草市(読み)クサイチ

デジタル大辞泉 「草市」の意味・読み・例文・類語

くさ‐いち【草市】

7月12日の夜から翌日にかけて、盂蘭盆うらぼん仏前に供える草花飾り物などを売る市。盆市。花市。 秋》
[類語]市場河岸バザールマーケット取引所朝市競り市年の市蚤の市バザーフリーマーケットガレージセール

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精選版 日本国語大辞典 「草市」の意味・読み・例文・類語

くさ‐いち【草市】

  1. 〘 名詞 〙 盂蘭盆会(うらぼんえ)に供える草花や精霊棚(しょうりょうだな)の飾り物などを売る市。陰暦の七月一二日の夜から一三日にかけて開かれた。草の市。《 季語・秋 》
    1. [初出の実例]「草市はひだるい腹の人だかり」(出典:雑俳・柳多留‐初(1765))

そう‐しサウ‥【草市】

  1. 〘 名詞 〙 中国、州県城外におかれた交易場。唐宋時代、農村経済の中心として発達し、鎮、市と呼ばれる小商業都市になるものが多かった。〔王建‐汴路即事詩〕

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「草市」の意味・わかりやすい解説

草市
くさいち

盆(→盂蘭盆)の行事に使う物を売る。盆市ともいい,かつて旧暦 7月12日の夜から 13日の朝まで各地で開かれていた。売られていたのは,盆提灯灯籠籬垣(ませがき),線香,盆棚に用いる菰(こも),迎え火送り火に用いる麻幹(おがら),先祖や精霊の乗り物とされるナスや菰づくりの牛馬,供え物を盛るためのハスの葉や土器など多品目で,数珠仏具太鼓手拭頭巾紋服なども売られていた。明治時代の東京では,12日に人形町,両国広小路,京橋南伝馬町,上野広小路,浅草雷門,神田万世橋,芝大門,麻布飯倉などで多くの市が開かれ,それらの市で売れ残った物が 13日に八丁堀薬研堀に持ち寄られ,朝市が開かれていた。今日でも東京都中央区月島では 7月の盆の頃に草市が開かれており,盆用品以外にも各地の物産などの店が立ち並び,にぎわっている。

草市
そうし
cao-shi; ts`ao-shih

中国において州県治の城外に設けられた市場。東晋代にその名がみえるが,最も発達したのは唐・宋時代。最初城壁外で秣 (まぐさ) を取引する場所をいったが,秣市が粗末な市場であったところから,城外の遠近や秣の有無とは関係なく,粗末な市場が草市と呼ばれるようになった。草市には,取引に集る人のために食料品店や酒場などが開かれ,商業区域に発達し,鎮,市に昇格発展して,草市の名は次第にすたれていった。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「草市」の意味・わかりやすい解説

草市(盆)
くさいち

盆市、花市ともいわれ、盆行事に必要な品物を売る市。7月(または8月)10日すこし前から13日にかけて(日は所によって一定)、道端や寺の前の空き地を利用して立ち、盆提灯(ちょうちん)、灯籠(とうろう)、盆棚に敷く花茣蓙(ござ)、経木(きょうぎ)、蓮(はす)の花、飾り物の牛馬に用いる苧殻(おがら)・なす・きゅうり、果物などのほか、盆花(禊萩(みそはぎ)・桔梗(ききょう)・女郎花(おみなえし)・萩(はぎ)・酸漿(ほおずき)など)が売られるのである。村方では、周囲の畑や山野から材料を求めて盆行事のしつらえをすることが多いが、それの困難な町方が増えて、しだいに草市が求められるようになったのであろう。とくに盆花に、正月の門松や若木と同じく神霊の依代(よりしろ)的性格を認めて(飾り物の牛馬にも同様の性格がある)、一定の山からの盆花迎えを先祖迎えと解している所は少なくないが、それを買い求めるようになったことは、盆行事の一つの変化を示すものといえよう。草市は暮れの年の市と並んで、商われるものの限定された、のちに控えているハレ(晴)の日を迎えるための市としてにぎわい、人々に季節の変わり目を感じさせるものである。

[田中宣一]


草市(中国)
そうし

中国で地方の村落市場の名称。草(そう)とは草橋などと同じく「地方の」「粗末な」という意味。漢代では地方市場といえば県城の市(いち)ぐらいであったが、六朝(りくちょう)時代に地方商業がおこり、県の官設の市に対し、城門外や僻村(へきそん)の市を草市とよんだ。唐末から宋(そう)代にかけては、商業経済の発達によって地方農村に無数の市が発生し、総称して草市といったが、このころから方言や形状で呼称も分化し、また一般的現象となったので、のちには市集(ししゅう)が総称となった。

