角屋七郎次郎(読み)かどや・しちろうじろう

朝日日本歴史人物事典 「角屋七郎次郎」の解説

角屋七郎次郎

没年:慶長19.6.19(1614.7.25)
生年:生年不詳
近世初頭の伊勢大湊海運業者。父は七郎次郎元秀,母は魚名氏娘。名は秀持。本姓松本氏。祖先は永享年間(1429~41)信濃国(長野県)松本の出身といわれるが,伊勢(三重県)山田,次いで大湊,さらに松坂に移った。代々七郎次郎を称した。父元秀は廻船業に従事し,大湊の町方の自治組織にも関係したと伝えられる。角屋が有名になるのは,この秀持の代で,天正10(1582)年6月本能寺の変の際,たまたま上京し堺見物をしていた徳川家康の生涯の危機とされた「伊賀越」のとき,伊賀越えをした家康を伊勢の白子の松浦から持ち船で尾張(愛知県)の常滑まで渡し,危難を救った。以来角屋七郎次郎は松坂を本拠とし,徳川氏の御用商人として,家康の領内の各港に廻船自由の特権を付与された。その後,家康の合戦には船舶による軍需品の輸送に協力して貢献し,特権を有した。なお紀州徳川氏にも松坂の有力町人として優遇された。のち一族が安南国交趾(インドシナ半島)で貿易家として活躍している。角屋は伊勢の特権町人として,代々松坂で栄えたが,資料が戦後散佚して,詳細はよくわからない。<参考文献>『南紀徳川史』第7冊,『角屋関係文書集』(伊勢市神宮徴古館蔵),豊田武『増訂中世日本商業史の研究』,川島元次郎『朱印船貿易史』,岩生成一『朱印船貿易史の研究』,『安南記』(田中久夫校訂『国民精神文化』8巻7号),桜井祐吉『安南貿易家角屋七郎次郎兵衛附松本一族』

(中田易直)

出典 朝日日本歴史人物事典:(株)朝日新聞出版朝日日本歴史人物事典について 情報

デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「角屋七郎次郎」の解説

角屋七郎次郎(2代) かどや-しちろうじろう

?-1614 織豊-江戸時代前期の廻船業者。
伊勢(いせ)大湊(おおみなと)(三重県伊勢市)に本拠をおき,関東との取引に従事。天正(てんしょう)10年(1582)本能寺の変の際,伊賀(いが)越えをする徳川家康の危急をすくった功により朱印状をうけ,三河・遠江(とおとうみ)の港出入の税を免除され自由航行をゆるされた。慶長19年6月19日死去。名は秀持。

角屋七郎次郎(3代) かどや-しちろうじろう

?-? 江戸時代前期の廻船業者。
2代角屋七郎次郎の子。伊勢(いせ)(三重県)の人。家業をつぎ,伊勢大湊から蒲生氏郷(がもう-うじさと)の城下町松坂にうつる。名は忠栄。一族は堺,長崎にも移住し,海運業で活躍した。

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