重合の反対の反応で、重合体が分解して単量体を生成する現象。高分子物質の分解は、熱や光、バクテリアなどによって引き起こされ、酸素の存在が分解を促進することが多い。合成高分子ではそれが生成した反応の逆反応として進み、特別な構造のポリマーでは、分子の末端からファスナーを開いていくような分解がおこる例がある。そのときの生成物は単量体であるが、ポリ塩化ビニルのように側鎖の分解で塩酸ガスを発生する場合もある。一方、ナイロンや繊維素(セルロース)は溶液中では分解が、構成している主鎖の任意の点から不規則におこることが多い。主鎖の解重合によって分子量を低下させて成形性をよくした例には、生ゴムをロールで素練りしたり、デンプンからブドウ糖を生成する発酵などがある。分解による高分子物質の性能の低下を防止するために禁止剤を用いておくのが一般的である。1990年代以降、プラスチック廃棄物から有用な分子量の小さい物質を回収して有効利用するケミカル・リサイクルが注目されるようになった。線状高分子では単量体まで解重合させるのは多くのエネルギーを要するのでオリゴマー程度まで解重合させて、これをいろいろな方面に有効利用している。
[垣内 弘]
重合の反対で,重合体が分解して,主として簡単な化合物(狭義にはもとの単量体)を生成する反応が起こることをいう.解重合反応においても,重合反応に対応して,(1)開始反応,(2)反成長反応,(3)停止反応などの素反応が考えられる.
(1) Pn → Pn・
(2) Pn・ → Pn-1・ + M
(3) Pn・ → 安定化
開始反応は,熱,光,その他触媒などの作用により起こり,末端に活性点をもつ重合体を生成する反応である.反成長反応は成長反応の逆反応である.停止反応は重合反応における停止反応と同様の反応である.一般に重合体をその天井温度以上に加熱すると解重合が起こるが,もとの単量体の生成割合は重合体の種類によって異なり,ポリ(テトラフルオロエチレン),ポリ(α-メチルスチレン)などではほぼ定量的に分解し,ポリ(メタクリル酸メチル),ポリスチレンなどでは80~60%,ポリブタジエン,ポリイソプレンなどでは40~30% 程度もとの単量体が生成し,残りは二量体・三量体を主とするオリゴマーである.また,ポリエチレンやポリプロピレンでは,エテンやプロペンの生成はほとんどなく,種々の分子量をもったオレフィン類が生成する.ポリ(塩化ビニル)などは主鎖の切断が起こる前に脱塩化水素反応が先行し,単量体に解重合することはない.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
重合反応の逆反応をいう。高分子化合物が生成する反応の一つである付加重合反応では,モノマー(単量体)である不飽和化合物の不飽和結合が開き,互いに付加して長い鎖状の高分子となるが,ある種の高分子では,たとえば加熱によってこの逆反応が起こり,その高分子に相当するモノマーが生成する。加熱による解重合の起りやすさは,その高分子の構造によって著しく異なる。最も解重合を起こしやすいものの例はポリメタクリル酸メチルである。
一方,ポリエチレンは解重合を起こしにくいものの例で,加熱,分解してもエチレンが主生成物とはならない。
執筆者:井上 祥平
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