デジタル大辞泉
「薬物アレルギー」の意味・読み・例文・類語
やくぶつ‐アレルギー【薬物アレルギー】
投与されたペニシリンなどの薬物が抗原となって体内に抗体ができ、再度その薬物が侵入したときに起こるアレルギー反応。症状として薬疹・発熱・ショックなどが現れる。
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やくぶつ‐アレルギー【薬物アレルギー】
- 〘 名詞 〙 ( アレルギーは[ドイツ語] Allergie ) アレルギーの一種。特異体質の人、または、同一の薬を繰り返して使用したためその薬に過敏になった人に起こる現象。発疹、浮腫、胃障害、ショックなどがある。ペニシリンアレルギー・ピリン疹・サルファ疹の類。
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薬物アレルギー(アレルギー性疾患)
定義・概念
薬物投与時には期待される薬理効果以外の有害な異常反応がまれに起こることがあり,これを有害薬物反応(adverse drug reaction:ADR)とよび,A型,B型の2型に分類されている(Rawlinsら,1991).A型はどのような患者にも用量依存的に発生する,既知の薬理作用から予知可能な反応である.A型反応には,過量投与(overdosage),副作用(adverse effects;抗ヒスタミン薬による眠気など),二次作用(secondary effects;抗菌薬による腸内細菌叢の変化など),薬物間相互作用(interactions between drugs;併用薬によるワルファリン効果増強など)が含まれる.一方,B型は素因や感受性のある一部の患者にのみ,常用量以下の投与でも起こりうる予知不可能な反応である.「薬物アレルギー」は,薬物またはその体内代謝物を抗原とし,それに対応する抗体あるいは感作リンパ球との間で発現した免疫反応に基づくADRと定義され,B型反応に分類される.B型反応にはそのほか,個体の耐容閾値の低下による薬物不耐性(intolerance;少量のアスピリンによる耳鳴など)と,遺伝的な代謝異常により起こる特異体質反応(idiosyncratic reaction;例としてグルコース-6-リン酸脱水素酵素異常症にみられるプリマキンによる溶血)も含まれる.不耐性以外のB型反応の症状は,既知の薬理作用とは異なっている.薬物アレルギーは入院患者に起こるADRの6~10%を占めており(Faich,1986),致死的なADRは,アレルギー性であることが多い.
病因・病態
薬物の多くは低分子であり,蛋白と結合してハプテン(hapten)となって抗原性を獲得する.また脂溶性薬物は主として肝臓で代謝されるが,肝臓での代謝過程にはチトクロームP450(CYP)に代表される酸化還元反応とN-acetylationなどによる抱合反応がある.CYPはヒトでは約50種のアイソザイムが同定されており,薬物により特定のアイソザイムが誘導される.N-acetylation能が遺伝的に低下しているslow acetylatorでは,プロカインアミド,スルホンアミドの代謝は遅延し,それぞれ薬物起因性ループスや重症薬疹が高率に発症する.さらに近年,小分子薬物によるアレルギー発症においては,必ずしも蛋白への結合を前提としないことも推測されている.薬物アレルギーは小児と高齢者において少なく,また軽症である.女性は男性に比べて皮膚症状の発症がやや多いだけでなく,造影剤によるアナフィラキシー様反応の発症率は高い.アンピシリンによる薬疹は,Epstein-Barrウイルス感染患者(伝染性単核球症を含む)にきわめて高率に発生する.またHIV感染者,Sjögren症候群患者では薬物アレルギーの頻度が高い.アトピー患者では造影剤によるアナフィラキシー様反応の発生頻度は高いが,その他の薬物アレルギー全般のリスクが高いわけではない.抗痙攣薬など比較的限られた薬物により,薬剤性過敏症症候群(drug-induced hypersensitivity syndrome:DIHS)を発症することがある.皮疹発現までの内服期間が2~6週間と長く原因薬の中止後も遷延することがある.白血球増加,好酸球増加,異型リンパ球出現,肝障害,表在リンパ節腫脹もみられるが,多彩な症状の背景には薬物アレルギーとともにヒトヘルペスウイルス6(HHV6)再活性化が明らかとなっており,血中の抗体価上昇とHHV6 DNA陽性化が認められる.重症皮疹については,近年関連遺伝子が精力的に検討されており,たとえばアロプリノールを原因とするSJS/TEN/DIHSについてはHLA-B*5801が高率でみられ,アジア諸国と白人で共通した知見である.
