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薬疹 【やくしん】

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家庭医学館の解説

やくしん【薬疹 Drug Eruption】
 
[どんな病気か]
 内服・注射などで体内に入った薬剤によって生じた皮疹(ひしん)(皮膚に出るさまざまの症状の総称)を薬疹といいます。多くの場合、アレルギー性です。ほとんどの人は薬剤に対してアレルギー反応を示しませんが、一部のかぎられた人ではアレルギー反応がおこり、薬疹ができるのです。その場合でも、薬剤が使われ始めてからそれに対するアレルギー反応をおこすようになるまでには一定の期間(感作(かんさ)期間)がかかります。つまり、それまで何の問題もなく内服していた薬剤に対し、途中からアレルギー反応をおこすようになるわけです。
 原則的に、それまでまったく内服したことのない薬剤で薬疹を生ずることはありません。もし生じたとすれば、その人はすでにその薬剤に類似した構造をもつ薬剤に「感作」されていたと考えられます。感作までに要する期間は一定していませんが、通常1~2週間のことが多く、2~3か月に数回程度しか内服しない薬剤では数年たってから薬疹ができることもあります。
[症状]
 軽いものから死に至るものまで、さまざまな種類の皮疹ができます。ある薬剤がこういう種類の薬疹をおこしやすいということはいえますが、皮疹の性状から原因薬剤を特定することはほぼ不可能です。
 もっとも頻度が高いのは麻疹(ましん)(はしか)、風疹(ふうしん)に類似した皮疹ができるものです。からだじゅう左右対称に細かい(米粒半分大の)赤い斑点(はんてん)ができ、多少かゆみをともないます。進行すると、個々の皮疹が大きさ、赤みを増して浮腫性(ふしゅせい)となり、融合(ゆうごう)していきます。ここまで進行してしまうと、原因薬剤を中止しても、さらに重症化する可能性があり、全身の皮膚がびまん性に赤くなり(からだじゅうに赤みがみなぎり)、水疱(すいほう)ができます。赤くなった皮膚は軽くこするだけで容易に剥(は)がれ落ちるようになります。これは中毒性表皮壊死融解症(ちゅうどくせいひょうひえしゆうかいしょう)と呼ばれ、全身熱傷(ぜんしんねっしょう)に似た状態となります。またその亜型(あけい)(類似型)として口唇(こうしん)や口の中、陰部などの粘膜(ねんまく)がおかされるスティーブンス・ジョンソン症候群(しょうこうぐん)があります。
 このような重症の薬疹は、発熱、全身倦怠(けんたい)、肝(かん)障害、腎(じん)障害などの全身症状をともなうことが多く、入院して治療しなければなりません。
 もっとも軽い薬疹と考えられているのは、原因薬剤を内服するたびに皮膚の同じ部位(口の周囲、陰部など)に円形の赤い斑(色の変化)ができる固定薬疹(こていやくしん)です。原因となる薬を内服していないときは円形の色素沈着(しきそちんちゃく)だけしかみられませんから、よく「しみ」とまちがわれますが、原因となる薬(短期間不定期に内服している場合が多い)を中止すると軽快します。ただし、多発するものでは重症化することがあります。
 そのほか、慢性の経過をとって紫紅色をした多少隆起した皮疹がたくさんできる苔癬型(たいせんがた)と呼ばれる薬疹もあります。これは脳(のう)の代謝(たいしゃ)を改善したり血圧を下げたりする薬剤を比較的長期間内服している中高年の人にみられます。この場合は、原因薬剤を中止しても軽快するまでに多少時間がかかります。
 光が当たるところに皮疹ができやすくなる光線過敏型(こうせんかびんがた)もあります。これは手背(しゅはい)(手の甲)、前腕伸側(ぜんわんしんそく)(腕の外側)、くびのつけ根の前(Vネック部分)、顔面などに皮疹ができるもので、春から初夏にかけてみられます。
[検査診断]
 薬剤がいつから使われ始め、いつ、どのような皮疹が、どこにできたかが診断にはきわめて重要です。数種類の薬剤がさまざまな期間にわたって使われている場合にはとくにそうです。
 一般的に、疑わしい薬剤を中止して皮疹が軽快した場合、それを原因薬剤とみなす場合が多いのですが、もともと皮疹をおこしやすいウイルス疾患にかかっていれば、薬剤によるかどうかを判断するのは困難です。風疹、麻疹のように必ず皮疹がみられるものから、EBウイルスのようにあまり皮疹を生じないものもありますが、ウイルス性の皮疹と薬疹との区別はつきにくいのです。
 理想的には、健康になってからもう一度薬剤を使ってみて同様の皮疹ができれば原因薬剤が確認できるわけです。でも、この再投与試験を尻込(しりご)みしてしまう人が多いため、原因薬剤を軟膏(なんこう)の形で皮膚に貼付(ちょうふ)するパッチテストを行なったり、血液中のリンパ球を試験管内で薬剤と反応させるテストを行なったりします。しかし、これらの方法はあまり感度が高くなく、信頼性に欠けます。少量から慎重に行なえば、再投与試験は安全で、現在もっとも信頼性が高い検査方法といえます。
[治療]
 原因薬の使用中止がもちろん大事ですが、それでも皮疹が拡大し重症型へ移行する場合もあります。そのときは副腎皮質(ふくじんひしつ)ホルモンステロイド)の内服や注射が必要になります。また、中毒性表皮壊死融解症では熱傷に準じた治療を行ないます。
[予防]
 薬疹ができた直後は原因薬剤をつきとめたいという思いが強い人も、皮疹が消退してしまうとその意欲が薄れるようです。しかし、薬疹でもっともたいせつなのは再発の防止です。そのためにも、診断と検査の項で述べた検査方法を組み合わせて原因薬剤をつきとめておくことです。そして、できれば、中止した薬剤にかえて使用できる薬剤を知っておくことが重要です。
 さらに、このような薬剤についての個人情報を記した薬疹カードを絶えず携帯しておくことが再発予防に欠かせません。
 原因となる薬剤の成分は1つとはかぎらないうえ、薬剤は数種類の有効成分からなっていることが多いため、どの成分に対してアレルギーがあるかを明らかにしておくことも重要です。とくに市販薬の場合は、商品名が異なっていても同じ原因成分を含んでいることも多いので注意が必要です。
 重要なことは、薬疹をおこさない薬剤は存在しないという認識をもつことです。漢方薬といえども例外ではありません。ビタミン剤として市販されていた薬に含まれる微量の不純物が、きわめて特異な薬疹を引きおこした例も報告されています。


