日本大百科全書(ニッポニカ) 「荒神祓い」の意味・わかりやすい解説
荒神祓い
こうじんばらい
かまどの神として各家に祀(まつ)られている三宝(さんぼう)荒神を祓い清める行事。三宝荒神は火の神としていろりやかまどなど火を使用する場所に棚などを設けて祀られている。土地によっては、口が卑しい神様だからということで、毎朝ご飯を供えたり、珍しい食べ物をこしらえたときにはかならず供えるという。どこでも共通して伝えられているのは祟(たた)りやすいという性格である。近世には山伏や法印などが盛んに清めに回っていた。いまでは激減しているが、九州地方では地神(じがみ)盲僧が荒神祓いの役割を担ってきた。ことに南九州では歴代の藩主に手厚い保護を受けていた。カトクさんなどとよばれるこれらの盲僧は天台宗の管轄に属していて、本山である博多(はかた)の成就(じょうじゅ)院と鹿児島の常楽院から派遣されて、各家の神祭りをして回る。琵琶(びわ)にあわせて地神経や荒神経を読誦(どくじゅ)し、地神や荒神、水神(すいじん)、内神(うちがみ)などを祀る。各種の祈祷(きとう)のほか、カトク回りといって、春秋の土用には檀家(だんか)を回る。一般の檀家とは別に、長時間にわたって釈文(しゃくもん)を誦(よ)む釈文檀家があり、そうしたところでは花米として米1升をお布施に出していたという。
[佐々木勝]