薬物アレルギーの発症機序はGellとCoombsのアレルギー分類(Ⅰ~Ⅳ型)が用いられる【⇨表10-22-1】.しかしながら,薬物アレルギーの多彩な症状を1つずつⅠ~Ⅳ型に分類することは,アナフィラキシーなどの典型例を除くと困難である.
Ⅰ型反応のうち,全身反応を呈するものをアナフィラキシーとよぶ.またIgE抗体の関与なしにマスト細胞や好塩基球が活性化されアナフィラキシーと同様の症状を示すことがあり,アナフィラキシー様反応(anaphylactoid reaction)とよばれる.アナフィラキシー様反応には,薬物のマスト細胞への直接作用(造影剤,デキストランなど),免疫複合体による補体系活性化(ガンマグロブリンなど),アラキドン酸代謝への干渉(NSAIDsなど)が含まれる.Ⅱ型であるペニシリンによる溶血性貧血では,赤血球膜と強く結合したペニシリンに対して抗体が産生される.直接Coombsは陽性であり,赤血球は脾臓において貪食され,血管外溶血を生じる.Ⅲ型であるキニジンによる溶血性貧血では,免疫複合体に結合した赤血球上で補体系が活性化され血管内溶血が起きる.Ⅳ型の例として接触皮膚炎がある.近年,分子標的治療薬の増加に伴い,皮疹や間質性肺炎などさまざまな過敏症状が生ずることが問題となっている.
臨床症状
薬物アレルギーを含む薬物過敏症の好発薬物を表10-29-1に示す.
1)全身症状を呈する薬物アレルギー:
アナフィラキシー,アナフィラキシー様反応についてはアナフィラキシーの項を参照【⇨10-27】.Stevens-Johnson症候群(SJS)は多形紅斑型薬疹の重症型であり,病変は目,口腔,外陰部などの皮膚粘膜移行部に好発するのが特徴的で,高熱を伴うことが多い.中毒性表皮壊死症(toxic epidermal necrolysis:TEN)はさらに重症で発熱,表皮剥離,内臓病変を特徴とし,SJSとは連続した疾患概念である.TENの皮膚病変は早い経過で水疱を形成し破れてびらんを呈する一方,水疱のない紅斑部も擦過により容易に表皮剥離を起こす(Nikolsky現象).SJSの死亡率は5%以下であるが,TENでは30~40%にのぼる.全身症状を呈する薬物アレルギーとしては,ほかに薬剤性過敏症症候群(DIHS),薬物熱,薬物起因性ループスなどがある.
2)単一臓器症状を呈する薬物アレルギー:
薬疹は薬物アレルギー症状の80%以上を占める.ピリン疹などの固定疹型は薬物投与時に同一部位に紅斑が生じ,局所に色素沈着が残る.斑状丘疹性発疹(麻疹様発疹)は,最も多い薬疹であり,紅斑性の斑状疹と丘疹が融合した発疹を対称性に生ずる.多形紅斑においては重症化に注意する.
薬物起因性血液障害の大多数は非アレルギー性であり,用量,投与期間依存性であるが,溶血性貧血,ヘパリン起因性血小板減少症など免疫機序の関与するものも一部に認められる.血液系のほかに,単一臓器症状は,肝臓,腎臓,呼吸器などにもみられる(表10-29-1).
診断・検査成績
アナフィラキシー(様)反応は投与後10分以内に症状が発現することが多い.非即時型反応は一般的に投与開始後数日から3週間以内,ことに第2週に症状が発現することが多い.多くの薬物アレルギーの症状は原因薬の除去により早期に消退傾向を示す.薬物熱では中止後48~72時間以内に解熱する.しかしながら,症状が消失した後もその準備状態は長く残っており,再投与にて症状が容易に再燃する.再投与での症状再燃はきわめて短時間に,また常用量以下の投与でも起こりうる.診断の流れとして原因薬の評価のためのアルゴリズム的方法(図10-29-1)が用いられているが,重要項目は「薬物投与と症状発生との時間的関係」,「薬物投与中止後の改善」,「薬物再投与による症状再発」である.
