血脈(読み)ケツミャク

デジタル大辞泉 「血脈」の意味・読み・例文・類語

けつ‐みゃく【血脈】

血管
血のつながり。血すじ。血統。けちみゃく。「源氏血脈を伝える一族
けちみゃく(血脈)23
[補説]書名別項。→血脈
[類語]家系家筋血筋血統筋目毛並み家門一門一族血族うじ

けち‐みゃく【血脈】

けつみゃく(血脈)2」に同じ。
「―ガ絶エル」〈和英語林集成
師から弟子へと代々仏法を正しく伝えること。また、その仏法相承そうじょう系譜法統法脈。けつみゃく。
在家ざいけの受戒者に仏法相承証拠として与える系譜。けつみゃく。

けつみゃく【血脈】[書名]

佐藤愛子長編小説。平成元年(1989)7月、「別冊文芸春秋」誌で連載開始。父紅緑、異母兄サトウ・ハチローら家族の姿を赤裸々に描いた自伝的小説。平成12年(2000)5月に完結。単行本は平成13年(2001)刊行。

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精選版 日本国語大辞典 「血脈」の意味・読み・例文・類語

けち‐みゃく【血脈・血脉】

  1. 〘 名詞 〙 ( 「けち」は「血」の呉音 )
  2. 親族としての血のつながり。また、血のつながる親族。血統。血すじ。けつみゃく。
    1. [初出の実例]「Kechimyaku(ケチミャク)ガ タエル」(出典:和英語林集成(初版)(1867))
  3. 仏語。教理や戒律が師から弟子へと代々伝えられることを血のつながりにたとえた語。また、その相承系譜を記した系図書。けつみゃく。
    1. [初出の実例]「雖非入室弟子、只薦挙年臈已積血脈相伝之者」(出典:権記‐長保二年(1000)八月二〇日)
  4. 在家(ざいけ)の俗人に与える仏法の法門相承の系譜。これを受けると出家と同じ功徳があるといわれ、生きている間は身からはなさず、死後は遺骸とともに棺に納める。けつみゃく。
    1. [初出の実例]「汝が十念血脈(ケチミャク)受たるもうじゃは、往生疑ひ有べからず」(出典:浄瑠璃・賀古教信七墓廻(1714頃)鉢たたき)
  5. 芸道などで、その道を師から弟子へと伝えること。けつみゃく。
    1. [初出の実例]「さ様に先達を捨てんには、連歌の血脈不審の事也」(出典:十問最秘抄(1383))
  6. けちみゃくぶくろ(血脈袋)」の略。
    1. [初出の実例]「血脉(ケチミャク)かけて心中の指切」(出典:浮世草子傾城禁短気(1711)二)

けつ‐みゃく【血脈】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 体の中の血液の流れる管。血管。
    1. [初出の実例]「水泉亦血脉。暁冰消而波暖」(出典:本朝文粋(1060頃)八・春生逐地形詩序〈慶滋保胤〉)
    2. [その他の文献]〔史記‐楽書〕
  3. けちみゃく(血脈)
    1. [初出の実例]「代々天下の権を執(と)る、我其血脈をつぐべき人相」(出典:浄瑠璃・烏帽子折(1690頃)五)
    2. 「若き時は血気内に強く、兄親の心に叶はぬがち、其度毎に血脈(ケツミャク)を捨ば、日本国天地人倫の道絶へ果つるを」(出典:浄瑠璃・関八州繋馬(1724)三)
    3. [その他の文献]〔梁書‐劉杳伝〕
  4. けちみゃく(血脈)
    1. [初出の実例]「僧正心ざしの切なる事を感じて、年来御心中に秘せられたりし一心三観の血脉(ケツミャク)相承をさづけらる」(出典:高野本平家(13C前)二)
  5. けちみゃく(血脈)日葡辞書(1603‐04)〕

ち‐みゃく【血脈】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 血液の通う脈管。けつみゃく。
  3. 血統。血すじ。けちみゃく。

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改訂新版 世界大百科事典 「血脈」の意味・わかりやすい解説

血脈 (けちみゃく)

