改訂新版 世界大百科事典 「蘇塗」の意味・わかりやすい解説
蘇塗 (そと)
古代朝鮮の南部に住んだ馬韓族にみられた宗教的行事。一種のアジールとも解されている。蘇塗という語が史料に初見するのは《三国志》魏志・韓伝である。原史料がきわめて簡単で〈諸国,各々別邑有り,之を名づけて蘇塗と為す。大木を立て鈴鼓を県(か)け鬼神に事(つか)う。諸亡,逃れて其の中に至れば,皆之を還さず〉という短い説明だけのため,その解釈をめぐって異論が多い。橋本増吉は蘇塗は別邑のことで,この別邑が一種のアジールであるとした。白鳥庫吉は古来東北諸族に行われた竿木崇拝の一形式であると解釈した。孫晋泰は蘇塗は朝鮮語sot(立つの意)の音訳で,本来〈そびえる木〉の意味で,別邑の入口に立てられ,境界神的性格をもつものであると説明した。現在では孫晋泰の説が一般に支持されている。ただし,原史料そのままに解するかぎり蘇塗とは別邑のことをさすといえよう。なお平泉澄は日本の対馬にこのアジール的存在に類似したものがあることを報告している。
執筆者:村山 正雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報