マスト細胞がかかわる即時型反応の診断には即時型皮膚反応(皮内反応,プリックテスト,スクラッチテスト)が用いられる.プリックテストではほぼ3 nLの薬液が注入され,皮内反応では20 μLの薬液を注入する.いずれのテストでも対照をおき,15~20分後に判定する.プリックテストでは膨疹径4 mm(長径と短径の平均値として)以上あるいは発赤15 mm以上を陽性とし,皮内反応は膨疹径9 mm以上あるいは発赤径20 mm以上を陽性とする.なお皮内反応はプリックテストの約1000倍の感度があり,偽陰性が少ないが,テスト自体でアナフィラキシーが誘発される可能性がある.一方,プリックテストやスクラッチテストはより安全であるが偽陰性が多い.皮膚反応は抗ヒスタミン薬により抑制されるので,少なくとも検査前12時間は内服を避ける.即時型皮膚反応自体はIgEの証明とはならず,薬物の非特異的刺激でも陽性化しうる.また,Ⅳ型反応の診断に用いられるパッチテストは陽性率は低いが,陽性の場合に診断的価値は高い.リンパ球刺激試験は,薬物添加によりリンパ球幼若化が起こるかを調べる試験管内検査法であり,非即時型反応の診断に用いられる.しかしながら偽陽性や偽陰性が多く,補助的な診断手段にすぎない.最近は即時型アレルギーに対し,好塩基球のヒスタミン遊離や活性化マーカー発現誘導を解析する検査も用いられる.薬物アレルギーの最も確実な診断法は,薬物の少量再負荷テストであるが,危険が伴うため,重症薬疹(Stevens-Johnson症候群,中毒性表皮壊死症)や重症肝障害などには禁忌である.
治療・予後・リハビリテーション
即時型反応の治療についてはアナフィラキシーの項を参照.非即時型反応の多くは原因薬物の投与中止とともにその症状は自然消退する.薬疹の多くも,抗ヒスタミン薬などの対症療法で十分であり,中等症には経口ステロイド薬が短期間用いられる.Stevens-Johnson症候群や中毒性表皮壊死症などの重症型薬疹は全身管理が早急に必要となる.重症型薬疹を疑わせる所見として,高熱,広範囲の紅斑,全身リンパ節腫脹,粘膜部病変の存在,水疱形成,Nikolsky現象陽性,好酸球増加(1000/μL以上),異型リンパ球の出現,肝機能異常などがあげられる.これらの重症薬疹に対してはステロイド大量投与を行う.単一臓器障害にはそれぞれに応じた対症療法と,重症化に対してパルス療法を含めたステロイド治療が行われる.
ステロイド薬は,IgE依存性アナフィラキシーの予防には無効であるが,造影剤によるアナフィラキシー様反応を有意に抑制する.アトピー患者,造影剤過敏の既往例などのハイリスク患者には,抗ヒスタミン薬との併用によるステロイドの前投薬が有効であるが完璧な予防ではないことに留意する.また原因薬物を少量から徐々に増量投与する脱感作(desensitization)のプロトコールがペニシリン,スルファメトキサゾール・トリメトプリム,アミノグリコシド,スルファサラジン,アスピリンなどについて報告されている.脱感作状態の維持には,薬物の継続投与が必要である.また,脱感作療法は重症型薬疹,血清病や重篤な造血障害を起こした例には禁忌である. 原因薬物の回避の徹底は薬物アレルギー患者の管理上きわめて重要である.原因薬物ならびに類似構造をもつ薬物の回避を患者に指導するとともに,診療録の目立つところに原因薬物を明記して不注意な再投与を防止するのが望ましい.[山口正雄]
■文献
Çelic GF, Pichler WJ, et al: Drug allergy. In: Allergy: Principles and Practice, 7th ed (Adkinson NF Jr, Bochner BS JW, et al eds), pp1205-1226, Mosby, Philadelphia, 2009.
deShazo RD, Kemp SF: Allergic reactions to drugs and biologic agents. JAMA, 278: 1895-1906, 1997.
