動植物などの生物遺体が土壌中の微生物作用などによって分解と腐植化という二通りの経過を経てできた暗色、無定形の土壌固有の有機物のこと。土が多くの場合暗黒色を呈しているのは通常この腐植を含むためで、土色の濃淡によってその存在と含有量とを容易に推測することができる。腐植という用語は、ときに土の中の有機物全体をさすような広い意味に使われる場合もある。それは、腐植が複雑な組成をもった物質群であり単一の物質ではないためで、その量と質は土壌によって著しく違っている。腐植は土に加わった動植物遺体からできるため土壌の表面に多く存在し、植生に重要な役割を果たしている。植物養分の貯蔵庫として、また土壌の団粒構造の形成に土壌粒子間の接着剤として欠かすことができないものである。腐植の作用により作物への水と養分の供給とが円滑になり耕うんも容易になるなど地力のかなりの部分が腐植の質と量によっている。この腐植を土壌中に保持するためには毎年堆厩肥(たいきゅうひ)などの有機物を土に補給し地力を維持する必要がある。
[小山雄生]
土壌学用語。動植物および微生物の遺体は土壌中で生物群集により分解を受け,ポリフェノール類,キノン類,アミノ化合物を生成するが,これらの物質は酵素,微生物の酸化酵素,無機イオン,粘土鉱物などの触媒作用により重縮合し,土壌固有の暗色無定形コロイド状高分子化合物に変化していく。この暗色物質を腐植物質,分解過程にある生物遺体成分を非腐植物質と呼び,腐植は広義には両者を,狭義には前者を意味する。腐植は,(1)植物養分(Ca2⁺,Mg2⁺,K⁺,NH4⁺)の吸着保持,(2)土壌の酸性化の緩和,(3)植物生理活性作用,(4)団粒形成,(5)有用土壌微生物の活動促進,(6)無機養分の供給,(7)難溶性リン酸化合物の生成防止,(8)土壌温度の上昇,(9)水分吸収保持,などの重要な機能を有している。
執筆者:木村 真人
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