蘆木類(読み)ろぼくるい(英語表記)calamitaleans

日本大百科全書(ニッポニカ) 「蘆木類」の意味・わかりやすい解説

蘆木類
ろぼくるい
calamitaleans

デボン紀後期に出現し、石炭紀に繁栄した、シダ植物トクサ類楔葉類(けつようるい))に属する大形木本植物総称。前期ペルム紀まで存在した。湿地に生育し、大形のものは直径30センチメートル、高さ30メートルに達する樹幹を形成した。茎や枝は一定間隔で節をつくり、中空で、真正中心柱をもつこと、胞子嚢床(のうしょう)とよばれる器官が集合した胞子嚢穂(のうすい)という生殖器官を生ずること、胞子には弾糸という胞子壁が変化した運動器官をもつことなど、現在のトクサ科の植物と共通した特徴がある。しかし、二次成長を行う木本であること、胞子嚢穂には各胞子嚢床の間に鱗片(りんぺん)状の栄養葉が挿入されていること、トクサ科の弾糸は2本(実際は2本の糸の中央に胞子が位置するので4本にみえる)であるのに蘆木類は3本であることなどの違いがある。トクサ類は中生代に小形化を続けたことを示唆する化石記録があるため、現在のトクサ科は蘆木類が小形化したものであるという考えがある。一方で、蘆木類とトクサ科にみられる違いは、石炭紀からすでに存在したという見解もあるが、両者が同一の祖先から起源したことはほぼ疑いがない。

 代表的な植物ロボク(カラミテスCalamites)は、石炭紀に小葉類の木本の鱗木(りんぼく)などとともに沼沢地に森林を形成し、石炭の主原料となった。葉は枝の節ごとに5枚から30枚以上が輪生し、披針(ひしん)形からへら型で長さ数ミリメートルから数センチメートル、形態によってアヌラリアAnnularia、ロバトアヌラリアLobatoannularia、スキゾネウラSchizoneuraなどに分けられる。胞子嚢穂はカラモスタキスCalamostachysとよばれ、長いものは10センチメートルを超える。胞子には大胞子と小胞子が分化する異形胞子化の傾向がみられる。カラモカルポンCalamocarponでは、大胞子嚢内の大胞子が1個にまで減少しており、大胞子嚢内で雌性配偶体を形成したことがわかっている。日本では宮城県のペルム系などから茎や葉の化石がみつかっている。

[西田治文]

『岩槻邦男・馬渡峻輔監修、加藤雅啓編『バイオディバーシティ・シリーズ2 植物の多様性と系統』(1997・裳華房)』『西田治文著『植物のたどってきた道』(1998・日本放送出版協会)』『岩槻邦男・加藤雅啓編『多様性の植物学2 植物の系統』(2000・東京大学出版会)』


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