Rawlins MD, Thompson W: Mechanisms of adverse drug reactions. In: Textbook of Adverse Drug Reactions (Davies DM, ed), pp 18-45, Oxford University Press, New York, 1991.
出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報
家庭医学館
「薬物アレルギー」の解説
やくぶつあれるぎー【薬物アレルギー Drug Allergy】
[どんな病気か]
薬物アレルギーは、薬の副作用として、アレルギー症状が出ることです。
薬の副作用には、薬剤の添付文書(てんぷぶんしょ)に注意書きがあるような、その薬物の作用からして、ある程度当然におこってくるものもありますが、ふつう薬物アレルギーといわれるのは、使用した人の素質や素因によって、薬物の通常の作用とは異なる反応が現われたものをさします。
薬物アレルギーは、薬を使用した人の3~7%にみられますが、アトピー素因のある人や膠原病(こうげんびょう)(免疫のしくみとはたらきの「[膠原病について]」)の患者さんにはおこりやすく、子どもはおとなに比べておこりにくいといわれています。
[症状]
薬物アレルギーは、内服、注射、吸入、あるいは塗布(とふ)によっても、症状が出ます。症状はさまざまで、重いものでは、発熱やショックなどの全身症状、肝臓や腎臓(じんぞう)の障害、貧血や血小板(けっしょうばん)の減少などもありますが、8割以上は薬疹(やくしん)(「薬疹」)と呼ばれる皮膚の症状です。
薬疹にも、じんま疹(しん)や湿疹(しっしん)、にきびのような赤い斑点(はんてん)ができる軽いものから、薬を飲むたびに同じ場所にくり返し病変が出て、そこの皮膚が変色してしまう固定薬疹(こていやくしん)、皮膚がはがれ落ちてしまう重症の皮膚炎(ひふえん)まで、さまざまなかたちで現われます。
また、皮膚症状だけではなく、ほかの臓器の症状がともなっていることも少なくありません。
さまざまな薬物アレルギーのなかでも、もっともこわいのは、アナフィラキシーショックです。アナフィラキシーとは、からだが外からの刺激に対して無防御となった状態をいいます(「アナフィラキシーショック」)。
[検査と診断]
診断にあたっては、まず患者さんに問診をして、薬物アレルギーになったことがあるかどうかを調べます。その結果と症状から、疑わしい薬物を推定して、その薬の使用を中止します。
薬を中止して、その症状が軽くなれば、その薬のなかにアレルギーの原因となった薬物が含まれている可能性が高いわけです。
しかし、原因薬物を確認するもっとも確実な方法は、誘発試験(ゆうはつしけん)です。
誘発試験とは、疑わしい薬物をいったん中止した後、再び使用して、「中止すると症状は改善するが、再び使用すると症状がぶりかえして、もっと悪くなる」ことを確かめる検査方法です。
しかし、この方法は、薬によっては危険をともなうので、慎重に行なう必要があります。
そのほかの検査としては、リンパ球刺激試験が行なわれます。これは、血液中からリンパ球(アレルギー反応を調べるにはT細胞というリンパ球)をとり出して、疑わしい薬物と反応させる試験です。
リンパ球刺激試験で反応がおこれば、T細胞は大型化(幼若化(ようじゃくか))して、DNA合成を活発に行なうので、その薬が犯人とわかるわけです。
ただ、この方法は100%信頼できるわけではありません。その薬が犯人である場合でも、この反応がおこらないことがあるからです。
アレルギー専門医では、さらに、RAST(ラスト)法などによってIgE抗体を確認したり、スクラッチ法、皮内法(ひないほう)、貼付試験(ちょうふしけん)などで、疑わしい薬物と皮膚の反応を調べる場合があります。
[治療]
薬物アレルギーの治療の原則は、疑わしい薬物をただちに中止することにつきます。中止すれば、だいたいの症状は、数日のうちに自然に治ってしまいます。
ただ、薬によっては急にやめることで、本来の病気の治療に影響が出ることもあります。自己判断でやめたりせず、必ず医師に相談したうえで中止するようにしてください。
湿疹などの皮膚症状も、薬を中止すれば数日で消えてしまいます。
