65歳未満で発症する認知症。厚生労働省研究班の推計では全国に約3万8千人いる。初期の症状は疲れや更年期症状、うつ病などと間違われ、診断に時間がかかることもある。本人や家族は周囲に打ち明けにくいため、治療や必要な支援を受けられないまま症状が悪化し、退職に追い込まれたり、引きこもったりするケースも少なくない。国は2018年に改定した「障害者雇用対策基本方針」で就労支援対象として若年性認知症を加えた。
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60歳未満もしくは65歳未満で発病する認知症をいい、EODと略称される。しかしこれは通称であり、正しくは18歳以降44歳までに発症する認知症を「若年期認知症」、45歳以降64歳までに発症するものを「初老期認知症」とよぶ。
日本ではこれまでに3回にわたってEODの患者数の全国調査が行われてきた。こうした調査では、全国で約4万人弱とほぼ一定の患者数が報告されている。世界的にはEODの原因疾患としてアルツハイマー病が最多とするものが多い。一方、日本の最初の2回の調査では、血管性認知症が最多という結果であった。しかし最新の調査においては、日本でもアルツハイマー病が最多という結果が示されている。なお血管性認知症以外では、頭部外傷後遺症や前頭側頭型認知症も多い。
EODの当事者と家族が直面する問題は数多く、また深刻である。EODを老年期の認知症と比較すると、経済、就労、医療・ケア、家族の絆(きずな)、どの面をとっても対応はきわめて困難である。それにもかかわらず、この大きな課題は長らく手つかずの状態にあり、ようやく近年になって注目されるようになった。最近では、国のレベルでEODにかかわる総合的情報の提供をはじめ、医療制度、経済面、雇用制度などにおける対応策が徐々に広がりつつある。また近年注目される「ヤングケアラー」、つまり病気や障害のある家族・親族の介護を日常的に行っている未成年者において、EODはその介護対象として重要な位置を占める。さらに認知症の家族会においてもEODに関する問題の深刻さが認識され、これに特化した組織活動も行われている。
[朝田 隆 2024年3月19日]
(小林千佳子 フリーライター / 2009年)
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