斯波義信

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百科事典マイペディア 「草市」の意味・わかりやすい解説

草市【そうし】

中国,唐・宋時代に州県の城外に設けられた商業・交易の場。この名称は既に南北朝時代にさかのぼるが,経済史上で意味を持つようになるのは唐以後である。本来,州県城内の一定区域が特別の法規を適用する〈市〉(商業・交易場)とされており,長安の東市・西市,洛陽の南市・北市などが有名であるが,ここでは営業時間を正午から日没までに限るなどの規制があった。唐では707年,州県城内以外に〈市〉をおいてはならないとの詔がだされ,これ以外の場所におかれた〈市〉はすべて〈草市〉と呼ばれることになった。〈草〉には〈草料(まぐさ)〉と〈粗末な〉という意味があり,もとは〈まぐさ市〉であったものが,草市が広がるにつれて,城内の市ではなく粗末な在野の市という意味に用いられた。宋代にはいると唐の市制は完全に崩壊して,商業・交易は時間や場所の制約をうけずに自由に行われるようになり,水陸交通の要所や寺院の門前などに〈草市〉が設けられ,宋代の商品経済の発展に大きく寄与した。なかには発展して地方の小商業都市になるものも多く,それらは〈鎮〉〈市〉と呼ばれ,県の治所に昇格するものもあった。

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改訂新版 世界大百科事典 「草市」の意味・わかりやすい解説

草市 (そうし)
cǎo shì

中国の都市郊外や農村部の市場(いちば)の古称。〈草〉は田舎の,粗末な,非公式のという意味。漢(前206-後220)から唐(618-907)まで,公式の市は各県城内のきまった場所で開かせて,政府が統制していた。しかしすでに東晋(317-420)のころから華中・華南の拓殖がすすんで農村部に集落が広がり,人口もふえて,県城の郊外や僻村に草市が発生した。宋代にはこうした市場が網の目のように広がり,総称して草市と呼んだが,規模や機能が分化してくると市鎮(しちん)や市集(ししゆう)が総称語となった。
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草市 (くさいち)

盆市,花市ともいい,盆行事用品を売る市。この市に欠かせない品物は,祖霊の依代(よりしろ)と考えられる盆花と,精霊棚用の材料などである。盆花は,もともと山から採ってきたものであろう。青森県,鹿児島県,佐渡島では,盆市に買いものに出ることを,仏様迎えに行くともいう。一方,公的,大々的な市以外の,ふだんの市を“草野球”と呼ぶときの感覚と同じように,草市というところもある。
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山川 世界史小辞典 改訂新版 「草市」の解説

草市(そうし)

中国で城壁外や村落道路上に散在する小規模な定期市は,おおむね制の適用外にあり,草市(粗末な市)と呼ばれ,唐宋以後に普及した。

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旺文社世界史事典 三訂版 「草市」の解説

草市
そうし

唐〜宋代に州県城外の郷村に発達した小市場
草とは粗末,または秣 (まぐさ) の意。東晋以後見られ,宋代に発達し,鎮または市という小商工都市になったものも多い。

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普及版 字通 「草市」の読み・字形・画数・意味

【草市】そうし

野市。

字通「草」の項目を見る

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世界大百科事典(旧版)内の草市の言及

【市】より

… 商業区域としての市の制度は,唐の中ごろ以後しだいにゆるんで他の坊にも進出し,北宋になると坊制の廃止に乗じて商店は街頭にも現れ,南宋になると都市内のいたる所に見られるようになり,夜間営業の禁もおのずからすたれた(開封)。一方,南北朝時代から唐・宋時代にかけて,地方の小集落や州県城の郊外の交通の便利な場所に〈草市〉とよばれる商業地域が現れ,ときには〈鎮〉とよぶ行政単位に昇格することもあった。〈草市〉も元来は定期市であったらしいが,宋以後の市制度の崩壊後,〈定期市〉が地方都市や郷村のみならず国都でも見られるようになった。…

【商業】より

…行には首長がいて行内商店の取締りに任じたが,彼らは行頭または行首と称せられた。このような市は,唐代では県治以上の都市に設けられ,それ以下の小都市や村落には草市が置かれるのが常態であったが,こうした市の制度は宋代に至って一変した。すなわち,変化の傾向は唐代後半に現れていたが,北宋の中期以後になると,商店の設置を市の内に限る制度は完全に崩壊し,営業時間の制限も破れて夜間の売買も自由となり,夜市と呼ばれるものが出現した。…

※「草市」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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