家庭医学館 の解説
しりょくしょうがいしやしょうがいをもたらすびょうき【視力障害、視野障害をもたらす病気】
視路(しろ)(視覚の伝導路)のどこかに異常があれば、視力、視野が障害されます。いいかえれば、網膜(もうまく)の病気、視神経の病気、脳の病気のいずれによっても、視力、視野が障害されることがあるのです。さらに、どんな病気が原因であるかによって、視力・視野の障害のされ方にそれぞれ特徴があります。
視力や視野の障害を訴えて受診された患者さんは、まず、その障害の特徴について、
①片眼(へんがん)(片方の目)か、両眼か
②視野の中心部が見づらいのか、周辺部が見づらいのか
③視力・視野の障害は急激におこったのか、徐々におこったのか
などについて問診されます。このように詳しく聞くことによって、どんな病気かを、かなり予想することができます。
また、眼科疾患の診断上、視力検査と視野検査はとてもたいせつです。
急激な視力障害、視野障害をもたらす病気には、緊急の処置を要するものも多くあります。したがって、ここに紹介したような症状や異常が生じたときは、すぐに眼科を受診し、適切な治療を受けることがたいせつです。
◎特徴的な視野障害をおこす病気
■求心性視野狭窄(きゅうしんせいしやきょうさく)
視野が、全周(360度)にわたって、その周辺部から中心に向かって障害されるものです。ただし、中心部の視野は最後まで保たれ、視力も進行するまでは比較的保たれます。
求心性視野狭窄をもたらす病気としては、網膜色素変性症(もうまくしきそへんせいしょう)、緑内障(りょくないしょう)(末期)などが代表的です。まれに頭蓋内疾患(ずがいないしっかん)によって脳圧が高い状態が続くときにおこることもあります。
■中心暗点(ちゅうしんあんてん)
視野の中心部が見えなくなり、視力も低下します。視神経炎に多くみられます。両眼の場合は遺伝性、栄養障害、薬物中毒などによる視神経萎縮(いしゅく)でみられます。網膜の中心部分(黄斑部(おうはんぶ))に病変がある場合にもおこります。
■鼻側視野欠損(びそくしやけっそん)
視野の鼻側が見づらくなるものです。代表的な原因疾患は緑内障(りょくないしょう)です。緑内障は一般的に進行が緩慢(かんまん)で、かなり進行するまで気づかれない場合もあります。まれに視神経を圧迫する病気が隠れていることもあります。
■水平性視野欠損(すいへいせいしやけっそん)
視野の上側もしくは下側が見づらくなるものです。虚血性視神経症(きょけつせいししんけいしょう)で多くみられます。
■両耳側半盲(りょうじそくはんもう)
両眼ともに耳側が見づらくなります。視交叉部(しこうさぶ)を圧迫する腫瘍(しゅよう)(下垂体腺腫(かすいたいせんしゅ)など)や動脈瘤(どうみゃくりゅう)などが原因として考えられます。
■同名半盲(どうめいはんもう)
両眼ともに同側(どうそく)(右側ないしは左側)が見づらくなるものです。見づらい側と反対側の視交叉部より後ろ側の脳内病変(脳出血、脳梗塞(のうこうそく)、脳腫瘍(のうしゅよう)など)が原因と考えられます。
■らせん状視野と管状(かんじょう)視野
視野検査中に視野がどんどん狭くなっていくのがらせん状視野です。求心性視野狭窄(きゅうしんせいしやきょうさく)と同様に、周辺部の視野が欠損していますが、指標(しひょう)(検査に用いる文字盤などの目標物)までの距離を変えても、筒をのぞいているように視野が変わらないのが管状視野です。どちらも心因性視覚障害に特徴的な症状です。
ほかに、急激な視野障害がみられる病気には網膜剥離(もうまくはくり)や眼底出血などもあります。