菌交代症(読み)キンコウタイショウ

デジタル大辞泉 「菌交代症」の意味・読み・例文・類語

きんこうたい‐しょう〔キンカウタイシヤウ〕【菌交代症】

抗生物質を用いて治療した際、それに感受性をもつ細菌減少死滅しても、耐性をもつ細菌や真菌が異常増殖して新たに別の病気を生じる状態。交代菌症。菌交代現象

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「菌交代症」の意味・読み・例文・類語

きんこうたい‐しょう キンカウタイシャウ【菌交代症】

〘名〙 抗生物質などの化学療法によって治療対象の菌は死滅または減少するが、代わりに他の菌が増殖して起こる病気。結核薬物療法によるカンジダ症など。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

百科事典マイペディア 「菌交代症」の意味・わかりやすい解説

菌交代症【きんこうたいしょう】

抗生物質を含む化学療法剤服用によって,これに感受性をもつ人体内の細菌が減少し,それらの細菌のために増殖をおさえられていた不感受性菌・耐性菌が異常に増殖して起こる症状。たとえば抗結核剤によって,カンジダアスペルギルスなどのカビ類が肺・気道に増殖し(肺カンジダ症),赤痢腸炎に対する抗生物質によって耐性ブドウ球菌が腸管内に増殖して下痢症状を起こすなどである。直ちに従来の化学療法剤の投与を中止し,これらのカビ類やブドウ球菌に少しでも有効な化学療法剤の投与を試みることが必要。
→関連項目アスペルギルス症化学療法鵞口瘡カンジダ真菌症大腸炎テトラサイクリン

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「菌交代症」の意味・わかりやすい解説

菌交代症
きんこうたいしょう

化学療法剤の長期間使用などが原因で,体内に常在する細菌種が他の菌種に交代し,細菌叢が著しく変化する現象を菌交代現象といい,菌交代現象によって異常な発育を示した菌種によって起る病気を菌交代症という。抗結核剤の使用によるカンジダ症 (真菌症) などがその例である。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内の菌交代症の言及

【化学療法】より


[化学療法剤の種類とその抗菌域]
 化学療法剤は病原体にのみ選択的毒性を有するべきものであるが,すべての製剤がその理想を完全に満足しているわけではなく(たとえば副作用),また病原体の種類も多様であって,薬剤によって効果を発揮する範囲は異なる(これを抗菌域という)。さらには薬剤耐性菌の発現によって既存の薬剤が使用価値を減じ,あるいはこれまで非病原菌と考えられていた微生物による新たな感染症(菌交代症,日和見感染)が化学療法の結果として発生するので,新しい抗菌物質の開発は絶えず必要となる。そうした努力のなかで多くの薬剤が発見され,合成されてきたが,これらは大別すると抗生物質,その半合成誘導体,化学的合成品となる(表,表(つづき))。…

【菌交代現象】より

…一方,フランスではブリズーJ.Brisouが〈選択と交代による慢性感染症〉という論文を発表した。この論文の表題からヒントをえて,日本では菌交代現象ならびに菌交代症という言葉が生まれた。化学療法剤とくに抗菌作用域の広いいわゆる広スペクトルム抗生物質を長期にわたって連用すると,目的とする病原菌は減少し,あるいは消失するが,同時に元の感染病巣,または体の他の部位に現在使用中の薬剤に耐性の微生物が異常に増殖してくることがある。…

【抗生物質】より

…テトラサイクリンは,胎児,新生児の骨や歯に沈着し,発育を悪くすることがある。(7)菌交代症 口腔,上気道,消化管,腟などにはいろいろな細菌が一定の比率で住みついて生理的役割をはたしているが,抗生物質投与により薬剤感受性の違いからこの比率がくずれ菌交代現象を生ずる。ブドウ球菌腸炎(広域抗生物質を投与中,耐性ブドウ球菌が腸管内で増殖して腸炎を起こす),カンジダ症(抵抗力の減じた患者に多量の抗生物質を長期にわたり使用するとカビであるカンジダ・アルビカンスCandida albicansにより腸管カンジダ症を起こすことがある),偽膜性腸炎(嫌気性の耐性クロストジウムによる菌交代症腸炎で,発熱,腹痛,下痢を呈し死に至ることもある)などが知られている。…

【日和見感染】より

…日和見感染はまた病院内で発生することが多い。したがって菌交代症(菌交代現象)や院内感染と密接な関係を有する。いわゆる弱毒菌や平素無害菌には,通常からだの中にいる正常菌叢の一員もあれば,外来性ないし環境由来のものもある。…

※「菌交代症」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

焦土作戦

敵対的買収に対する防衛策のひとつ。買収対象となった企業が、重要な資産や事業部門を手放し、買収者にとっての成果を事前に減じ、魅力を失わせる方法である。侵入してきた外敵に武器や食料を与えないように、事前に...

焦土作戦の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android