仏教用語。〈けつみゃく〉ともいう。教法が師から弟子に伝えられること(師資相承)を,身体の血管に血が流れるのにたとえて,その持続性と同一性をあらわすもの。その事実を文書に図示するのが特色で,系譜は朱線で示されることが多い。宗派の教理を伝えた系譜を宗脈または法脈といい,戒を伝えた系譜を戒脈という。教法の相承を〈血脈を白骨にとどめ,口伝を耳底に納む〉などと表現する。天台宗真言宗では師弟の面授口訣を重んじ,その付法のあかしとして血脈系譜を授けた。禅宗,浄土宗,日蓮宗などでも重視する。禅宗では,初祖達磨のものという《血脈論》があり,血脈,嗣書,大事を三脈とよぶことがある。また,最澄に《内証仏法相承血脈譜》,道元に《血脈図》があり,浄土真宗に《血脈文集》がある。なお,在俗の結縁(けちえん)者にも簡単な血脈が授けられることがあり,死後それを遺骸とともに棺に納める風習も古くからある。
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血脈 (けつみゃく)

血脈(けちみゃく)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「血脈」の意味・わかりやすい解説

血脈
けちみゃく

一般には親族としての血のつながり、血統の意であるが、仏教では師から弟子へと連綿と教法が伝えられることを血のつながりに喩(たと)えて血脈相承(そうじょう)という。自己の継承した法門の正統性と由緒正しさとを証明するものとして、とくに中国、日本で重要視された。また相承の次第を記した系図そのものをも意味し、師は法を授けた証(あかし)として弟子にその系図を与えた。日本では仏教以外に芸道や連歌(れんが)、俳諧(はいかい)などでも同様の意で用いる。

[藤井教公]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「血脈」の意味・わかりやすい解説

血脈
けちみゃく

仏教用語。師から弟子へと仏教の精髄を受継ぐ関係。師弟の系譜。また,密教や禅宗で,師から弟子に戒を授けるとき,その保証として師が与える血脈図の略称。

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普及版 字通 「血脈」の読み・字形・画数・意味

【血脈】けつみやく

血管。

字通「血」の項目を見る

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世界大百科事典(旧版)内の血脈の言及

【血脈】より

…宗派の教理を伝えた系譜を宗脈または法脈といい,戒を伝えた系譜を戒脈という。教法の相承を〈血脈を白骨にとどめ,口伝を耳底に納む〉などと表現する。天台宗,真言宗では師弟の面授口訣を重んじ,その付法のあかしとして血脈系譜を授けた。…

【相承】より

…仏陀の滅後,特定の弟子に教法や戒律を伝えたのに始まり,中国で宗派が成立すると,各派それぞれに列祖の相承を説くようになる。天台の金口,今師,九師の三種相承は,その代表であり,経典によらない禅は,西天二十八祖と唐土の六祖を立て,相承の物証として,衣や鉢の伝授を主張するが,別に真理の言葉としての伝法偈や,正法眼蔵の相承を説いて,伝灯,血脈,または逓代伝法とよぶ。いずれも,秘伝を重んじ,師の印可を第一とするとともに,これを証する印可状の製作を伴うに至る。…

【伝法】より

…浄土宗ではこれに加行を課する。天台宗では最澄の《内証仏法相承血脈(そうじようけちみやく)譜》があって,相承(そうじよう)と呼んでいるが,いずれも伝法には血脈(けちみやく)がつくのが仏教伝法の特色である。これは現在の伝法が教主釈尊,または各宗祖師から,血統のごとくに相続されてきたものを伝えるのだという意識を表明するからである。…

【俳諧問答】より

…〈贈晋氏其角書〉〈贈落柿舎去来書〉〈答許子問難弁〉〈再呈落柿舎先生〉〈俳諧自讃之論〉〈自得発明弁〉〈同門評判〉から成る。去来は“不易流行”論,許六は“血脈”説を前面に打ち出して論をたたかわせており,蕉風俳論書として第一級の価値をもつ。1785年(天明5),浩々舎芳麿により《俳諧問答青根が峰》として出版され,1800年(寛政12)《俳諧問答》の題で再版された。…

【仏教美術】より

…それゆえ仏教では,祖々仏々として法の伝授は特に重視された。釈迦―十大弟子―各宗の祖師―弟子への系譜を,禅宗や密教で血脈(けちみやく)と称するゆえんもここにある。この系列の美術に羅漢像や祖師像などの肖像や,僧侶自身の墨跡がある。…

※「血脈」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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