血小板機能異常症(読み)けっしょうばんきのういじょうしょう(その他表記)Platelet Dysfunction

家庭医学館 「血小板機能異常症」の解説

けっしょうばんきのういじょうしょう【血小板機能異常症 Platelet Dysfunction】

[どんな病気か]
 血小板の数は正常なのに、出血傾向(しゅっけつけいこう)(「出血傾向とは」)や紫斑(しはん)が現われます。
 これは血小板が血栓(けっせん)を形成するはたらきに異常がおこったため、出血すると止まりにくくなるもので、いろいろな病気があります。
 これらの病気をまとめて、広義の血小板機能異常症と呼んでいますが、どれもまれな病気です。
 血栓は、血漿(けっしょう)に含まれるフィブリノーゲンフィブロネクチンなどの接着剤のはたらきをもつたんぱく質が、刺激によって変化した血小板の表面に結合して、数珠(じゅず)をつなぐようにして形成されます。
 広義の血小板機能異常症には、この血漿のたんぱく質などの異常も含まれますが、狭義の血小板機能異常症は、血小板そのものの異常によっておこる病気を意味します。
 血漿成分に問題がある病気には、フィブリノーゲン(血液凝固因子(けつえきぎょうこいんし)の第Ⅰ因子)が先天的または後天的に欠けている無(む)フィブリノーゲン血症(けっしょう)(コラム「無フィブリノーゲン血症/フィブリノーゲン低下症」)と、遺伝的に血液凝固因子フォン・ウィレブランド因子が低下するフォン・ウィレブランド病(「フォン・ウィレブランド病」)があります。
 出血がおこると、血中の血小板は破れた血管壁のコラーゲン線維粘着します。すると、血小板はいくつかの物質を放出し、これらの物質の作用によって、血小板はフィブリノーゲンなどを橋渡しにして結合し、凝集します。
 この血小板の粘着性能に異常がおこるのが、ベルナール・スリエ症候群です。放出のはたらきに異常がおこると、さまざまな病気がおこります。血小板の凝集の能力に異常があるものが血小板無力症(けっしょうばんむりょくしょう)です。
 これらは、すべて遺伝病であり、きわめてまれな病気です。
 いずれも診断、治療とも高い専門知識が必要で、検査設備の整った血液専門医のいる医療機関を受診しなければなりません。

出典 小学館家庭医学館について 情報

六訂版 家庭医学大全科 「血小板機能異常症」の解説

血小板機能異常症
(血液・造血器の病気)

 血小板機能異常症は、先天性と後天性に分類されます。前者は遺伝性疾患で、血小板膜蛋白(まくたんぱく)異常あるいは血小板放出能障害(血小板顆粒(かりゅう)欠損症と放出機能異常症に細分される)により血小板機能が低下し、出血傾向を来す疾患です。

 後者薬剤性(非ステロイド性抗炎症薬、抗生物質、心血管薬、抗血小板薬など)、血液疾患、肝疾患、慢性腎不全人工心肺などで血小板の機能が抑制されるものです。

①先天性膜蛋白異常症

 バーナード・スーリエ症候群、血小板無力症、トロンボキサンA2不応症があります。バーナード・スーリエ症候群は、血小板膜糖蛋白であるGPⅠb/ⅠXの欠損症です。

 GPⅠbが欠損した血小板は血管内皮下組織のコラーゲンと結合したフォン・ヴィレブランド因子と結合できないために、出血部位への血小板の粘着ができず、出血傾向がみられます。症状は幼少時からの鼻出血、口腔内出血、外傷時の止血困難などです。

 血小板無力症は、血小板膜糖蛋白であるGPⅡb/Ⅲaの欠損症です。フィブリノゲン(凝固因子のひとつ)がGPⅡb/Ⅲaを介して血小板同士を結合させることができなくなるため、出血傾向がみられます。症状はバーナード・スーリエ症候群と同様です。

 トロンボキサンA2不応症は、凝固系の活性化で産生される強力な血小板凝集因子であるトロンボキサンA2が血小板に結合してもシグナルが伝わらない受容体異常症です。軽度の出血傾向がみられます。

②血小板放出能障害

 顆粒の異常症には、グレイ・プレイトレット症候群、ハーマンスキー・パドラック症候群、チュディアック・東症候群、ウイスコット・アルドリッヒ症候群などがあります。

 放出機能異常症には、アラキドン酸代謝に関係するいくつかの酵素の欠損症や、酵素活性を抑制する薬剤(アスピリンなど)によるものがあります。

出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報

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