見つからないことが多いので、動悸がしたらすぐ心電図をとってもらいましょう。

 また、一過性脳虚血発作(いっかせいのうきょけつほっさ)といって手足の麻痺(まひ)やろれつが回らない、片目が突然見えなくなるといった症状が数分出現して自然に回復する場合があります。すぐ治るので軽く考えがちですが、これは頸動脈などが動脈硬化を起こしている兆候で、大きな脳梗塞の前兆です。「転ばぬ先の(つえ)」でただちに脳卒中専門医を受診する必要があります。

●脳出血

 脳出血高血圧が長年続いて起こるものが最も多く、高血圧性脳出血といわれます。ラクナ梗塞と動脈硬化の発症機序(仕組み)が似ており、ラクナ梗塞患者の過半数に隠れた小さな脳出血があることが、最近のMRIで証明されています。脳出血は欧米に比べて、日本を始めアジア人に多いのが特徴です。これは人種差よりも食文化の違いが大きいといわれています。欧米では日本と逆でアテローム硬化による心筋梗塞脳卒中の4倍も多いため、その予防に重点が置かれています。したがって、欧米でアスピリン等の血液をさらさらにする薬が脳梗塞に有効だからといって、その効果が確認されているアテローム血栓性梗塞以外のタイプでむやみに服用すると、脳出血の危険性も高まることに注意する必要があります。

 くも膜下出血は生まれつき血管に弱い部分があり、そこに動脈瘤(どうみゃくりゅう)というこぶができて破れて起こります。脳の表面の血管から出血するので、通常片麻痺などは起こらず、突然の激しい頭痛と嘔吐、意識障害などが特徴です。再発しやすく死亡率が高い病気ですが、軽い症状の段階で見つかれば脳動脈瘤をクリップする手術で完治しますので、前述の症状がみられたら、ただちに脳神経外科を受診することが大事です。

高齢者の脳卒中の特殊事情

 一般に脳卒中は高齢者の病気と考えられています。私どもが運営している脳卒中データバンクの解析でも、日本の脳卒中の平均年齢は71歳です。しかし、タイプによって違いがあります。脳卒中のタイプを65歳以上とそれより若い群で比較すると、図7のようにラクナ梗塞やアテローム血栓性梗塞はあまり変わりませんが、心原性脳塞栓では65歳以上が23%と、若い群の11%の約2倍になっています。さらに75歳以上の後期高齢者でみると、心原性脳塞栓は65歳未満群の3.2倍にもなります。この理由は心房細動(しんぼうさいどう)という不整脈が、加齢とともに著明に増加してくることにあります。

 一方、高血圧脳出血は逆に若い群の約半分です。また、くも膜下出血も若い群の3分の1と少なくなっています。しかし、頻度は少ないですが、高齢者では脳血管にアミロイドという異常物質がたまり、血管が(もろ)くなって破れるアミロイド血管症による脳出血が増えてきますので、血液をさらさらにする薬には注意が必要です。

 また、高齢者が脳ドックなどでMRIを撮ると、脳に白い斑点のようなものが見えたり、小さな隠れ脳梗塞が見つかることがよくあります。この場合は高血圧糖尿病などの原因疾患を治療することが大事で、とくに太い血管が細くなっていなければ、血液をさらさらにする薬などをのむ必要はありません。

小林 祥泰


出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「脳血管障害」の意味・わかりやすい解説

脳血管障害
のうけっかんしょうがい

脳の血管病変によって局所性の各種神経症状がみられる疾患の総称で、脳血管疾患ともいう。その主たるものが脳梗塞(こうそく)と脳出血に代表される脳卒中であり、脳卒中は脳血管障害と同義語として使われることが多い。

[荒木五郎]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「脳血管障害」の意味・わかりやすい解説

脳血管障害
のうけっかんしょうがい
cerebrovascular affect

脳の1つないし1つ以上の血管病変が1次的に関与している脳の障害または疾患群をいう。病理学的には,脳血管壁のあらゆる異常,血栓や塞栓による脳血管閉塞,脳血管の破綻 (脳出血) ,血圧低下による脳循環不全,血管内径の変化,血管壁透過性の変化などがあげられる。一過性の虚血や出血もある。脳動脈の炎症性疾患や,寄生虫や原虫感染による血管障害も含まれる。脳血管障害は,脳卒中などの重要な疾患の原因となる。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

栄養・生化学辞典 「脳血管障害」の解説

脳血管障害

 かつては脳卒中といわれたが,近年,脳血管障害といわれるようになった.脳の血液循環障害のため急激に意識障害,麻痺を呈する疾患.

出典 朝倉書店栄養・生化学辞典について 情報

世界大百科事典(旧版)内の脳血管障害の言及

【脳卒中】より

…したがって脳卒中は一つの症候群であり疾患名ではない。脳血管障害では意識障害や運動麻痺を必ずしも示すとは限らないが,広義に解釈して急性型の脳血管障害という意味で用いることも多い。また,中風(ちゆうふう∥ちゆうぶう)または中気という言葉が脳卒中と同義に用いられることもあるが,一般には,卒中発作後,後遺症として半身不随(片麻痺)などの運動麻痺を残した状態をいうことが多い。…

※「脳血管障害」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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