腸の粘膜からの分泌物をいう。十二指腸粘膜には十二指腸腺(せん)(ブルンネル腺)、小腸全般には腸腺(リーベルキューン腺)があり、アルカリ性の分泌液を出している。前者は、透明で卵白のようにねばねばしており、摂食によって分泌量が増す。後者は、細胞の破片を含む不透明で粘稠(ねんちゅう)な液で、摂食とは関係なく、腸管粘膜が内容物で刺激されると分泌量が増す。いずれも胃からきた酸性の内容物を中和し、腸壁を保護する役目をもっている。盲腸、大腸からもアルカリ性の粘液に富んだ液が分泌されるが、これらは腸内容物を円滑に移動させる役目をもっている。腸液は、神経および化学物質の働きによっても分泌が調節されている。そのおもな仕組みは次のようなものである。(1)内容物により粘膜が刺激されると、腸管壁内の神経叢(そう)を介して反射的に分泌調節が行われる。(2)迷走神経の興奮によって分泌調節が行われる。(3)消化管の壁から分泌される化学物質、すなわち消化管ホルモンによって分泌調節が行われる。
小腸粘膜は絨毛(じゅうもう)で覆われている。小腸粘膜の表面は上皮細胞であるが、この細胞の表面には細かい絨毛があり、その付け根は刷毛縁(はけえん)とよばれている。ここに多くの消化酵素が含まれており、細胞内において物質を消化している。細胞が破壊されると、その酵素は腸液中に排出される。細胞の平均寿命は5日で、1日のうちに小腸全体では約30%の細胞が交代している。腸液内の酵素は、かつては腸腺から分泌されると考えられていたが、現在では細胞が壊された結果、排出されるということがわかっている。以下、おもな消化酵素について触れる。
糖質分解酵素のマルターゼは麦芽糖をブドウ糖に、ラクターゼは乳糖をガラクトースとブドウ糖に、スクラーゼはショ糖を果糖とブドウ糖に分解する。核酸分解酵素のヌクレアーゼは核酸を五炭糖に、タンパク質分解酵素のジペプチダーゼはジペプチドをアミノ酸に分解する。なお、人によっては糖質分解酵素の活性の弱い場合がある。たとえば、ラクターゼ活性の弱い幼児がミルクを摂取すると下痢、腸内ガスの増加などの症状が出てくる。したがって、このような場合には、乳糖以外の糖質を与えて栄養をとらねばならない。
[市河三太]
腸内から回収される溶液であるが、食物などに由来するものは含まず、腸、膵臓(すいぞう)、肝臓からの分泌液をさす。腸の分泌液は、哺乳(ほにゅう)類の場合は次のように分かれる。(1)十二指腸のブルンナー腺(せん)(ブルンネル腺)からの分泌液 タンパク質、凝乳、脂肪などの分解酵素を含み、またエンテロペプチダーゼ(エンテロキナーゼ)も存在する。(2)小腸腺(リーベルキューン腺)と上皮細胞の分泌液 アミノペプチダーゼ、ジペプチダーゼ、ジサッカリダーゼ、フォスファターゼなど、上皮細胞刷子縁(さっしえん)に局在する酵素も含まれる。腸腺からの分泌はセクレチンによって促進される。(3)大腸からの分泌液 酵素はごく微量でムコ多糖類などを多く含む。
[八杉貞雄]
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…(1)分泌 十二指腸には肝臓や膵臓の輸管が開き,その分泌物は食物消化にあずかっているが,小腸自身も消化液やホルモンなどを分泌している。(a)腸液と粘液 十二指腸のブルンナー腺(十二指腸腺)から粘液,腸腺から消化液である腸液を分泌する。また絨毛表層の杯細胞からは粘液が分泌される。…
※「腸液」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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