荘務(読み)しょうむ

精選版 日本国語大辞典 「荘務」の意味・読み・例文・類語

しょう‐むシャウ‥【荘務・庄務】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 荘園の管理や事務の総称。その職務内容は、勧農収納検断の二つに大別される。
    1. [初出の実例]「右人補任下司職、可行庄務之状」(出典朝野群載‐七・康和五年(1103)二月一〇日)
    2. 「法勝寺の事務職にて、八十余ケ所の庄務をつかさどられしかば」(出典:平家物語(13C前)三)
  3. しょむ(所務)
  4. しょうむざっしょう(荘務雑掌)」の略。
    1. [初出の実例]「件神人者、更非当時庄務追撥、即検校律師沙汰也」(出典:高野山文書‐嘉禎四年(1238)三月・金剛峯寺所司等請文案)

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改訂新版 世界大百科事典 「荘務」の意味・わかりやすい解説

荘務 (しょうむ)

荘園において勧農,検注,年貢収納など現地の支配・管理を行うこと,またはその権限を与えられた者。例えば1217年(建保5)に高野山領備後国太田荘の地頭三善康信が定めた地頭方荘務十箇条には,加徴米,関東人夫,百姓逃亡跡名田,桑,佃(つくだ),勧農などについての規定がされている。このように荘務とはもともと荘園現地の支配・管理それ自体をさすことばであったが,平安時代末期,荘園寄進がさかんに行われ,本家-領家-預所-下司・公文という重層的な荘園支配体系が形成されるとともに,荘務執行の権限がどこに所属するのかは重要な問題となった。一般には寄進主体である預所などが荘務執行権を確保・相伝したが,鎌倉時代になると荘務権をめぐってしばしば抗争も発生した。荘務権をもつものは,現地に荘務雑掌(しようむざつしよう)(雑掌)を派遣し,年貢の徴収・輸送・配分を行い,紛争がおきた際は訴訟に責任を負った。
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世界大百科事典(旧版)内の荘務の言及

【本所法】より

…国衙領として開発された場合も,独立単位で個別的に所有の対象となる保,土地の支配を基点とする荘園とは異なり,人の支配,人間集団の奉仕を基点として成立した御厨(みくりや)なども,私的大土地所有という面では荘園と同様にみてよい。中世ではこのような私有地には複数の権利が職(しき)として重層し,一つの荘園に本家職,領家職,預所職等が重なるが,荘園の実質的領有権である荘務権を有する者を本所と呼ぶべきであろう。 本所には世俗貴族である公家,宗教的領主である寺院・神社があり,鎌倉幕府の長である鎌倉殿も関東御領という荘園については本所である。…

※「荘務」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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