家庭医学館 「膿腎症」の解説
のうじんしょう【膿腎症 Pyonephrosis】
水腎症(すいじんしょう)(「水腎症」)に細菌の感染が加わって、腎盂(じんう)・腎杯(じんぱい)や腎臓の組織(腎実質(じんじっしつ))にも感染が広がり、腎実質の表面をおおう袋の中に膿(うみ)が充満した状態です。
もっとも多いのは、腎結石(じんけっせき)が原因になって感染がおこったケースです。以前は多かった結核(けっかく)が原因でおこるものは、ほとんどみられなくなりました。
敗血症(はいけつしょう)(「敗血症」)をおこすこともあり、治療が遅れると、生命が危険にさらされることがあります。ただちに専門医を受診してください。
[症状]
悪寒戦慄(おかんせんりつ)をともなうような高熱、全身の倦怠感(けんたいかん)(だるさ)など、全身症状が強く現われます。腎臓の部分が痛んだり、押すと痛んだりします。
[検査と診断]
高熱などの全身症状が強く、腎臓部に痛みのある腫瘤(しゅりゅう)を触れ、そこをたたくと激しい痛みがあれば、腎臓部に膿のかたまり(膿瘍(のうよう))があることが疑われます。
尿を検査すると、膿、細菌が多数みられます。血液検査では、白血球の増加や血液沈降速度(血沈(けっちん))の亢進(こうしん)など、炎症があることを示す結果がはっきり現われます。超音波検査、CTスキャンの画像には、拡張した腎盂腎杯がみられます。
[治療]
ただちに入院して、抗菌作用のある薬剤による化学療法を開始します。
そして、水腎症の原因を究明します。
膿腎症の程度が軽く、また尿路の通過障害が治療できれば、化学療法だけで治療できます。
化学療法の効果があがらず、全身状態がよくならないときは、膀胱鏡(ぼうこうきょう)という内視鏡を使って、尿管から腎臓にまで細い管(カテーテル)を入れ、腎臓内の膿を外に出します。
膿を出すため、超音波の画像を見ながら、皮膚から直接腎臓にまで針を刺して吸い取ってしまう方法もあります。
ただ、こうした治療や化学療法だけで、膿腎症を完治させ、腎臓のはたらきを回復するのはむずかしく、多くの場合、腎臓の摘出が必要になります。