腎性骨異栄養症(読み)じんせいこついえいようしょう(とうせきこつしょう)(英語表記)Renal osteodystrophy (dialysis osteopathy)

六訂版 家庭医学大全科 「腎性骨異栄養症」の解説

腎性骨異栄養症(透析骨症)
じんせいこついえいようしょう(とうせきこつしょう)
Renal osteodystrophy (dialysis osteopathy)
(腎臓と尿路の病気)

どんな病気か

 腎性骨異栄養症とは、慢性腎臓病(chronic kidney disease:CKD)に関連して起こる骨障害の総称です。原因から①線維性骨炎(せんいせいこつえん)、②無形成骨(むけいせいこつ)、③骨軟化症(こつなんかしょう)、④混合型の大きく4つに分けられます。

線維性骨炎(せんいせいこつえん)

 線維性骨炎は、腎機能の低下とともに生じる血液中のカルシウム(Ca)やリン(P)のバランス異常や活性型ビタミンD3の不足が、副甲状腺ホルモン分泌亢進を招くことで生じる骨の吸収・形成の回転(骨回転)の異常です。(せき)や日常の動作で容易に肋骨(ろっこつ)背骨骨折を引き起こします。定期的にカルシウムやリン、副甲状腺ホルモン、骨代謝マーカーなどの血液検査や骨X線検査を行います。

 透析前の場合、多くは活性型ビタミンD3の内服で治療が可能です。長期透析例の場合は、加えてリン吸着薬やカルシウム感受性受容体拮抗薬が必要になることがあります。

無形成骨(むけいせいこつ)

 無形成骨は、骨生検(こつせいけん)で極端に骨の吸収と形成の両方が低下した状態です。高齢者や糖尿病、カルシウムやビタミンD3の過剰な摂取患者では、極端に副甲状腺ホルモンの分泌が抑えられるため生じやすいと考えられています。骨折の原因となるか否かについては未だ不明ですが、カルシウムやリンが有効に骨代謝に利用されないため、容易に皮下等の軟部組織や血管などに異所性石灰化(いしょせいせっかいか)を起こします。

 線維性骨炎と同様、血液検査やX線検査により、異所性石灰化を含めた画像評価を行います。過剰なカルシウムやビタミンD3製剤の使用を中止し、高リン血症に対しては、塩酸セベラマーを使用します。

骨軟化症(こつなんかしょう)

 骨軟化症は、活性型ビタミンD3欠乏あるいは骨のカルシウム沈着部位(石灰化前線)へのアルミニウム沈着により生じる、アルミニウム骨症による骨の石灰化障害です。骨軟化症になると、骨折を起こしやすくなります。血液検査や骨X線検査が診断や治療の指針に有効です。

 ビタミンD3製剤の内服や腎機能低下時にアルミニウム(Al)を含んだ胃腸薬を避けることが、骨軟化症の予防に有効です。

濱田 千江子

出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報

家庭医学館 「腎性骨異栄養症」の解説

じんせいこついえいようしょう【腎性骨異栄養症 Renal Osteodystrophy】

[どんな病気か]
 腎不全(じんふぜん)(「腎不全」)にともなっておこる、カルシウムやリンなどの電解質の障害、ビタミンDの活性化(からだが利用できるかたちに変えること)の障害による骨の病気です。
 腎不全が進むと、上皮小体(じょうひしょうたい)(副甲状腺(ふくこうじょうせん))という部分の機能が亢進(こうしん)したり、骨にアルミニウムがたまって、骨にいろいろな変化をおこします。
 腎不全そのものが、この病気の発症や進行に大きく影響し、長く人工透析(じんこうとうせき)を続ける場合の代表的な合併症となるので、透析骨症(とうせきこつしょう)と呼ばれることもあります。
[症状]
 腎不全によって、上皮小体ホルモンの分泌(ぶんぴつ)が盛んになり、骨の代謝が高まります。骨からカルシウムなどが溶け出す骨吸収が盛んになるため、骨形成が追いつかず、骨の融解が進行します。
 骨や関節に痛みがおこり、骨折しやすくなります。体内のカルシウムなどの分布が異常になるため、皮膚のかゆみ、筋力の低下がおこり、さらに皮膚の潰瘍かいよう)などができることもあります。
 また、ビタミンDが欠乏したり、骨にアルミニウムがたまると、骨がやわらかくなり、骨の変化が進みます。
[検査と診断]
 慢性腎不全の治療で、人工透析をしている間は、定期的に血液中の上皮小体ホルモン、カルシウム、リン、アルミニウムの測定をします。
 また、手足のX線撮影をして、骨の変化を観察します。
 副甲状腺の上皮小体機能亢進が疑われるときは、頸部(けいぶ)のCTやシンチグラムによる画像診断が役立ちます。
[治療]
 上皮小体機能亢進がある場合は、リンの体内への蓄積を防ぐ必要があり、食事療法(低たんぱく食)が重要になります。
 同じ目的から、人工透析を行なう場合に、透析液の組成や、透析膜を変えることもあります。
 このような内科的な治療でもよくならず、腫(は)れた上皮小体が確認され、上皮小体ホルモンの分泌が高いままであるときには、上皮小体を摘除します。
 また、活性化ビタミンDを服用することは、骨の軟化による痛みや骨折を防ぐのに有効です。

出典 小学館家庭医学館について 情報

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