血液凝固機構

内科学 第10版 「血液凝固機構」の解説

血液凝固機構(総論3:凝固線溶系とその制御機構)

 血液凝固反応は,傷害により血流面に露出したコラーゲンや多リン酸化物質などの陰性荷電物質に接触因子が触れることによって始まる内因系凝固反応と,血流面にさらされた組織因子と第Ⅶ因子の複合体形成が引き金となる外因系凝固反応の2つのルートで進行すると長い間,考えられてきた.しかし,接触因子である第Ⅻ因子,プレカリクレイン,高分子キニノゲンの欠乏症患者では出血傾向が認められないことから,今は,止血血栓の形成には組織因子と活性型第Ⅶ因子(Ⅶa因子:活性化された凝固因子はローマ数字の右下にactivationの頭文字のaをつけて表現する)の複合体形成による第Ⅹ因子の活性化ルートが重要とみなされている.すなわち,流血中に微量に存在するⅦa因子と,血流面に露呈した組織因子との複合体により活性化されたⅩa因子はプロトロンビン(第Ⅱ因子)を活性化し,トロンビン(Ⅱa因子)に変換する.ここで産生された少量のトロンビンは第Ⅴ因子,第Ⅷ因子,血小板などを活性化する.血管傷害部位に集積した活性化血小板のリン脂質膜上にⅧa因子とⅨa因子が結合して第Ⅹ因子活性化複合体(Ⅹase複合体)が形成されると,組織因子/Ⅶa因子複合体と比べて第Ⅹ因子の活性化能が50倍以上強くなる.さらに活性化血小板のリン脂質膜上にはⅩa因子とⅤa因子が結合してプロトロンビン活性化複合体(プロトロンビナーゼ複合体)が形成され,これはⅩa因子単独よりも10万倍も高い効率でプロトロンビンをトロンビンに変換する.この結果生成された大量のトロンビンはフィブリノゲンを限定分解してフィブリンに転換する.さらにフィブリンはトロンビンにより活性化されたⅩⅢa因子によって架橋結合を受けて安定化フィブリン網をつくる.[白幡 聡]

出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報

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