家庭医学館 「腎性網膜症」の解説
じんせいもうまくしょう【腎性網膜症 Renal Retinopathy】
腎臓の病気は、しばしば高血圧や貧血(ひんけつ)などの合併症をもたらします。それが網膜に悪影響をおよぼし、出血や浮腫(ふしゅ)(むくみ)などをおこし、ときには視力が低下することがあります。これが腎性網膜症です。
[症状]
腎臓病にはいくつも種類がありますが、その種類によって網膜が受ける影響もさまざまです。
急性腎炎の場合 腎炎をおこして間もないころに眼底検査を行なうと、網膜動脈が細くなり、出血、綿花様白斑(めんかようはくはん)(綿のかたまりのように見える白い斑点)、浮腫がみられますが、病気の回復にともなって自然に消失し、後遺症はほとんど残りません。また、視力の低下もほとんどありません。
慢性腎炎の場合 腎炎による高血圧症の影響で網膜動脈が細くなったり、動脈硬化をおこしたりします。また、出血や浮腫、ときには網膜剥離(もうまくはくり)をおこして視力が低下することがあります。
これらの症状は全身の状態によって一進一退しますが、腎炎による浮腫が消えると、網膜の黄斑部(おうはんぶ)に放射線状に並んだ白斑が現われることがあります。
ネフローゼ症候群の場合 視力の低下も網膜の変化もおこりません。ただし、副腎皮質(ふくじんひしつ)ホルモン薬(ステロイド)による治療を長い間続けると、その副作用として白内障(はくないしょう)、緑内障(りょくないしょう)などがおこり、視力が低下することがあります。
[治療]
内科での腎臓病の治療が、腎性網膜症の治療にもなるため、内科と眼科の協力のもとに、検査や治療を進めます。
眼科では、眼底検査を行ない、病気の推移を見守ります。