家庭医学館 「膀胱損傷」の解説
ぼうこうそんしょう【膀胱損傷 Injuries to the Bladder】
膀胱は空(から)の状態では、恥骨(ちこつ)の裏側にあるため、外力を受けにくいのですが、尿が充満しているときに、下腹部に強い外力が加わると、破裂して尿が膀胱の外にもれだします。このような状態を膀胱損傷といいます。
膀胱の後ろは腹膜(ふくまく)に接していますが、その部分が破れた場合は腹膜内破裂(ふくまくないはれつ)、腹膜におおわれていない部分が破れた場合は腹膜外破裂(ふくまくがいはれつ)といいます。
[原因]
交通事故での骨盤骨折(こつばんこっせつ)にともなっておこったり、婦人科の手術、直腸の手術など医療事故によっておこる場合が多いのですが、珍しいケースとしては、前立腺肥大症(ぜんりつせんひだいしょう)の高齢者、飲酒後の酩酊者(めいていしゃ)などが、膀胱に尿が充満した状態で転んだり蹴(け)られたりしたときに、自然破裂をおこすこともあります。
[症状]
下腹部に受傷していて、血尿(けつにょう)、排尿困難、下腹部の痛みなどがあれば膀胱損傷を疑います。損傷がひどい場合には、尿が膀胱からもれてしまうため、尿意はあっても排尿ができません。
腹膜内破裂では、尿が腹腔内(ふくくうない)にもれることが多いので、腹膜炎(ふくまくえん)の症状が現われてきます。
[検査と診断]
清潔な状態で、尿道(にょうどう)からカテーテル(細い管)を入れ、膀胱内に生理的食塩水を静かに注入した後、それがすべて回収されるかどうかをみます。
すべてが回収されない場合は膀胱損傷が疑われるため、造影剤をカテーテルから注入してX線撮影をし、造影剤のもれ方によって、腹膜内損傷か腹膜外損傷かを診断します。
[治療]
ごく軽い損傷では、カテーテルを尿道に留置しておき、膀胱に尿がたまらないようにするだけで治ります。しかし、多くの場合は開腹し、損傷した膀胱を縫合します。この場合も、傷が回復するまで、カテーテルで尿を体外に導き(導尿)、膀胱を保護します。