草市(盆)(読み)くさいち

日本大百科全書(ニッポニカ) 「草市(盆)」の意味・わかりやすい解説

草市(盆)
くさいち

盆市、花市ともいわれ、盆行事に必要な品物を売る市。7月(または8月)10日すこし前から13日にかけて(日は所によって一定)、道端や寺の前の空き地を利用して立ち、盆提灯(ちょうちん)、灯籠(とうろう)、盆棚に敷く花茣蓙(ござ)、経木(きょうぎ)、蓮(はす)の花、飾り物の牛馬に用いる苧殻(おがら)・なす・きゅうり、果物などのほか、盆花(禊萩(みそはぎ)・桔梗(ききょう)・女郎花(おみなえし)・萩(はぎ)・酸漿(ほおずき)など)が売られるのである。村方では、周囲の畑や山野から材料を求めて盆行事のしつらえをすることが多いが、それの困難な町方が増えて、しだいに草市が求められるようになったのであろう。とくに盆花に、正月の門松若木と同じく神霊の依代(よりしろ)的性格を認めて(飾り物の牛馬にも同様の性格がある)、一定の山からの盆花迎えを先祖迎えと解している所は少なくないが、それを買い求めるようになったことは、盆行事の一つの変化を示すものといえよう。草市は暮れの年の市と並んで、商われるものの限定された、のちに控えているハレ(晴)の日を迎えるための市としてにぎわい、人々に季節の変わり目を感じさせるものである。

[田中宣一]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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