症状が強い場合は、抗ヒスタミン薬やステロイド(副腎皮質(ふくじんひしつ)ホルモン)薬などを使う必要がありますが、ほかのアレルギーのように長引くことはないはずです。
また、血液や肝臓に障害が出た場合も、薬を中止すれば比較的スムーズに改善されますが、状況によってはステロイド薬を用いることもあります。
なお、薬物アレルギーをおこしやすい薬物として、ペニシリンやセフェム系などの抗生物質、アスピリンやインドメタシンなどの解熱鎮痛薬(げねつちんつうやく)、サルファ剤や抗結核薬(こうけっかくやく)などの化学療法薬、X線造影に使う造影剤、局所麻酔薬(きょくしょますいやく)などがあります。
[予防]
薬物アレルギーを防ぐには、一度アレルギー症状をおこした薬は二度と使わないことにつきます。そのためには、アレルギーをおこした薬だけにとどまらず、疑わしいと思われる薬についても、メモしておきましょう。
名前がちがっていても、同じような作用をもつ薬はたくさんありますので、医師の処方を受けるときには、そのメモを見せて相談するといいでしょう。
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薬物アレルギー
やくぶつあれるぎー
drug allergy
薬物または薬物の生体内代謝物が抗原となって生体が感作(かんさ)され、再度その薬物(抗原)が体内に侵入したときに発生する免疫応答(抗原抗体反応)をいう。しかし、実際にはアレルギー類似反応も含めて薬物過敏反応と同義に用いられることが多い。症状として出現頻度のもっとも高いのは皮膚症状で、薬疹(やくしん)とよばれる。
なお、薬物アレルギーを誘発する代表的薬剤にペニシリンがあり、ペニシリンアレルギーの激症型(全身性アナフィラキシー)がペニシリンショックである。経口投与でもみられることがあるが通常は注射の場合で、アトピー体質者の発生頻度が高い。アナフィラキシー発生の初期(15分以内)に急性循環不全と気道狭窄(きょうさく)に対する救急処置を行うことがもっとも重要であり、その適否によって予後が左右される。
[高橋昭三]
出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例
薬物アレルギー
やくぶつアレルギー
薬が原因で過敏性反応が現れること。主な症状は,皮膚症状では紅斑 (こうはん) ,薬疹 (やくしん) といわれる発疹などで,その他発熱,関節痛,関節炎なども見られることがある。ショックを起こすこともあり,重篤な場合は生命にかかわることもある。薬物アレルギーの予防には,アレルギーを起こしやすい薬物はあらかじめ皮内反応を行なってアレルギーの有無を確認する必要がある。薬物アレルギーを起こす薬物として代表的なものは,アスピリン,ペニシリン,ヨード,インスリンなど。
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
世界大百科事典(旧版)内の薬物アレルギーの言及
【アレルギー】より
…すると,これらの化学伝達物質の作用によって,血管の透過性の亢進,平滑筋の収縮,腺分泌の亢進,好酸球の遊走などの反応が起こり,その結果,アレルギー疾患が起こると考えられている。I型のアレルギー反応に属する疾患としては,気管支喘息,アレルギー性鼻炎,蕁麻疹の一部,アナフィラキシーショック,薬物アレルギーの一部,消化管アレルギー,昆虫アレルギーなどがある。 なおIg E産生細胞は抗原と接触する機会の多い気道や消化管粘膜にかなり多いことが知られていて,アレルギー反応の局在性を暗示している。…
【ペニシリンショック】より
…ペニシリン系抗生物質の投与により誘発され,急激な血圧の低下を伴う組織の循環障害(低酸素状態)をいう。薬物アレルギーの一つ。ペニシリンアレルギーの最も重症型で,多くの場合ペニシリン投与後数分以内に発生する。…
【薬物過敏症】より
…しかし,薬物による異常な過敏反応に関しては,その発症の機序は一様でない。大別して,アレルギー機序にもとづく場合(薬物アレルギー。[ペニシリンショック]はその代表例)と,代謝異常などのアレルギー以外の機序にもとづく場合がある。…
※「薬物アレルギー」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」