日本大百科全書(ニッポニカ) 「芦刈(能)」の意味・わかりやすい解説
芦刈(能)
あしかり
能の曲目。四番目物。五流現行曲。世阿弥(ぜあみ)の作、あるいは田楽(でんがく)系の古能を世阿弥が改作したものか。『大和(やまと)物語』などによる伝説を素材とする。零落して難波(なにわ)名物の芦売りとなった男(シテ)が、乳母(うば)となって出世した妻(ツレ)と再会するメロドラマ風の能。ワキは女の随行者。アイ狂言は里人。芦売りの芸能(御津(みつ)の浜の網を引くさま、乙女たちの笠(かさ)踊りのさまなど)、難波の春の景物をまねしてみせる「笠ノ段」の演技が特徴的である。妻との対面。身を恥じる夫。人々に祝福され、男は装束を改めて酒宴にさっそうと舞い、連れ立って都へ帰って行く。16歳の梅津景久(かげひさ)のこの能が土御門(つちみかど)天皇の御感に入り、「若」の一字を賜って梅若と名のったことから、梅若一門ではとくにだいじにする能である。
[増田正造]
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