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世界大百科事典 第2版の解説

やくしん【薬疹 drug eruption】 

体内に入った薬剤や,薬剤の作用によって体内に産生された物質により,生体異常影響を受け,その結果生じた発疹をいう。中毒疹の一つ発生機序は種々で,薬理作用あるいは中毒,アレルギーなどがあるが,アレルギー性によるものが大部分を占める。症状多彩で,その程度もいろいろである。固定薬疹fixed drug eruptionは,特定の薬剤が原因となり,原因が加わるごとに同一部位発疹が生ずるもので,原因となる薬物ピリン剤サルファ剤バルビタール剤など。


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百科事典マイペディアの解説

薬疹 【やくしん】

薬物の内用によって生じる発疹。成因は中毒またはアレルギー反応で,かゆみ,ときに発熱を伴う。アンチピリンアミノピリン等のピラゾロン系解熱鎮痛薬による固定薬疹(同一薬物の内用のたびに同じ部位に生じる円形発赤腫脹(しゅちょう)・水疱(すいほう))や,サルファ剤による皮膚過敏症などがある。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

薬疹
やくしん
drug eruption

常用量あるいは常用量以下の薬剤の全身的投与により出現する各種の皮膚粘膜病変をいう。急性のものと慢性のものに大別できる。 (1) 急性薬疹 薬剤投与後に急性に現れ,投薬中止により比較的短期間で消失する病変。

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大辞林 第三版の解説

やくしん【薬疹】
 
薬剤によって生じる発疹。薬剤の中毒による中毒疹と,特異体質によるアレルギー疹とがある。


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デジタル大辞泉の解説

やく‐しん 【薬×疹】
 
薬物を投与したことが原因となって生じる発疹(ほっしん)。薬物に対してアレルギーや中毒を起こしたことによる。

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世界大百科事典内の薬疹の言及

【薬物過敏症】より
… 薬物過敏症の症状は多彩で,皮膚症状と,皮膚以外の臓器,組織を反応の場とする症状に分けられる。発生頻度が高いのは皮膚症状で薬疹と呼ばれる。薬疹の中では,剝脱(はくだつ)性皮膚炎型薬疹,中毒性表皮壊死症,多形滲出性紅斑重症型などが重症である。…
※「薬疹」について言及している用語解説の一部を掲載しています。


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