改訂新版 世界大百科事典 「茶摘歌」の意味・わかりやすい解説
茶摘歌 (ちゃつみうた)
茶畑で茶の葉を摘む作業のときにうたう仕事歌。4月下旬から5月上旬ごろの,いわゆる八十八夜の季節に昔は手で新しい葉を摘んだ。近在から茶摘みに雇われた女たちが仕事中に鼻歌風にうたった歌である。したがって特に決まった茶摘歌はなく茶揉(ちやもみ)歌やほかの作業歌を流用したものも多い。茶揉歌は茶揉み後の製茶工程の作業にうたわれる歌で,摘んだ茶の葉を蒸して,揉んで〈より〉をかける仕事の際にうたわれるもの。その揉んだ茶の葉を煎(い)る技術をもったほいろ師(お茶師)に美声の者が多く,ほいろ師は季節労働者として茶場に雇われた旅職人であったから,その歌が各地に運ばれて,行先の土地の茶摘歌,茶揉歌として根を下ろしたりした。
執筆者:仲井 幸二郎
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報