以前は伝染性単核細胞症infectious mononucleosisと同意語とされてきたが,伝染性単核細胞症はEBウイルスを病原とする疾患ということが明らかにされるとともに,腺熱は,腺熱リケッチアRickettsia sennetsuが病原体である腺熱リケッチア症を指す病名となってきた。両者は臨床像がきわめて類似する。腺熱は国内とくに九州で発生する地方病で,外国にはない。感染経路,媒介動物などの疫学的研究は進行していない。潜伏期は約2週で,発熱,頭痛,不眠,筋肉関節痛,全身リンパ節腫張などの症状が出る。また,白血球減少後増加,リンパ球増加,異型リンパ球出現,γ-グロブリン増量,肝障害がみられる。診断は,血液やリンパ節片をマウスに接種し,リケッチアを分離して行う。血清学的診断では,ポール=バネル反応と吸収試験,ウェイル=フェリックス反応が行われる。病気の全経過は約2週間で,予後は良好である。治療はテトラサイクリンが最もよいが,リケッチアは長く体内に残存するという。
執筆者:深谷 一太
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…IMと略記し,伝染性単核球増多症ともいう。腺熱と似た症状を呈するが,リケッチアによる腺熱とは異なり,病原体はEBウイルスが最も重要と考えられている。多くは経口感染により伝播し,潜伏期は4~7週,若年男女に多く,発熱,リンパ節腫張(頸部に最も著しい),咽頭痛を3主徴とする。…
…新たな人間が感染するのは,シラミの吸血刺口をかいた傷口から,糞の一部が侵入するためである。 ヒトに病原性を有するリケッチアは,発疹チフスのリケッチアを含めて11種が知られており,発疹熱,ロッキー山紅斑熱,北アジアダニチフス,ブートン熱,クインスランドダニチフス,リケッチア痘,恙虫(つつがむし)病,Q熱,塹壕(ざんごう)病および腺熱である。 恙虫病は,リケッチア・オリエンタリスR.orientalisによってひき起こされ,秋田,山形,新潟地方で古くから知られていた死亡率の高い疾患で,ツツガムシによってヒトに伝播される。…
※「腺熱」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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