広義の石炭を石炭化度によって二大別するとき,石炭化度の低い範囲のものを褐炭,高い範囲のものを狭義の石炭という。この場合の褐炭brown coalは,広義の石炭を石炭化度によって4段階(無煙炭,歴青炭,亜歴青炭,褐炭)に区分をしたときの亜歴青炭(石炭化度の高いほう)と狭義の褐炭lignite(低いほう)を包含する。日本でもこの4区分はあるが,普通は褐炭という呼び方はされず,褐炭のうち,とくに石炭化度の低いものを亜炭とし,それ以外は石炭と総称している。鉱業法にも,適用対象鉱物のなかに石炭・亜炭としてあげられている。釧路炭田・常磐炭田の炭質は亜歴青炭に,天北炭田の炭質は褐炭に相当するが,これらも石炭と呼ばれる。したがって〈褐炭〉の語は,もっぱら外国炭について用いられる。
褐炭(以下狭義)の大きな資源をもつのは,旧ソ連,ドイツ,オーストラリア,アメリカ,ポーランドなどで,確認可採埋蔵量100億t規模の大炭田もある。地質年代は中生代白亜紀と新生代古第三紀のものが多い。褐色~暗褐色で,自然の状態で35~70%の水分を含み,乾燥すると風化しやすい。また発熱量も低いので,遠距離への供給には向かないが,炭層は厚くて安定しており,大規模な露天掘りができる。確認可採埋蔵量とされているものは,ほとんどすべて露天掘りが可能な条件のものである。ドイツのライン褐炭田の露天掘りは,深さ200mを超え,将来は600mの深さで厚さ70mの炭層を採掘する計画もある。
現在のおもな用途は,露天炭鉱に直結する発電所向けである。しかし,石炭化度が低いということは,熱によって分解しやすく,化学的に反応しやすいということでもあるので,資源の豊富さと相まって,石炭ガス化や石炭液化の原料としての期待が高まっている。また,脱水して遠距離輸送を可能にする技術も開発中であり,資源を海外に依存することの大きい日本には注目に値する。
執筆者:穂積 重友
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もっとも石炭化度の低い石炭の一つで、日本産業規格(JIS(ジス))では発熱量が純炭基準で1キログラム当り5800~7300キロカロリー、粘結性を有しない石炭と規定している。炭素含有量は70~78%程度、外見は褐色で水分を多量に含有しており、風乾により容易にひび割れが生じ粉化しやすく、また自然発火をおこしやすい。第二次世界大戦前ドイツではこれをベンゼン‐アルコールで抽出してモンタンワックス(硬ろう)をとり、艶(つや)出し材その他、多方面に利用していた。また反応性が高いため石炭液化原料やガス化原料として用いられた。
生産地としてはドイツ、オーストラリア、インドネシアなどが有名であるが、現状は自然発火性などの問題から小規模に地産地消されている段階である。これまでは発熱量が高い一般炭や粘結性の高い原料炭など良質な瀝青炭(れきせいたん)が優先的に使用されてきたが、今後、瀝青炭の枯渇化が進むなかでは褐炭をガス化したり改質したりして使いやすくするなどの新たな利用技術開発が不可欠であり、大規模な工業的利用は今後の課題である。
[大内公耳・荒牧寿弘]
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石炭化度のもっとも低い石炭.茶褐色あるいは黒褐色を示す.褐炭のなかで木質組織が多く残っているものを亜炭(lignite)ということがある.石炭のなかで褐炭は,工業分析で求めた水分や元素分析で測定した酸素量がもっとも多く,60~70質量% の水分をもつオーストラリア産褐炭のような例もある.粘結性は示さない.炭素量や発熱量(JIS規格では24~31 MJ kg-1)は少ないが,着火性にすぐれ,反応性は高い.日本では火力発電には使用していないが,褐炭資源の豊富なオーストラリアや東ヨーロッパなどでは,発電用燃料に利用されている.世界の褐炭生産量(2001年)は約9億 t で,石炭の総生産量の20% に相当する.
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…広義の石炭を石炭化度によって4段階(無煙炭,歴青炭,亜歴青炭,褐炭)に区分するとき,石炭化度が褐炭に次いで低いものを亜歴青炭という。広義の石炭を石炭化度によって石炭(狭義)と褐炭(広義)に二大別したときは,広義の褐炭に含まれる。…
… 石炭化は時間とともに進み,一般に生成年代が古いほど〈石炭化度〉が高くなる。しかし石炭化には温度や圧力も影響するので,その関係から,地質年代の若い第三紀に生成したもの(世界的にはほとんどが褐炭である)でも〈石炭化度〉が高く,亜歴青炭,歴青炭のランクになっている場合もある。日本列島は大陸縁辺の大陸プレートと海洋底プレートのぶつかるところに位置して強い地質構造上の力を受け,地熱も高いという条件からこのケースに属し,これが日本炭の一つの特徴でもある。…
※「褐炭」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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